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伝説のホップだけでつくったビール「SORACHI1984」をつなぐ者たちの物語<エピソード0~ホップ栽培に適した上富良野~>

ビールはビールの木やビールの実からできるわけではありません。当たり前のようですが、ビールがどのように作られているか実は意外と知られていないのです。麦芽とホップ、そして場合によっては副原料。それらを材料として、酵母という指揮者が奏でる発酵という壮大なオーケストラの結果、紡ぎ出されるのがビールです。そこには、オーケストラと同じく多くの人が関係しています。原料を開発する育種家、育てる生産者、守り手としてのフィールドマン。その原料を使ってビールに仕上げる醸造家。そして、大切につくりあげたビールをお客様に届けるための作戦を練るブランドマネージャーにより名前を授かり、デザイナーにより缶デザインというお化粧が施されて、ようやく店頭や食卓に並ぶことになります。そんな、普段は気にすることがないようなビールの裏側を知る旅路へと皆様をこれからお連れします。この物語を知ると、もっとビールがおいしくなるかもしれませんよ。

今回の物語の主人公は、「サッポロ SORACHI1984」。伝説のホップ「ソラチエース」だけでつくったビールです。

ホップへのプライド.jpg

2019年4月に全国発売した「SORACHI1984」。2021年で3年目を迎えることとなりました。「SORACHI1984」のことを紐解いていくにあたり、「SORACHI1984」の3年目にかける想いを開発時から携わっている「SORACHI1984 ブリューイングデザイナー」の新井健司氏に聞きました。

 

■SORACHI1984 3年目のリニューアル

3年目のジンクスといった言葉もありますが、おかげさまでここまでは前年を超えて推移しています。日頃のファンの皆様の応援に感謝です。「SORACHI1984」は、国産ソラチエース100%でつくるということを夢として掲げ、実際に2020年は北海道空知郡上富良野町でソラチエースの栽培面積を増やす取り組みを開始しました。この取り組みもあり、今年の4月には昨年よりもさらに上富良野産ソラチエースの使用比率を上げております。この活動はこれからも続けていきたいと考えています

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SORACHI1984 ブリューイングデザイナーの新井健司

 

■新しいメッセージに込めた想い

2021年から新しく2つのメッセージは使い始めました。1つ目は、「ビールを飲むのではない。ソラチを飲むのだ。」。2つ目は、「北海道、空知から世界へ。」。

 

ビールを飲むのではない。ソラチを飲むのだ。

1つ目のメッセージはちょっと奇妙に感じるかもしれません。「SORACHI1984」はもちろんビールです。原材料は麦芽とホップのみ。ドイツのビール純粋令にも則った正真正銘のビール。このメッセージに込めた意味は、ビールという枠を越えて、“ソラチを飲んでいるんだ”、と自信をもって話していただけるようなブランドになっていきたいという決意です。「SORACHI1984」は、ビールの1つとしてではなく、ブランドの名前で呼んでもらえるようなビールになりたい、そういう想いでもあります。そして、「ビールじゃなくて、ソラチを飲んでるんだよ」、と皆さんからも他の方に言いたくなるようなブランドになっていきたいと考えています。ちなみに、私自身は、ビールを飲んでいるのか、ソラチを飲んでいるのかで同じようで何となく違うと思っています。ストーリーや味わいからやっぱりワクワクしますね。

ビールを飲むのではないソラチを飲むのだ.png

 

 

北海道、空知から世界へ。

そして二つ目のメッセージは、まさに、北海道オリジンのホップを使っているということ。ソラチエースホップ自体は世界に飛び出し、世界的に評判になったホップです。「SORACHI1984」も、ゆくゆくはそうなっていきたい。いや、そうなる!、という想いからつけたメッセージです。多くの個性的なクラフトビールがある中でハードルは高いと思っていますが、絶対乗り越えていきたいと考えています。

ソラチエースの伝説のストーリーはこちらから

https://www.youtube.com/watch?v=-Xu1-mVpSA8&t=1s

北海道空知から世界へ.jpg

 

上富良野でつくるソラチエースに込めた想い

先ほどお話しした通り、「SORACHI1984」では、国産ソラチエースのみでつくるという夢を描いています。まだまだ先は長く、ほとんどがアメリカ産です。ただ、やはり日本生まれのホップだからこそ、国産にこだわりたいと思っています。なんか、身近な感じも増していいんですよね(笑)。ブランドサイトでは、上富良野で栽培を開始したソラチエースの生育の様子もご覧いただけますので是非見てみてくださいね!

 

ところで、私自身がソラチエースと出会ったのは、サッポロビールに入社して7年目の2014年。しかも、ドイツのミュンヘンに留学していた時に、他の国から来ていた醸造家に教えてもらいました。その時はほんとに衝撃で…、「なんで今まで知らなかったのだろうか」という想いと共に、これは、日本の人が気軽に飲めるような状況をつくらないといけない、と思ったのです。そして、帰国したら、たまたま商品開発部門に声がかかったので、「SORACHI1984」の開発に至りました。これは本当に運命を感じましたね。ソラチエースに呼ばれている…みたいな感じでした。偶然だったのか、必然だったのか…今はまだわかりませんが、それでも、「SORACHI1984」の全国発売にまでつなげられたのは良かったと思っています。

 

■ファンの皆様へのメッセージ

日頃から、ソラチをご愛飲いただきありがとうございます。おかげさまで3年目のジンクスも乗り越えて、さらにステップアップできそうな気配も見えてきました。2つのメッセージのことをお話ししましたが、実はもう1つメッセージが有ります。それは、

 

「選ぶに足るビールになる。」

 

「ソラチを飲むのだ。」というメッセージにも通じるのですが、やはり、ソラチを飲んでいるときに誇らしい気分や満たされた気分・わくわくする気分を感じていただきたいと考えています。たかがビールかもしれません。けど、ソラチだからこそお届けできる気分があると思っています。それは、「わくわく感」。

今後も、この「わくわく感」をお届けし続けるために、そして、常に「選ぶに足るビールになる。」ために、いろいろなことを仕掛けていきます。ぜひこれからの、「SORACHI1984」のアクションにご期待ください!

選ぶに足るビールになる.jpg

サッポロビールと上富良野ホップの歴史

サッポロビールの歴史を語るうえで重要な事柄のひとつが、上富良野でのホップ栽培です。上富良野でのホップ栽培は、サッポロビールにとって大きな挑戦でした。

ここでは、サッポロビールと上富良野でのホップが歩んできた歴史についてご紹介します。

 

上富良野でのホップ栽培のはじまり

サッポロビールの始まりは、1876年にまで遡ります。開拓使麦酒製造所(のちのサッポロビール)が開業し、本格的なビール生産が始まった年です。

開業からわずか1年後の1877年には、札幌でホップの栽培が始まります。もともと北海道ではホップが自生しており、1871年にトーマス・アンチセルによって野生のホップが発見されました。

札幌のホップ園は年々成長を見せ、1881年には開拓使麦酒製造所で生産するビールの全量分をまかなえるほどの収量にまで拡大したのです。

培った栽培技術を活用して、1923年には上富良野でホップの試験栽培が開始されます。夕張町や遠別村など複数の地域で試作が行われた結果、上富良野での栽培がもっとも優れていることがわかりました。

1925年には正式に上富良野がホップ栽培の最適地とされ、翌年には本格的な倉庫建設と栽培が始まります。国産ホップの大増産が行われ、1942年には国内のビールのほぼ全量をまかなえるほどの収量にまで成長しました。

 

ホップ栽培が困難となった時代

順調にホップ大増産が続くかのように思われましたが、1941年の大東亜戦争勃発により、栽培そのものが困難となりました。

1945年になるとビールの醸造停止命令が下り、ホップ栽培はいよいよ困難を極めます。苗木以外は整理されかけたところ、同年8月の終戦により難を免れました。ただし、戦後も物資不足や主食作物重点政策の影響により、順調な回復とはいえませんでした。

 

ホップの需要が増加した時代

1955年以降には、戦後の高度経済成長にともない、ビールの需要も増加しました。ホップは換金作物かつ安定作物として注目が集まり、需要に応えるように栽培量も増加します。1960年頃になると、上富良野のみならず美瑛や中富良野、富良野、東山と大々的なホップ栽培が行われるまでになりました。

1973年には、札幌でのホップ栽培そのものが廃止されています。各地域のホップ農家も減少し、現在も北海道で引き続き大規模に生産されているのは、富良野地方のみとなりました。

多くの荒波を乗り越えたサッポロビールと上富良野には、ホップ栽培を通じた100年近い歴史があるのです。

 

上富良野はホップに適した土地

上富良野でホップ栽培が盛んに行われた理由は、多くの条件が揃っていたためです。上富良野町は、北海道の中心部に位置する大雪山系十勝岳連峰の西側にあり、北側は美瑛町、西は芦別市と隣接しています。ラベンダーの丘や温泉など、観光地としても魅力にあふれた町です。ほかにもハスカップやとうもろこし、ジャーマンアイリス、ひまわり、紅葉など、四季それぞれの美しい風景が楽しめます。

 

標高の高い十勝連峰を眺めることができ、、昼夜の気温差が大きくさわやかな気候です。上富良野の丘の地形には谷間もあり、ここで栽培することで、ホップ栽培の大敵の風を防ぐこともできます。また雨が比較的しっかり降る土地で、さまざまな作物がよく育つ気候も、ホップ栽培との相性は好適でした。

欧州のホップ産地に比較的近い緯度であり、ホップの名産地として知られるドイツのハラタウとは、丘の地形も似ています。当時ホップ栽培を試みた複数の土地の中でも、実際にもっとも適していると判断されたのは、上富良野でした。

 

上富良野で誕生したホップの種類

上富良野では、1960年代から品種改良も行われるようになりました。当時好適な品種が無かった上富良野では、安定した高い収量を確保したり香りを改良したりするために、新しいホップ品種が必要だったのです。上富良野で育成された20におよぶホップ品種のうち、下記の5種類についてご紹介します。

 

ソラチエース

ソラチエースは、種苗法ができてから、サッポロビールがはじめて品種登録したホップです。1984年に誕生し、「伝説のホップ」と呼んでいます。空知郡上富良野町で誕生したことと、将来はサッポロビールのエースとして活躍してほしいという想いが名前の由来です。

ソラチエースは苦味が多く含まれるのが特徴ですが、同時に個性的な香りも持っていました。当時の日本ではこういった香りは好まれず、普及することはありませんでした。1994年にホップ育種機関との遺伝資源交換という形で、ソラチエースはアメリカでも維持・栽培されることになりました。2000年代に入って徐々にクラフトビールブームが起きていたアメリカで、ソラチエースのヒノキやレモングラスのような個性的でさわやかな香りが見出されます。それによって栽培が広がり世界的に有名な品種となりました。当社でも2015年からソラチエースを使用したビールの開発を行い、2019年にはSORACHI1984を発売しました。

 

フラノビューティ

2010年に品種登録されたフラノビューティは、開発期間に14年の歳月を費やしています。わずかしか栽培されておらず、希少なホップです。フラノビューティは球花の形が美しかったことが理由で命名されました。瑞々しく強いフルーティーな香りを持つことを特徴とするホップです。グループ会社であるポッカサッポロ社と共同開発した無糖炭酸水「富良野ホップ炭酸水にはフラノビューティを使用しています。

 

フラノスペシャル

ホップの品種改良は、10年ほどかかるのが一般的ですが、7年で開発されたエリート品種が、フラノスペシャルです。ソラチエースを母とする品種で、特徴的でさわやかな香りと苦味含量の多さが魅力です。収量も高く、生産性を兼ね備えた品種です。現在は上富良野のみで栽培されており、北海道限定の「サッポロ クラシック 富良野VINTAGE」に使用しています。

 

フラノマジカル

2021年に品種登録された、希少で新しいホップです。開発者自身が驚くようなトロピカルな香りを持っており「奇跡のホップ」とも呼んでいます。まさに魔法のような鮮やかな香りと開発者の気持ちが「フラノマジカル」という名前に込められています。2022年には、某大手コンビニエンスストアのプレミアム商品として、フラノスペシャルとフラノマジカルを使用したビールが発売されました。

 

リトルスター

2005年に品種登録されたホップです。球花は小粒ですが、株全体に鈴なりに実る姿が満天の星空を思わせるため、リトルスターと名付けられました。ファインアロマホップを親にもつ品種で、上品かつおだやかな香りが特長です。栽培者目線で見ても優秀な品種のひとつであり、蔓下げなど従来の手間が不要ながら、早生で、かつ従来品種と同等の収量が得られます。某大手コンビニエンスストアでは、前述のフラノマジカルと同じプレミアム商品として、リトルスターを使用したビールが販売されました。

 

まとめ

上富良野で栽培されているホップは、サッポロビールとともに長い歴史を刻んできたものから新しい境地を切り開くものまで、様々です。現在も品種改良を行っており、個性的な香りや苦味によって新しいビールを生み出そうとしているほか、今後の地球環境の変化に耐えられるような品種づくりなど、挑戦はまだまだ続きます。

 

「サッポロ SORACHI1984」誕生までのストーリーや3年目にかける想いは、いかがでしたでしょうか?次回からは、SORACHI1984に関わるヒトへの取材を通じて、さらにワクワクする冒険の旅へ皆様をお連れします。お楽しみに!

 

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