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人気爆発寸前? ハードサイダーで作った大人限定アイスクリーム
バージニア州リッチモンドのサイダリー(ハードサイダー醸造所)「Buskey Cider」では、ハードサイダーで作ったソフトクリームをコーンにのせて販売しています。アルコール入りスイーツの次のトレンドになるかも!?
ここ数年、ランチタイムに軽く一杯といったシーンでは、ロゼワインのフローズンカクテル「フロゼ」が大人気でしたが、酒造業界の専門家の間では賛否両論があるようです。
Buskey Ciderの創業者兼CEOを務めるウィル・コレル氏も、フロゼはどこか物足りないと常々思っていた人の一人。そこで、ベースになるお酒の味を引き立てる爽やかなレシピの開発に挑みました。「冷たいフローズンドリンクが人気なのは分かっていましたが、フロゼを飲むと私は大体いつも、甘ったるいシロップなどの混ぜ物ではなく、もっとクラフト寄りで、お酒そのものの味を楽しめるドリンクが欲しいと感じていました」
コレル氏がフロゼに代わるトレンドとして、大人気を博している「ハードサイダーソフト」を思いついたきっかけは、どんなお酒でもソフトクリーム状に凍らせることができる「Below Zero」という5500ドル(約60万円)のアイスクリームマシンに関する記事を読んだことでした。(しかし、このマシンで作るソフトクリームは、正確には乳製品ではないためアイスクリームとは呼べません。)
Buskey Ciderがあるリッチモンドはビールで有名な街なので、このマシンを最初に導入したのは30カ所以上もある醸造所のどこかだろうと思った人は、残念ながらはずれです。
7月も終わりに近いある日、醸造所がひしめく歴史地区のスコッツ・アディションにあるBuskey Ciderがハードサイダーソフトを売り出したところ、大盛況となったのです。
例のアイスクリームマシンを購入してからわずか3週間後には、コレル氏と醸造所の共同所有者でマーケティングディレクターを務めるエリー夫人は、200個以上のソフトクリームを売り上げました。
「ソフトクリームとハードサイダーはどちらも美味しいので、この2つを組み合わせたら誰もが食べてみたくなります。そして一度試すと、他のフレーバーも食べてみたくなるのです」とエリー夫人は言います。
クリエイティブで特徴的なコンセプトをもったハードサイダーを2週間に1度、金曜日にアイスクリームとして販売することで、Buskeyは他の醸造所やサイダリーとは一線を画した存在となりました。スイカxローズマリー、タイ料理のトムヤム、ザクロxハバネロ、メスカルの樽で熟成したハードサイダーなど、この夏だけでも約15種類をリリースしています。しかしBuskeyのソフトクリームには、コーンシロップも濃縮ジュースも入っていません。ヴァージニア州産のリンゴ100%なのです(年間200万個を使用しています)。
「私たちはサイダー造りとリンゴの両方にこだわり抜いている真面目なサイダリーですが、奇抜なアイデアにトライすることでも定評があります」とコレル氏。(ちなみにBuskeyのロゴは、リンゴの形の帽子をかぶった禁酒法時代の男性の絵です。)
ソフトクリームは、甘過ぎないが、手加減もしないBuskeyのハードサイダーの一風変わった個性を表現するのにぴったりです。アルコールを凍らせるために凝固剤を添加していますが、香料は不使用。100%ハードサイダーでできたソフトクリームは、アルコール度数も液状のサイダーと変わらず約6%、カップかコーンにのせて8ドル(約900円)で販売しています。
コレル氏は、カップの方が少しだけ量は多いけれどコーンの方がお好みということです。しかしその理由は、コーンの方がインスタ映えするというわけではありません。
「甘いコーンのカラメル風味がサイダーによく合うだけでなく、砂糖の風味までも引き立たてくれるんです」
夏のお楽しみとして販売を始めてから、これまでに売れたソフトクリームは1400個を越えました。コレル氏はわずか4週間でBelow Zero購入に支払った代金を取り戻したといいます。
「アメリカ全土のサイダリーに加え、リッチモンドのブルワリーからも問い合わせが相次いでいます」とコレル氏。「アイスクリームマシンのクリーニングは本当に大変なので、軽く考えない方がいいと必ずアドバイスしています。Below Zeroは素晴らしいマシンです。誰もが大好きな素晴らしい商品を作ることができます。しかし、そのために1日1時間近くも勤務時間が長くなりました」
コレル氏によると、30個近くのパーツを解体して洗浄しなければならないということです。あまりにも複雑な作業なので、スタッフ用のトレーニング動画を制作しなければならないほどでした。しかしその価値は間違いなくあります。昔からアメリカのハードサイダーの歴史に興味を持っていたコレル氏は、お酒を薄めたシャリシャリの甘いドリンクではなく、ハードサイダーそのものをお客様に体験してもらえる点が気に入っているといいます。
「このマシンの本当にすごい点は、ハードサイダーそのものをまったく新しい方法で堪能できることです」とコレル氏はいいます。「まずソフトクリームを食べて、次にハードサイダーを飲んで、『ソフトクリームは本当にサイダーだったんだ!』と皆さんびっくりされています」
Buskeyでこれまでに人気の高かったフレーバーは、スイカxローズマリー、サワーチェリー、カラフルなドラゴンフルーツxアサイーだということです。
またコレル氏は、リッチモンドから車で2時間のケープ・チャールズにある支店のために、来年はBelow Zeroをもう一台購入しようと考えているということです。
最後に、これから冬を迎えることについて、コレル氏は次のようにいいます。「ソフトクリームを冬に提供するかどうかはまだ検討中です。外では雪が降っているというのに、ソフトクリームを食べようと思う人がいるでしょうか。でも私は、おそらく冬でも皆さん食べるんじゃないかなと思っています」
この記事はFood & Wineのパトリス・J・ウィリアムズが執筆し、 Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされています。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまで。