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未来の商品開発に特化したAR・VRソリューションを提供する「Campfire」

アメリカのスタートアップ企業「Campfire」が800万ドル(約8.7億円)の資金調達に成功し、今後は、企業が商品開発の現場で利用することのできるVR/AR対応ホログラム技術の研究開発を進めていくことになりました。

これまで秘密裡に開発を進めていた製品は、プロの3Dデザイナー向けにヘッドセット、ハード&ソフトウェアをパッケージ化した「ホログラフィックコラボレーションシステム」で、2018年に破産したARヘッドセットメーカー「Meta」が開発した特許技術をベースにしているといいます。

複数年にわたる研究開発の成果である同システムは、今秋よりサブスクリプション形式で提供開始される予定となっています。社員15名にも満たないこのCampfireに投資を行ったのは、「OTV」「Kli Capital」「Tuesday Capital」などのベンチャーキャピタルです。

「このコラボレーションシステムは、デザイナーやエンジニアが社内外の関係者とデータを共有する際に使用するという非常に限定的な目的のために設計されています」とCampfireのCEOを務めるジェイ・ライト氏は説明します。「例えば、私が何かをデザインしているとして、その進捗を同僚と共有しなければいけないとします。この時、一番効果的なプレゼン方法は3Dによる視覚体験なのです」

Campfireは、60を超える特許技術をベースとして、独自デバイスやアプリケーションの設計・開発を進めました。そこにはMetaの失敗を含め、近年のヘッドセット開発者たちが積み上げてきた教訓が数多く生かされているのです。

「今日ある既存のデバイスの欠点は、ユーザー満足度がとても低い点です」とライト氏はいいます。「視覚体験を向上させるために解決すべき問題は山積みといっても過言ではありません。ヘッドセットの視野は非常に狭く、画質も悪い。デバイスが顔にあたるので痛みを感じるだけでなく、熱を帯びるので装着感が決して良いとはいえません。また新たなインターフェースやツールの使い方も習得せねばならず、既存ワークフローへのインテグレーションもひどいものです」

3つのデバイスと2つのアプリ

A team using Campfire devices.
Campfireが開発したデバイスを使って会議を行っている様子 Image Credit: Campfire

ライト氏によると、Campfireの開発チームは既存のハード&ソフトウェアすべてをゼロから設計し直したといいます。目指したのは「優れたビジュアル」「手軽な操作性」そして「既存のワークフローに最適化されたシステムの構築」です。その点、画角92度の広角レンズを搭載したCampfireのヘッドセットは、リアルなAR体験を提供できるだけでなく、ヘッドセット本体が顔に触れないので装着感はいつでも快適です。

Campfireにとっての開発パートナーであり、工業デザインを専門とする「Frog Design」も、普段から今回発表となったヘッドセットを利用しているといいます。ちなみに、3種類のデバイスと2つのアプリケーションで構成されるこの最新システムのティザー映像は、Campfireの「パイオニアプログラム」で見ることができます。

スマートフォンに装着するコントローラー「Campfire Pack」 
Image Credit: Campfire

CampfireのヘッドセットはVR、ARの双方に対応できます。例えばヘッドセット一つあれば、現実の自然の風景や、任意に選んだ環境を3D投影し、そのなかにデザイン中のリアルなプロダクトを置いて各種検討することができます。ヘッドセットは頭に装着しますが、ユーザーの視界を覆うことはありません。

「周辺視野を確保したままホログラム映像を重ね合わせるので、プレゼンしながら机やテーブルの周りを歩き回ることもできます」とライト氏。「平衡感覚を失うことなく、自分の周囲を把握することができるこのヘッドセットは、VR酔いする人にとっては救世主のような存在になるでしょう」

ヘッドセットに続くデバイスが「Campfire Console」。これはホログラフィックプロジェクターのような機能をもった新しい製品です。また「Campfire Pack」を使えばスマートフォンが、直感的に3Dモデルを操作できるコントローラーに様変わりします。スマホの背面に装着するだけなので、コントローラーを別途購入したり、ジェスチャーインターフェースの使い方を学ぶ必要もないのです。

「ホログラフィックコラボレーションについては何十年も議論されてきましたが、実際の使用に耐えられるレベルの製品が世に出てくることはこれまでありませんでした」とライト氏。「デザイン、エンジニアリングに特有の限定的なニーズに注目した私たちは、これまで積み重ねられてきた知見を再構築することで実現に大きく近づきました。また生産性の向上においても重要な一歩を踏み出すことができたのです」

即時の製品レビューも可能にする「Campfire Scenes」

The Campfire Console
Campfire Console Image Credit: Campfire

一方、ソフトウェアの一つである「Campfire Scenes」は、3Dモデルを利用した開発段階の素早いレビューから詳細なプレゼンテーションの制作までを可能にする高い汎用性を誇っています。

「3Dファイルを簡単に共有できるようにするCampfire Scenesは、これまでの製品開発のワークフローを悩ませてきたギャップを埋めてくれるツールになるでしょう」とライト氏はいいます。

さらに「Campfire Viewer」があれば、個々人のプライベートな作業のみならず、ビデオ会議の参加者と一緒に、ヘッドセット、スマホ、タブレットを使って仕事を進めることができるのです。

「Campfire Viewerは関連する3Dファイルを開くのに使うソフトです。ヘッドセットをノートパソコンに接続するだけで、幅広い種類のファイルにアクセスできるようになります」とライト氏は続ける。

Frog Designでベンチャーデザインの責任者を務めるグレイム・ウェイツキン氏によると、同社でもリモートワーク中のスタッフが、Campfire開発のデバイスを使ってバーチャル空間にアクセスすることで、さまざまなコラボ・プロジェクトを継続してきたといいます。

Campfire headset Image Credit: Campfire

「デザインに関連する各分野でトップの人材を集めた開発チームを編成したいと思いました。そして候補者リストのトップにいたのがFrog Designでした」とライト氏は開発当初を振り返ります。そのFrogのウェイツキン氏は、この機会をまたとないチャンスと直感し、システム開発のパートナーとしてプロジェクトに飛び乗ったといいます。

さらにライト氏は続けます。「このプロジェクトは単なるデバイスの開発では終わりません。Campfire Scenesはグーグル・ドキュメントとパワーポイントを融合したような製品です。40種類以上のCAD、3Dのフォーマットに対応し、様々なファイル形式を整理して他のユーザーと共有できる3D画像を制作することができます。そしてその映像を見るためヘッドセットを使うのです」

また通常のコンピューターでデザインを行い、それが実際にどう見えるかをライブプレビューで確認することも可能だといいます。

Metaからの再出発

Campfireには、ライト氏のほかにCOOを務めるロイ・アショック氏、設立アドバイザーのアヴィ・バー・ゼエヴ氏などが名を連ねています。もともと同社は2018年12月、ヘルステックに特化したベンチャー・キャピタルであるOTVが、Meta 社の知的財産を購入・商業化するためにスタートしました。当然そこにはARヘッドセットの設計や特許ポートフォリオなども含まれていました。

「今から2年前、私はCampfireで新たなミッションに乗り出しました。あの頃の話をできるのは嬉しくてなりませんね」とライト氏は振り返ります。「ここ数年、開発の舞台裏では業界の大スターたちが多大な活躍をしてきました。私たちが世に送り出そうとしているのは、ヘッドセットを使用して仮想空間での共同作業を可能にするホログラフィックラボレーションの技術です。これについてはどこかで聞いたことがある人も多いかと思います。SFの世界で頻繁に登場するホログラムを、数多くのAR・VR企業が実現しようと試みてきました。しかし彼らは説得力のあるビジュアルで可能性を感じさせてくれましたが、満足のいく製品は残念ながらこれまで誕生していません」

リモートの協働作業を可能にするハード、ソフトの双方を統合したソリューションをゼロから開発するという壮大なビジョンを実現するため、OTVはQualcommの元役員で、PTCが買収したVuforiaの社長を務めていたライト氏を2019年5月にCEOとして迎え入れました。

そのCampfireの最終目標は、スマホやコンピューターに取って代わる存在を目指すのではなく、それら既存デバイスの機能を拡張し、デザイナーやエンジニアをはじめとする知識労働者が3D空間でストレスなく仕事に取り組める仕組みを作り上げることにあるのです。

CampfireのCEOを務めるジェイ・ライト氏
Image Credit: Campfire

「私たちのターゲットは知識労働者層、なかでもCADなどのツールを使って3D空間でものづくりを行っている人たちです」とライト氏。「私たちのソリューションは、ゲームに不可欠な没入体験を提供するものではありません。また訓練中のパイロットに対して、実際のコックピットで遭遇するかもしれない危険に対処できるようシミュレーションを行うものでもありません。もっともシンプルかつフレキシブルな方法で製品データを視覚化するためのソリューションなのです」

Campfireのヘッドセットは、AR・VR空間で3Dデータをホログラムで表示します。左右2つのディスプレイによって生成される立体画像をヘッドセットの内側に反射することでホログラムが像を結ぶのです。このヘッドセットのディスプレイには、USB-C ケーブルで接続したPCに搭載されているdGPU(ディスクリート・グラフィックスプロセッシングユニット)が採用されています。

The Campfire Viewer Image Credit: Campfire

Campfireのホログラフィックコラボレーションシステムは、裸眼で見えるホログラムを生成するだけのホログラフィックプロジェクターやディスプレイで使われている動作原理とは大きく異なります。またデスクトップからCAD、3Dファイル以外にも直接アクセスできるという互換性においても同種のテクノロジーに比べて優れています。

ちなみに、ハードウェアはdGPU、Windows 10、およびUSB-Cコネクタ付きのThunderbolt-3ポートを備えたパソコンと接続できます。Campfire Packの使用には最新のiOSまたはAndroid端末が必須となっています。

この記事はVentureBeatのディーン・タカハシ氏が執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされています。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまで

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