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多様性向上への試みに注目!「Valorant」が女性ゲーマーの躍進をリードする

ライアットゲームズの「League of Legends」は、10年以上にわたって世界的な人気を誇る大ヒット作ですが、MOG(マルチプレイヤーオンラインゲーム)の世界で活躍するスタープレーヤーたちのダイバーシティとなると、女性の競技人口はまだまだ少ないというのが現実です。しかし近年、この問題への取り組みを強化してきたライアットゲームズは、続く大ヒット作となった「Valorant」において、多様性向上へ向けた積極的な試みを展開しています。

Valorantには優れた点がいくつもあります。ライアットゲームズの発表によると、 このチームシューターゲームは、月間アクティブユーザー数1400万人を達成し、リリースから1年の間だけで約5億回もプレーされています。北米での開催を果たした「Valorant Champions Tour」はイベント開催毎に記録更新を続け、これまでに行われたトーナメントの合計視聴時間は870万時間、ピーク時の視聴者数36万人、1分あたりの平均視聴者数56万人を達成しただけでなく、地方イベントでも同様の好成績をあげています。

これは、ライアットゲームズはLeague of Legendsと同様、ビジネスとして利益が出る前から積極的にValorantに投資してきた結果ともいえるでしょう。しかしその他においては、ValorantとLeague of Legendsは大きく異なるゲームであるともいえます。eスポーツパートナーシップ部を率いるマシュー・アーシャンボウ氏は、Valorantの全プレーヤーのうち30~40%は女性ゲーマーだといいます。この結果が出た理由の一つは、時代が変わり、過去には性差別で集団訴訟を提起されたことのあるライアットゲームズも企業として成熟し、ゲーム業界のエコシステムに多様性をもたらすべく、重点的な施策を展開してきた点にあります。

「FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)に属する他のゲームでは大部分が男性ですから、この数字は快挙といえます」とアーシャンボウ氏はいいます。「女性を含む様々なジェンダーの人々も安心してプレーできる環境を作りたいと努力してきた結果といえるでしょう」

このように幅広いプレーヤーがValorantに参加できるよう、今年2月、ライアットゲームズは「Valorant Champions Tour(VCT)Game Changersを企画中であることを発表しました。このeスポーツトーナメントは、ダイバーシティにスポットライトを当て、インクルーシブな競技環境を整えようという試みです。ライアットゲームズはこれらの大会を通じて、アイデンティティやジェンダーを理由とした差別を恐れずに、誰でもプレーできる土壌を醸成することを目指しています。

コンピューターゲームに必要なのはマウスとキーボードだけです。つまり従来のスポーツと異なり、eスポーツにおいては男女における身体能力の差は関係ありません。だからこそ、全てのジェンダーが平等に取り扱われるべきなのです。eスポーツに女性が少ないことを正当化する理由は存在しません。

「長年関わってきた『League of Legendsチャンピオンシップシリーズ』では、女性プレーヤーは皆無でした」と語るのは、ライアットゲームズのイベントプロデューサーでGame Changersの責任者を務めるシェルビー・ウリッセ氏。「それが現実とはいえ、女性プレーヤーの不在は非常に残念なことであるだけでなく、機会損失でもあります。なぜならLeague of Legendsにプロ参戦した女性がいたのも確かだからです。ですので今回は、“女性プレイヤーの参戦がゼロということが二度と起きないようにしよう”と決意しました。様々なジェンダーを代表するプレーヤーからなる混成チームが出てきて欲しいという一心で、最初から、つまりこのゲームはこういった形を目指そうというアイデア出しをする時点から、女性ゲーマーの存在を第一に考えてきました」

女性プレーヤーの参戦はマスト

Valorant debuted in June 2020.
2020年にリリースされた「Valorant」  Riot Games

Valorantを取り巻くコミュニティの多様性をしっかりと反映したイベントととしてGame Changersを成立させるため、ライアットゲームズは1年間にわたって様々な取り組みを続けてきました。トップレベルで活躍する女性プレーヤーの姿を見れば、Valorantを取り巻く環境が女性の参戦をサポートしていると多くの人に理解してもらえるというのがライアットゲームズの考えです。性差別の告発を受けたことをきっかけにここ数年でライアットゲームズ自体が会社として大きく進化したことも好条件でした。ゲームの初期段階から正しい道を進んでいくことができれば、Valorantの成長にとって大きなプラスになることは明らかです。

Valorantのエグゼクティブプロデューサーを務めるアンナ・ドンロン氏は、次のようにいいます。「Game Changersは、“女性プレーヤーに対して、もっと多くの経験、トレーニング、メンターシップを提供する”というライオットのミッションとぴったり合致しています。ゲーム業界を変える女性プレーヤーたちが、Valorantを始めとするeスポーツのエコシステムの中でキャリアを築きたいと考えている次世代の女性や様々なジェンダーのプレーヤーにインスピレーションを与えたことを嬉しく思っています」

この大きな目標の達成に向けて、裏方で働いている女性もたくさんいます。

「eスポーツ、特にValorantにおいて女性をサポートする方法を模索していたころ、League of Legendsにおける自分たちの成果を振り返ったところ、もっとやれたはずだという思いに駆られました」とウリッセ氏はいいます。「League of Legendsをeスポーツとして始動させた経験から非常に多くのことを学んだので、今後は、これまで以上に女性プレーヤーをサポートしていきたいと思います」

一般の競技リーグとは異なり、Valorantでは女性限定リーグを開催しないとライアットは発表しました。

「eスポーツシーン全般において女性のためのサポートや活躍の機会を増やしていきたいと思っています」とウリッセ氏。「このために様々なプロジェクトを用意しています」

「VCT Game Changers」シリーズ

Cloud9's all-female Valorant esports team.
Cloud9のValorantチーム  Cloud9

まず手始めに、ライアットゲームズは2021年シーズンを通じて世界中で開催されるトップクラス向けのトーナメント「VALORANT Champions Tour(VCT) Game Changers」シリーズを創設しました。大会規模と賞金総額は、昨年度の「Ignition」シリーズと同規模になる予定です。最初の大会は北米の競技者を対象に、Nerd Street Gamersのスポンサーで開催されました。

ライアットゲームズが「VCT Game Changers」を創設した理由は、すでにプロレベルで活躍している女性、特に「Counter-Strike: Global Offensive」から移籍してきたプレーヤーをサポートしようと考えたからです。

通常のVCTプログラムに追加されたこのシリーズでは、プロ契約の有無を問わず、高い能力をもつ女性プレーヤーにスポットライトを当てています。女性プレーヤーの存在感を高め、彼女たちのファンベースを広げるというのがその狙いの一つです。さらにGame Changersに参加した全ての女性は、通常のVCTイベントにも参加することができます。

さらには、一つのeスポーツ団体が女性オンリーのチームをトーナメントに参加させた場合、VCTに2チーム参戦させることができます。つまり、女性オンリーのチームを参加させることによって、一つのトーナメントで2チーム分の枠を獲得できることになるのです。なかでも群を抜いた強さを見せているのが、Cloud9が擁する女性チームです。

「VCT Game Changers」アカデミー

Sage in Valorant.
Valorantのキャラの一人、セージ  Riot Games

「VCT Game Changers」アカデミーでは、アマチュアからセミプロレベルまでのプレーヤーが参戦する機会を増やすため、月一回のトーナメント戦を開催します。アカデミーの大会はDiscord上にある、Valorant最大のコミュニティの一つ「Galorants」とのパートナーシップにより運営されます。

Galorantsはこれまでにも、2020年9月に開催された「For the Women Summer Showdown」の運営をサポートしてきました。VCT Game Changersシリーズとアカデミーはともに、競争の激しいValorantコミュニティで成功したいと願う次世代トップゲーマーの育成を目的としています。

VCT Game Changersアカデミーは、プロとして将来的な活躍が期待できるとはいえ、まだそのレベルには達していないプレーヤーたちの育成を主な目標に掲げています。

「将来が有望なプレーヤーでも、身近なコミュニティメンバーからの手厚いサポートを必要としていると思います」とウリッセ氏はいいます。「このプログラムは、Valorantリリースとほぼ同時に誕生したDiscord上の女性限定ValorantサーバーであるGalorantsとライアットの協力関係によって運営されています。Galorantsは急激なスピードで成長している素晴らしいコミュニティであり、すでに輝かしい実績をあげています。プレーヤーがスキルを磨き、実際のトーナメントとはどういうものかを良く知ってもらいたいという思いから、私たちは彼らのコミュニティ内で行われる比較的賞金額の低いトーナメントをサポートしたいと思ったのがきっかけです」

拡大するValorantのエコシステム

Valorant in action
何百万人ものプレーヤーを魅了するValorant  Riot Games

ウリッセ氏は、たとえプレイヤーとして最高レベルにあったとしても、トーナメント参戦には精神的なタフさが要求されるといいます。しかしプレッシャーの少ない環境でトレーニングを積むことで、プレーヤーを効果的に育成できるとも考えています。

またストリーミング中継の現場においても、ライアットゲームズは、解説者やアナウンサーになるためのトレーニングを多くの女性に提供すべく動いています。現在6名の女性がボイストレーニングなど、Valorantのキャスターとして活躍するために必要な訓練を受けているといいます。

「カメラの前では様々な方法で自分を表現することが大切です」とウリッセ氏。

またライアットゲームズは、Game Changerに参加する女性プレーヤーに焦点を当てるため、「Dignitas」などのチームと協力関係を結び、ソーシャルメディア上での プロモーションも展開しています。またVerizonやAim LabなどもGame Changersのスポンサーに名を連ねています。

「私たちのプログラムを支えてくれるスポンサーの中には、超有名企業もあります」とウリッセ氏。「ライアットがもつソーシャルチャネル全てを使って女性たちのeスポーツプログラムを一斉に宣伝しています。この取り組みに私たちはとてもワクワクしています」

アーシャンボウ氏によると、Valorant Game Changersの登場により、スポンサーも女性向けeスポーツイベントでも記録的な視聴率をたたき出している大会があることを理解したといいます。

「女性プロゲーマーの育成に限らず、女性がゲーム業界に参入し、コーチやプロダクション、キャスティングなどの分野で活躍するためのエコシステムを作っています」とアーシャンボウ氏。「このエコシステムの素晴らしいところは、次世代を牽引するプロ志望のプレイヤーにとって複数のキャリアパスが用意されているという点です」

Valorantには、女性インフルエンサーやストリーミング配信するファンから成る強力なサポートのベースがあるとアーシャンボウ氏は語ります。「VerizonとAim Labという、強力なパートナーがサポートしてくれることになったのはとてもラッキーでした。両社ともに、自社のアンバサダーとして男女双方のクリエイターを採用しているからです」

「どのジェンダーに属しているかは全く関係ありません」とアーシャンボウ氏はいいます。「大切なのはその人のパフォーマンスです。そしてこれこそが、ゲームやeスポーツの本当の美点だと思います。NBAやNFLでプレーすることは普通の人にとっては夢のまた夢ですが、ゲームの世界は違います。優れた反射神経があり、インターネットに接続したコンピューターの前に座っていれば、誰にでも参戦するチャンスがあるからです」

ハラスメントと疎外感の根絶を目指す

Riot Games is trying to diversify the games and tech industries.
ゲーム業界のダイバーシティを推進するライアットゲームズ Riot Games

最後に、ライアットゲームズは女性ゲーマーがネガティブな行為の標的になる可能性を考慮し、全てのゲームにおいてハラスメントや迷惑行為の撲滅に尽力しています。

一般のゲーマーやアマチュアレベルでプレーしている女性は、同じく女性でプロゲーマーとして活躍している人に触発される可能性が高いというのも重要なポイントの一つです。プロとして活躍している女性を間近で目にすることで、本気でプロの道へ進もうと考える女性も出て来るはずです。

「ゲームの世界にいる女性は、周囲のコミュニティに属していないと疎外感を強く感じる傾向があります」とウリッセ氏はいいます。「そのため私たちは、できるだけ多くの手段を使って、女性もこのシーンの重要な一部であるということを訴えていこうと思っています。経歴やバックグラウンドに関わらず、どんな人でも参加できます。身体的な強さや能力がものをいう肉体的なスポーツとは違って、参加を阻む障害がないというのがゲームの素晴らしい点です。ゲームにおいては、女性が男性と同じくらい優れているということを存分に示すだけでなく、さらなる活躍の機会を女性に提供することができるのです」

女性に参戦の道を開くということは「時が立つにつれて勢いを増していく大きな流れを作り出すことだ」とアーシャンボウ氏は考えています。「これこそが、世代を超えた次のeスポーツの姿です。League of Legendsで達成したことを、Valorantでも成し遂げたいと思っています」

ゲームを仕事にする

The employees of Riot Games .
ライアットゲームズの社員たち  Riot Games

女性プレーヤーのファンベースを作ることは、プレーヤーたちがファンからの寄付を通じてゲームで生計を立てるための第一歩としてとても重要です。生活の心配がなくなれば、より有能なプレーヤーになることを目指してトレーニングの時間を増やすことができるからです。

「女性プレーヤーのファンベースを強化することは、彼女たちがプロ契約を結ぶチャンスも増えるということを意味します」とウリッセ氏。「たくさんのファンがいれば、多くの人に見てもらうチャンスが増えるのです」

このほかにもライアットゲームズは、メディアなどで取り上げられることが少ない人種マイノリティの参加を促し、多様性を向上させるためのプログラムも進めています。

ウリッセ氏はこのプログラムに関わることができてよかったといいます。

「ゲーム業界で働く女性として、私自身もこのプログラムに強い思い入れがあります」とウリッセ氏。「このプログラムを立ち上げた時、女性プレーヤーを支援するという目的のためだけにやっている、という感じにはしたくありませんでした。ここには見えないところで貢献している女性が数多くいます。彼女たちもまた、ゲーム業界における女性差別という問題に直面してきたので、女性の参加を自分の問題としても捉えています。私たちはこのプログラムが絶対に必要だと信じ、もっともっと拡大していきたいと思っています。2021年がeスポーツに関わる女性にとって最高の一年になることを願っています」

この記事はVentureBeatのディーン・タカハシが執筆し、 Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされています。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまで。

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