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ビールの「ホップ」が果たす役割って?ホップの歴史も紹介

ビールの宣伝文句に「ホップの苦味」「ホップの香り」などが盛り込まれているのを、目や耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。ホップは、おいしいビールを造るうえで欠かせない重要な存在です。

ここでは、ホップとビールの関係について、歴史を紐解きながら紹介します。

そもそもビールのホップとは?

ビール醸造で使用されているホップは、鮮やかな緑色の毬花(まりはな)が特長です。まるで松ぼっくりのような形をしたホップの毬花は、熟し切って香りが飛んでしまう前に収穫されます。

ビールの苦味と香りをつける原材料

外見は松ぼっくりに似ていますが、ホップは木になる果実ではありません。ツル性の多年生植物であり、コロコロとした毬花は雄株や雌株で、それぞれおしべ、めしべの集合体です。ビール醸造では、受精していない雌株のみを使用します。

ホップの毬花の芯部分には、ルプリンと呼ばれる器官があります。小さな黄色い器官で、ビールの苦味と香りをつけるのに欠かせない原料です。

ビールの代表的な原料といえば麦芽ですが、単独では魅力的な苦味や香りを生み出せません。ホップを使用することで、独自の味わいに仕上がります。ホップにも種類や産地ごとの違いがあり、どれをどの量使用するかでビールの味が変わるのも魅力のひとつです。

ホップは冷涼な気候で栽培されている

ホップは冷涼な気候を好むため、主にドイツやアメリカ、チェコ、中国で栽培されています。国産ホップは、明治初期の北海道で栽培されたのがはじまりです。

北海道以外の地域でも北部を中心に栽培地が点在しており、現在は岩手県がホップの生産量トップとなりました。岩手県のホームページによると、令和2年時点で全国シェアのうち48.7%を県産ホップが占めています。

参考:「ホップ(いわてお国自慢)」(岩手県)

ビール造りに欠かせない!ホップの主な5つの役割

実はホップを使用しなくても、麦芽とその他材料のみでアルコールは醸造できます。あえてホップを使用する理由は、おいしいビールを醸造するのに欠かせない役割を担っているためです。

ビール造りでホップが担う重要な役割として、次の5つが挙げられます。

1.苦味をつける

ホップの代表的な役割といえば、やはりビールに苦味をつけることです。前述したルプリン(毬花の芯にある黄色い器官)に含まれるアルファ酸が、ビール特有の苦味を生み出しています。

アルファ酸は、熱されるとイソアルファ酸に変わり、さわやかな苦味を作り出します。アルファ酸の含有量が多ければ多いほど、苦味成分も増える仕組みです。ビールの苦味に関する指標IBU(International Bitterness Units)も、アルファ酸の濃度を表したものです。

ビール醸造時は、麦汁とともにホップを煮沸することで苦味成分を液体へ移しています。複数種類ある中で苦味をつけることに長けたタイプは、ビタリングホップとも呼ばれます。

2.香りをつける

ビール特有の香りを生み出すのも、ホップの重要な役割です。ルプリンには苦味成分のもとだけではなく、香り成分となる精油も含まれています。いわゆるホップ香と呼ばれる香りは、精油に含まれる成分ミルセンやフムレンによるものです。

複数種類のホップを組み合わせることで柑橘系、香辛料、青草など、さまざまな香りを作り出せます。ビタリングホップに対して、香り付けに長けたタイプはアロマホップと呼ばれています。

ホップ香の他、酵母由来の「エステル香」やモルト由来の「モルト香」もビールの香りを決める重要な存在です。3つの香料が組み合わさった結果、複雑で魅力的なビールの香りが生まれます。

3.泡もちを良くする

ホップのルプリンは苦味や香りに加えて、ビールの泡もちにも大きく貢献しています。ビールの泡は、麦芽由来のタンパク質に覆われているのが特長です。ルプリンのイソアルファ酸(苦味成分)がタンパク質と結合すると、ビールの泡が補強されます。

ホップを使用するとビールの泡もちが良くなるのは、補強された泡が消えにくくなるためです。泡もちが良いビールは表面にフタがされた状態となるため、酸化しにくく味わいを保てるメリットもあります。

4.濁りを抑える

ホップには、ビールの濁りを抑える清澄剤としてのはたらきもあります。ビールが濁る原因は、麦芽由来の酵母、すなわちタンパク質です。

麦汁の発酵時、酵母は代謝を繰り返しながら液中に漂っています。発酵終期が近づくと多くの酵母は結合して塊となり、沈降していきますが、中には凝集性が低くなかなか固まらないものもあります。

固まりにくく液中で漂い続けている酵母が、ビールの濁りを生み出しているタンパク質の正体です。ホップに含まれるポリフェノールがタンパク質と結合して沈殿、分離させてくれるため、澄んだビールに仕上がります。

5.殺菌作用がある

ホップは苦味、香り、泡立ち、清澄と、多くのはたらきでビールの味わいを豊かにしてくれます。さらに味や香りを左右するだけではなく、殺菌作用が期待できるのもホップがもつ魅力のひとつです。

ホップのルプリンがもつ殺菌作用が雑菌の繁殖を抑え、ビールの腐敗を防いでくれます。ホップの殺菌作用は、似たような作用をもつハーブの中でも特に強く、ビール業界以外の食料品メーカーからも注目を集めるほどです。

また、ホップの殺菌作用はひとつのビールが誕生するきっかけにもなりました。防腐技術が発達していなかった18世紀末に、イギリスがインドにペールエールを輸送する際、殺菌作用のあるホップが大量に使用されました。

当時の新たなビアスタイルは、IPA(インディアン・ペールエール)として現在も残っています。

もともとビールに使われていなかった?!ホップの歴史

今でこそビールの原料の代名詞ともいえるホップですが、最初から活用されていたわけではありません。もともとは異なる植物が近い役割を担っており、ホップの使用が定着するまで長い年月がかかりました。

ここからは、ホップがビール造りの原料として徐々に浸透してきた歴史を解説します。

ホップの立ち位置として「グルート」が使われていた

ビールの誕生に関する由来は諸説あり、紀元前にまで遡るといわれています。しかし、最初からホップが使用されていたのではなく、香草、薬草、香辛料などを複数組み合わせたグルートを使用するのが一般的でした。グルートの一部として、ホップが含まれる場合もあります。

「紀元前のバビロニアでは、すでにビール醸造にホップが使用されていたのでは」とする説もありますが、局地的な話にすぎません。すべての地域における主な手法とはいえず、8世紀ごろから使用された記録を残しつつも普及したのは15~16世紀ごろのことでした。

ビール造りに主に使用されていたグルートは、独占販売権である「グルート権」をもつ者のみが配合方法を有していました。やがて、グルートに含まれるホップの殺菌作用などに注目が集まり、しだいにグルートからホップへと移行していったのが、現在のビールのはじまりです。

ホップが主流になったのは15世紀以降

ホップがビールの原料として注目された背景には、12世紀初頭、ドイツのルプレヒトベルグ女子修道院のヒルデガルディス院長が使用したことにあります。修道士であるヒルデガルドが初めてホップの特性について書き残し、徐々に広まっていったのです。

14世紀に北部のアインベックがホップ入りビールを販売したのを皮切りに、15世紀にはグルートからホップ入りビールへと移行しました。

グルートよりもホップは保存性、味、香りなどが優れていたことから、主流となるのは自然な流れといえます。1516年には、ドイツで「ビール純粋令」が制定され、大麦、ホップ、水の3つの原料のみで醸造することが定められています。

90年の歴史、北海道のホップ産地でがんばる若手生産者

みなさん、はじめまして。ホップ担当のフィールドマンとして研修中の上本です。
サッポロビールに入社して3年目、北海道上富良野町にあるバイオ研究開発部北海道原料研究センターでホップの研究をしています。早く一人前のフィールドマンになるべく、先輩フィールドマンの指導を仰ぎながら、忙しい日々を送っています。

上本hatake

ここ上富良野町は91年前の大正12年からホップの栽培が始まり、最盛期には100軒以上の生産者により栽培される一大産地でした。栽培に非常に手間がかかることからその数は年々減少し、今では4軒となりました。今回は、代も変わり、若返った協働契約栽培の生産者をご紹介します。

ホップ生産者3名

まず、トラクターの写真の左側が佐藤さん。上富良野町ホップ生産組合の組合長です。お父さんの代から数えると55年ホップ生産を続けていらっしゃる二代目です。
右の写真が大角さん。大角さんもおじいさんの代よりホップ栽培を始め約70年になるそうです。ホップ栽培への意気込みをうかがうと「ホップは特殊な作物だけれど、出来上がるのはとても身近なビール、そこがホップ栽培の面白いところ」と語ってくれました。
最後に、左の写真に戻って佐藤さんの右側でトラクターの上にいるのが稲葉さん。実は、元サッポロビールの社員で、ホップのフィールドマンだった方です。昨年、ホップ生産者に転身されたばかり。在職中は大変お世話になった大先輩ですので、2年目とはいえなかなか手ごわい生産者です。
以上3軒に、7年前にホップの栽培を引き継いだ小丹枝(おにし)さんを加えた4軒で上富良野町のホップ栽培が守られています。
北海道で唯一のホップ産地としての歴史と誇りを受け継ぐ若手の生産者の皆さんと、これからも一緒に取り組んでいきたいと思います。

毛花から球花へ

さて、みなさんはホップの花をご覧になったことはありますか?

7月のはじめ、ホップは小さな花(写真の左側)を咲かせます。みなさんが御存知の右側の球花とは全然違うでしょう?この花は見た目通り「毛花」と言います。
毛に見える部分はめしべで、生育とともにめしべが脱落しその後1カ月半くらいで球花になります。今年も上富良野のホップは順調に生育していて、8月下旬から収穫がはじまります。
来年の今頃は一人前のフィールドマンとして、どこかの産地情報をお伝えできると思います。若手生産者の皆さんに負けないよう、自分もがんばりますよー!!

【summary】
Hello everyone, I am Mitsuhiro Uemoto, a hop researcher and a trainee to be a Fieldman.
I am going to talk about Kamifurano, Hokkaido this time. Here in Kamifurano, hop farming was established in 1926.
The its geographically similarity to Hallertau, the world famous hop growing area, might have contributed to its establishment.
There used to be more than 100 hop growers in Kamifurano during the peak period, but now there are only 4 growers, primarily because hop farming requires time and labor very much for producing high quality hops.
We have to keep up the great tradition of hop farming in Kamifurano, so we will cooperate with the 4 growers.
We are ready to harvest hop. Hopefully the yield is plentiful enough this year for everybody to enjoy great beer from this crop hops.

まとめ

テレビCMなどでアピールされることからもわかるように、ビール造りにはホップが欠かせません。麦汁にビール特有の苦味を加えるだけではなく、組み合わせ次第で多様な香りを生み出せる点も魅力です。

次にビールを飲むときには、ぜひホップの苦味や香りをじっくりと楽しんでみてください。

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