CHEER UP! 毎日の“ワクワク”した暮らしを“応援”するポータルメディア

閉じる
  1. HOME
  2. 知る
  3. ヴィクトリア朝時代の公衆トイレが、クールなバーに大変身

CATEGORY : 知る

ヴィクトリア朝時代の公衆トイレが、クールなバーに大変身

WC Barsブルームズベリー店の内装

クレジット:Chris Howlett

世界的な地価の高さで知られるロンドンでは、ヴィクトリア朝時代に建てられた公衆トイレなど、長い間放置されてきた地下スペースを改装したカフェやバーの数が増えています。そのひとつが、最近2店舗目をオープンした「WC Bars」です。

ロンドンのおしゃれスポットに生まれ変わった公衆トイレ

世界的な地価の高さで知られるロンドンでは、ヴィクトリア朝時代に建てられた公衆トイレなど、長い間放置されてきた地下スペースを改装したカフェやバーの数が増えています。そのひとつが、最近2店舗目をオープンした「WC Bars」です。

20世紀の始まりと同時に終わりを告げたイギリスのヴィクトリア朝時代(1837〜1901)と現代では世の中の様子も大きく変わりました。例えば、今の時代はどこにでもスターバックスがあるので、外出時に急にトイレに行きたくなっても安心です。しかし19世紀のイギリス、特にロンドンのような過密都市では公衆衛生上の観点からトイレの整備は非常に重要でした。そこで地下にいくつもの公衆トイレが建設されましたが、人の目が届かない場所は治安上問題にもなりやすく、当時建てられた公衆トイレの多くはずっと閉鎖されたままになっていたのが事実です。しかし最近、その一部をリノベーションしてオシャレなバーとして生まれ変わらせる事例が増えています。

WC Barsは、ロンドン南部クラッパムにオープンした1号店の成功を受けて、2020年11月に2号店となる「WC Barsブルームズベリー」をオープンしました。2014年にオープンした1号店は、ワイン(Wine)とシャルキュトリー(Charcuterie)の店であることから、この2つの単語の頭文字と“公衆トイレ”を意味するWCに2重の意味を込めて名付けられたのです。地下にある公衆トイレを隅々まで丁寧に修復・改装したもので、ロンドン有数のヒップなバーとしてその名を知られています。

ロンドンのウェストエンドにオープンした「WC Barsブルームズベリー」について共同創業者のジェイク・マンジョン氏は次のようにいいます。「数カ月間にも渡って秘密裏に取り組んできたプロジェクトがようやく陽の目を浴びることになり、とてもワクワクしています。公衆トイレというおよそバーらしくないユニークな物件を、温かみのある空間に変えようと全力を尽くしてきました。格好つけずに本物の料理とお酒を正当な価格で提供し、皆さんがくつろげるシンプルな空間で楽しいひと時を過ごしてもらえればと思っています」

WCブルームズベリー店の内装

クレジット:Chris Howlett

新規オープンしたブルームズベリー店は“グレードII”という指定建造物であり、建築規制があるため全てを改装することはできません。そこで大理石の床と壁のタイルをそのまま活かし、木造の個室はセミプライベートな座席、ヴィクトリア朝の便器は椅子として活用しています。ワインやカクテルを飲み、シャルキュトリーボードや軽い料理をつまみながらゆっくり座って考えるのにぴったりです。

古い公衆トイレを改装したのはWC Barsだけではありません。同じロンドンのケンティッシュタウンにある自称“5つ星のカクテルバー”「Ladies and Gentlemen」、イギリス北部ヨークシャー州シェフィールドのバー「Public」もそうです。Publicはイギリスの新聞「オブザーバー」が主催するOFAアワード(フード関連の授賞式)で2018年のベストバーにも選ばれる快挙を遂げています。

どうしてイギリスでは古い公衆トイレをおしゃれなバーにリノベする案件が多いのでしょうか。これには様々な側面があるとマンジョン氏はいいます。「ロンドンでは空間は公共のものだと考えられています。カフェやアパートに変身した公衆トイレもあります。この街にはクリエイティブな起業家がたくさんいます。私たちにとってこのプロジェクトはやりがいのある仕事でした。120年以上もの歴史と、トイレという当初の用途が決まった物件を、完全に違うものに作り変える作業はとても興味深かったし、たくさんのお客様に喜んでいただいています」

しかし、ヴィクトリア朝のトイレをバーにリノベしてみたいと思っても物件がなければ始まりません。オーナーたちはこうした物件をどうやって見つけているのでしょうか。

「ロンドンには長年放置されてきた公衆トイレだけでなく、地下鉄の廃路線もたくさんあります。ヴィクトリア朝時代に建設されたものが多く、独特の雰囲気があり、立地も素晴らしい。文字通りの優良物件なのです」とマンジョン氏。

「このようなスペースの需要が急上昇したことを受けて、地元の自治体も新たな収入源として注目しています。私たちがクラッパムにオープンした最初のWCは、開店以来皆様に愛され続け、アワードも受賞しています。そのおかげで、こうした物件が市場に出た際には、自然と連絡が来るようになりました」

マンジョン氏はさらにこう述べています。「私たちは可能な限り忠実に元の状態を再現するべく手を尽くしてきました。今では、実績のある独立系の事業者として認められており、自治体にも満足頂いています」。確かに発注する自治体側も、歴史ある公衆トイレをどう活用すればいいのか分からない業者に任せたいとは思わないでしょう。

この記事はFood & Wineのマイク・ポメランツが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされています。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまで。

  • LINE