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赤羽「太助」名残のふぐと春の香りに心をお腹も満たされる。

あのお店はなぜ時代を超えて愛されるの? お客さんがみんな笑顔で出てくるのはどうして? 赤星探偵団の5代目団長・宇賀なつみさんが、名店の暖簾をくぐり、左党たちを惹きつけてやまない「秘密」を探ります――。 (※撮影時以外はマスクを着用の上、感染症対策を実施しております)

■83歳でバリバリの現役

流行り廃りの激しい東京の飲食業界で、長く店を守り続けるのは大変なこと。若さをエネルギーにえいやっと開業はできたとしても、長く客の愛顧を得るには不断の努力が必要だし、繁盛を保ったとしても、歳をとれば重労働に身体がついていかなくなる。

その点、店主が老境に入ってもなお板場に立ち続ける店には、どこか凛とした空気が漂い、それでいながら安心して身を委ねられる居心地のよさがある。

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JR赤羽駅と東京メトロ赤羽岩淵駅の中間にある「太助(だいすけ)」は、そんな稀有な日本料理店。創業は1969年。井上博行さんが30歳で開いた初めての自分の店で、今年でなんと53年目となる。つまり、店主で板長の井上さんは83歳でいまだ現役なのだ。

「太助」が得意とするのがふぐ。この日、宇賀なつみ団長は、シーズン終わりの名残のふぐを楽しもうと駆け込んだ。

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井上さんが作業する真ん前の特等席に陣取った団長は、さっそく本日のお品書きとにらめっこ。うんうん悩んでいると、「お刺身切りましょうか。盛り合わせますよ、小盛りで」と井上さん。

そんな助け舟に乗りながら、じゃあ煮物はこれで、ならば焼き物はこちらでと、すぐさま献立が出来上がった。

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そしてまずは、何はなくともサッポロラガービール、赤星だ。店の奥にある年代物の水冷式冷蔵庫でほどよく冷やされた赤星をトクトクと注いで……。

――いただきます!

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宇賀: んんーーおいしい。やっぱり外で飲むお酒はいいですねえ。そして、口開けには赤星が最高です。

やってきた刺盛りは、マグロの赤身にイサキの皮霜焼き、ホタルイカ、ホタテ、とり貝。春らしい顔ぶれ。季節のものを少量ずつ、ちょうどいい分量なのがまた嬉しい。

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宇賀: まずはイサキから……軽く炙った皮目が香ばしくておいしい! ホタルイカもプリップリ。今シーズンでナンバーワンかも。

今日はお魚が食べたかったの。ふぐ以外にもいろんなお魚を用意しているんですね。うれしい!

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「うちは値段は手頃だけど、ちゃんといいものを使ってるよ。魚は50年来の付き合いの築地の一次卸しから仕入れてるからね。赤坂の料亭と違って“大間のマグロ”とかブランド物ではないけど、それに負けない旨い魚を工夫して選んでいるから。値段は赤坂の料亭の10分の1だよ」

軽妙なトークを展開しつつも、井上さんの手が止まることはない。

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