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【第2回】学生限定イベント開催! 青空の下でお酒にまつわる「モッタイナイ」を考える
企業活動や社会的な取り組みとして、サスティナビリティや環境問題について語られるケースが日増しに増えています。もちろんサッポロビールとしてもさまざまな活動を行っていますが、これをひとりひとりが「自分たちの問題」として何かできないかと考える、そんなイベントが開催されました。スタカン社員とサッポロビールの社員とが、お酒を飲みながらお酒にまつわる「モッタイナイ」を語り合った「【第2回】学生限定イベント」の模様をお届けします。
■みんなで「自分のこと」としてモッタイナイを考える
今年で2回目の開催となるSAPPORO STAR COMPANY(スターカンパニー/愛称:スタカン)の「学生限定イベント」は、青空の下、芝生のうえでスタカン社員とサッポロビールの社員とが、お酒を飲みながらお酒にまつわる「モッタイナイ」を語り合うというイベント。サスティナビリティの実現には自分たちにどういうことができるだろうか?と、肩肘張らずに考えるイベントです。
このイベントは前回に引き続き、SUKIMA DESIGN LAB(スキマデザインラボ)の代表、岡部祥司さんのご協力を得ての開催となりました。同社は「世の中のスキマに眠る「モッタイナイ」データを収集し、新たな価値へとデザイン」する会社。世の中の「モッタイナイ」という声を集めるリアルワークショップ「モッタイナイ会議」を開催していて、このイベントもその一環なのです。
■自己紹介の工夫で一気に打ち解ける学生の皆さん
会場となったのは恵比寿ガーデンプレイス内、サッポロビール本社のすぐわきにある自然共生サイト「サッポロ広場」。「都会の真ん中に居ながらも自然が感じられ、『集う、憩う、つながる』を実現するような、地域にとって開かれた場所」を目指した庭園です。
一角にはグループ会社であるポッカサッポロにちなんでレモンの樹が植えられているほか、奥には恵比寿神社もあり、地元のかたたちの散歩コースにもなっている憩いの場でもあります。イベントはそのなかの芝生が敷かれた広場で開催されました。
↑モッタイナイBARとして、この日はノンアルコール飲料を含めてたくさんのドリンクをご用意。自由に飲んでもらいつつ、日頃感じるモッタイナイについて語り合いました。
今回のイベントに参加してくださった学生さんは、約20人。あらかじめ運営スタッフが決めたA~Dのグループごとわかれてもらいました。各グループにはサッポロビールの社員がオブザーバー的な役割でひとりずつ就いています。サッポロビール側のスタッフが自己紹介を終えたあとは、イベントの進行役も務める岡部さんが今回のイベントの流れや注意点をざっと説明しました。
「最初に『お酒にまつわるモッタイナイ』を考えて、付箋に書き出してもらいます。お酒そのもののことでもいいですし、お酒が出てくる場面とか、お酒と自分の関係性だとか、どんな視点でも構わないので、思いつくことを書いてください。
ちなみに最近僕がモッタイナイと思うのは、乾杯時の待ち時間です。生ビールはすぐに出てくるのに、ほかの飲み物、たとえばカシスウーロンとかなかなか出てきませんよね。なんかええ時間なのに待たされる、この“カシスウーロン待ち”みたいな時間をモッタイナイと思います」(岡部さん)
まじめにやるけど、まじめじゃない。ふざけているのだけどまじめ。まじめなのだけれどふざけている、そんな感じでイベントを進めたいと岡部さんは語ります。
「いろんな人、いろんな人たち、いろんな立場、いろんな目線でいろんなことを言ってくると思います。まずは一度すべて聞いて、受け入れてください。『あ、それ違うわ』と頭ごなしに否定するのはやめましょう」(岡部さん)
■学生たちが感じるさまざまなモッタイナイ
さて、いよいよワークショップのはじまりです。AからDの4つのテーブルで、お酒にまつわる「モッタイナイ」が次々と付箋に書き出されていきました。どんなモッタイナイが挙がったのか、その一部をご紹介しましょう。
「飲み会でお酒や食べ物があまること」
「賞味期限切れや運送による破損などで廃棄が出ること」
「飲みたくないのに飲むお酒」
「ビールの製造時に出る麦芽の搾りかす」
「ビールはきらいじゃないのに1缶分の350mlが飲みきれないこと」
これらはフードロスなどにつながる「物質的なモッタイナイ」ですね。
「好きな地酒の知名度が上がらないこと」
「サークルに入ってない人は飲む機会がなかなか生まれないこと」
「お酒を飲めない人が楽しめない空間になりかねないこと」
「生ビールの泡が消えること」
「缶がすぐぬるくなること」
「コンサート会場などのお酒が高いこと」
「世の中にたくさんあるだろうおいしいお酒を知らないこと」
「ワインはグラスに注いでおしゃれに飲むもの、日本酒はおじさんが飲むものといった固定概念」
こんな「お酒が好きだからこそ感じるモッタイナイ」も集まりました。ほかにも、
「せっかく仲のいい友だちと話せるチャンスだった飲み会で、トイレで出会った知らない人と仲良くなってその人とばかり話し込んでしまい、しかもその後の付き合いには発展しなかったこと」
「二日酔いで1日が無駄になること」
「飲酒運転による事故が世の中からなくならないこと」
「お酒を知ってからシラフの人と話すハードルが上がったこと」
「酔ってよけいなことを言ってしまうこと」
などなど、「飲酒で経験したちょっとした失敗からくるモッタイナイ」もありました。
とあるグループは「海外に留学していたときは休憩中にビールを1杯飲んでから次の授業に行くといったことが気軽にできたが、日本では居酒屋に行くなど本格的に飲む以外の選択肢が少ない」と、発表者が個人的な経験を踏まえて発表するケースも。このように飲酒を文化的な面から考えるケースはほかにも見られました。
ときには発表の内容に笑いが起こったりと皆さん決して堅くなりすぎず、ほかのグループの発表にもきちんと耳を傾けていたのも印象的。まさに「ふざけているのだけど、まじめ」。岡部さんの指針はしっかり守られているのでした。
■2つのモッタイナイを一気に解決するアイデアとは?
さて、全グループのモッタイナイが出そろったところで、ワークショップは次の段階へと進みます。
「グループで出てきたモッタイナイのなかで『いちばんモッタイナイ』ものを選んで、その解決方法を考えてください。解決方法はまじめに考えたってしょうもない、いや、言い方悪いな。『こんなことできたらおもろいんちゃうかな』みたいな、非現実的なものでもかまいません。その解決のアイデアをまたグループごとにまとめて発表してください」(岡部さん)
西のほうのイントネーション混じる岡部さんのユーモアまじりの言葉に、各グループがいっせいにディスカッションに入ります。
最初にみんなの前に出てまとめを発表したのは、Dグループでした。
「私たちはまず、いくつも出たモッタイナイのなかから、ビールの容器に瓶と缶しかないことと、ビールの製造時に麦芽カスが出てそれが大量に廃棄されることについて着目しました」
缶と瓶は分別してリサイクルを考えて廃棄する必要がありますし、瓶は重いうえにペットボトルのように途中でキャップを閉めることもできません。落とすと割れてしまうのも問題です。
一方、ビールの製造時に出る麦芽の絞りかすは飼料や肥料として農業に利用されたり、健康食品などに活用されたりもしていますが、それでも大量の廃棄分も出ています。
「麦芽の絞りかすを利用してコンソメ味などの食べられる容器をつくることができたらおもしろいなと思いました。食べられる容器なら生ゴミとして捨てられるのも利点です。最初は缶の形にして販売するのは難しいと思うので、カップの形などにして、食品のフェスなどで『食べられる容器ですよ』と広めていければおもしろいと思いました」
自分たちの出した2つのモッタイナイに着目し、それらを一気に解決するアイデアとしてまとめたのは見事ですね。確かに食べられる容器ならイベントなどでの活用には向いているかもしれません。しかもコンソメ味という味付けの一例まで言及されていて、思わず歯ごたえや味わいを想像してしまいますよね。
■お酒のマイナスイメージがモッタイナイ!
「お酒のすごさを知ってもらいたい。否定的なイメージがつきやすいお酒に、すごさ、よいところもあるともっと知ってもらいたい」そう発表をはじめたのは、2番目に発表をしたCグループ。お酒はマイナス面が強調されがちなところがモッタイナイと感じ、それに対する解決策を考えたわけですね。
Cグループのアイデアはお酒を飲めない人、飲んだことのない人に対するアイデアから披露されました。
「たとえば居酒屋の飲み放題で、もっとノンアルコールメニューを増やしたり、お店自体をおしゃれにしてお店自体に行きたいと思わせ、そのうえで『こういう雰囲気のなかで1杯飲みたい』と思わせる」
まずは雰囲気づくりから、というところは、飲める、飲めないに関わらずお店に行くメリットを生みますし、特に飲んだことがない人にとっては最初の1杯のハードルを下げるのに有効かもしれません。
↑お酒の効果も手伝い、全員が初対面とは思えないほどどのグループもスムースに議論は進んでいきました。
また、飲み会では「たくさん飲まないといけない」という偏見があると指摘。「1杯でもいいから来てと誘えたらいい」と、誘う側の意識改革も必要だと説きました。
加えて「自分を出しやすくなるので今まで縁がなかった人とも打ち解けやすくなる」といったお酒のメリットも挙げつつ、お酒を飲むきっかけとして、「記念日をつくる」ことも提案しています。「たとえば何かのお菓子の記念日があったら、ふだんはそのお菓子を食べない人もそれを食べてみようかと思うじゃないですか。そういう『マーケティング的な記念日』をつくります」
さらに、いいところを喧伝するアイデアだけでなく、デメリットを減らす提案もしています。
「お酒は夜に飲むものとされていて終電を逃したりといったことも起こるので、昼飲みを広めて余裕をもって帰れるようにして、お酒の魅力を広く知らせていきたいとも思いました」
最後に「自分が飲めるお酒の量と、今飲んでいるお酒の量を科学的にパラメータ化できたら、飲み過ぎが防げる」と、飲み過ぎによる悪影響を解決する提案を行い、Cグループはその発表を終えました。こうしたCグループの発表を聞き終えた岡部さんは「まさに青空の下でお酒を飲み、初対面の人たちが打ち解けているこのイベントがいいってことですね」と満面の笑顔です。
実はこの日のイベント運営を手伝ってくれた男性は、去年開催された【第1回】学生限定イベントの参加者でした。お酒で生まれた岡部さんとの縁が今も続き、手伝ってくれることになったのです。しかも、去年の学生イベントの参加者たちと今でもつながっていて、いっしょに飲んだりしているそうです。
お酒のマイナス面をモッタイナイと感じ、飲酒の文化を広めるための幅広い提案を行ったCグループの発表には、このワークショップの“らしさ”がとてもよく出ていました。
■コト消費で日本酒をアピール
3番目に発表したのはBグループです。
「私たちが特に注目したのは『お酒に対する固定概念をどうやって払拭するか』です。ただ、いろいろ考えていたらあまりに話が広がりすぎてしまったので、日本酒に対するイメージに内容を絞りました」
Bグループの学生さんたちによると、日本酒には「おじさんの飲むお酒」といったイメージが強いとのこと。これを払拭し、どうやってZ世代をはじめとする若者の世代に広めていくかを考えたそうです。
「お酒自体のイメージを変えることも大事かもしれませんが、やっぱり若者世代はモノ消費よりもコト消費を好む傾向にあります。たとえば今回のイベントではサッポロビールが好きな人たちと集まって飲んだという経験は、とても私たちの世代にとても刺さります。
そこで、たとえば夏のバーベキューで日本酒を飲むとか、各都道府県へ旅行したときに、その土地でしか飲めないお酒を飲んだりすることが有効だと思いました」
よさを知るにはまず良質な体験が必要であるとBグループは語ります。
「日本酒をもっとおしゃれに飲めるようにすることも大事で、日本酒カクテルはどうかと思いました。見た目もおしゃれならインスタに載せたいって多くの人が思うはず。
やっぱり若者世代に日本酒の魅力を広く伝えるには、インスタの本アカに日本酒を載せたいと思わせるところがゴールです。今のままだとおじさんっぽいイメージが強くて載せづらい部分があるので、もっとおしゃれに、また『こんな風に日本酒を飲んだ』という魅力的な経験として紹介できるようになったらすごくいいと思いました」
自分たちの世代の消費トレンドを踏まえつつ、「体験や経験として訴求して欲しい」という当事者たちからの提案は、とても説得力が感じられますね。
今はボトルやネーミングにとても凝った、まさに「おしゃれな日本酒」が少なくありません。しかし、Bグループの発表からは、それが固定概念を突き破るまでには至らず、また、若い世代には届いていないというのが現実なのだろういうことが感じられました。
発表を聞き終えた岡部さんは「サッポロビールのイベントで、テーマを日本酒に絞るのっ最高ですね」と講評。会場からは笑い声が上がり、Bグループのメンバーは苦笑いを浮かべていました。
■自分が飲める限界を機械で測定できれば……
最後の発表は、Aグループ。これまでのグループは飲むまでの話だったのに対し、Aグループは飲んだあとの話をまとめました。
「私たちはさっき挙げたたくさんのモッタイナイのなかでいちばん共感できるものとして、『朝まで飲んで1日がつぶれるのはモッタイナイ』を選び、酔いすぎて記憶をなくすことも含め、それの予防を考えました」
Aグループ内で解決策として真っ先に挙がったのは「サプリの開発」だったそうです。コンビニでお酒の横に置いてあったりすれば売れると考えたそうですが、ただサプリには体質によって効かないという指摘があったほか、フラフラになってからサプリを飲むのもつらいという意見も出て、取り下げになったとのこと。
また、その過程では、酔いつぶれるのは「水が足りてない」ためと考え、飲酒時にもっと水を飲めるよう、水とサプリのセットやお酒と水のセットを販売するというアイデアも出たそうですが……。
「私たちはけっきょく酔いつぶれるのは自分の限界を知らないことがいちばん大きな理由だという結論に至りました。そこで、自分の飲める量の限界を測定する機械を開発。それが大学などに置いてあれば、酔いつぶれる前に自制できるようになるでしょう。また、お酒の飲み方講座みたいなものがあればそれを受講したり、飲む経験を積んで鍛えるなども有効かもしれません。自分のお酒の飲める量が正確にわかれば結果的に無駄なお酒の注文も減り、SDGsにつながると思います]
Cグループと同様、Aグループも「自分の飲める量を知り、適正飲酒を心がけることはとても大事」という意見が出たのですね。とはいえ、自分の飲める量を知るためには酔いつぶれる経験を積むこともときに必要となります。しかし、自分の限界量を測定する機械があれば、飲み過ぎる経験を積むことなく「1日がつぶれてモッタイナイ」を未然に防げるというわけです。結果的にフードロスの防止にもなると結んでいるのもいいですね。
■サッポロの社員にも大きな学びが
各グループの発表が終わったあとは、そのディスカッションに加わったサッポロビール社員からの講評が続きました。
「最終的に日本酒にフォーカスしましたが、それ以前にはお酒全般への固定概念についても活発な議論が起こりました。誰も人の意見を否定せず、出てきた意見に重ねるように、同意したうえで新しい意見を出していったのが素晴らしいと思いました。あと、日本人だから日本酒と古いものにも目を向けてそれを理解したい気持ちがあると知れたのは私にとっても学びとなりました」
これはBグループの担当ですね。Cグループの担当も、自分の学びになったとのこと。
「楽しく活発に議論を重ねていた印象です。人の意見に対してネガティブなことを言う人がいなかった点もとてもよかったと思っています。今回はお酒がテーマでしたが、いろんな考えの人がいると知り、議論を重ねた経験は、今後、仕事や人間関係でも活かせるんじゃないかと感じられました。自分がどう思うかだけでなく、いろんな人の視点で物事が見られるようになれればいいと、改めて私も勉強させてもらいました」
次に講評を述べたのは酔いつぶれることの防止について意見をまとめたAグループの担当です。
「Aグループは女性しかいないなか、みんな自分や周囲の人たちのあいだで起こった実体験をもとに話を進めていて、それに対して全員が共感を持って議論を進めていたところが素晴らしいと思いました。自分が飲めるお酒の量を知るというのは自分でも制御できる問題かもしれません。ただ、自分だけ限界を超えなければいいという話で終わらせず、『みんなでお酒を楽しく飲むにはどうするか』『お酒の文化をどう広めていくか』をしっかり考えたうえで『機械で客観的に計測する』という結論にたどりついたのは素晴らしいと思いました」
最後にDグループについての講評を紹介しましょう。
「ひとつひとつのアイデアを出していくだけでなく、出たアイデアを組み合わせたらもっとおもしろいアイデアが生まれそうというように、固定概念にとらわれずに考えを進めていくのが素敵だと思いました。
お酒を入れられて、しかも食べられる容器って、今は実現するのが難しいかもしれないけれど、ソフトクリームのコーンだって食べられるし、いずれはつくれるようになるかもしれない。出たらぜったい売れるよ、あったらきっとおいしいよね、と、イメージをふくらませながら、いろんな角度から考えて意見を出していて、私も楽しく議論に参加できました」
各グループを見守ったサッポロビールの社員4人にも、ワークショップを通じて大きな学びがありました。
■「非現実的」はあくまでも「現在」の判断
岡部さんは、「解決策は非現実的なものでも構わない」と最初に言っていました。しかし「非現実的」であるという判断には、「現在の技術で考えれば」という前提がつきます。
つまり、いずれ不可能は可能になるかもしれません。「できない、無理」と固定概念にとらわれず、今よりもよくなるようなアイデアを自由に出しあう。これがこのワークショップでは大きな意味を持っていました。
ちなみに各グループを担当したサッポロビール社員は、サワー関連のブランド担当や、新規事業開発でさまざまな自治体とのコラボを推進する担当など、所属する部署もさまざま。学生さんたちはディスカッションの合間や歓談のなかで仕事のことを質問するなど、サッポロビールという企業への興味も深く抱いてくださったようです。
ワークショップが一通り終わった後は、自由な歓談の時間が設けられました。今日が初対面の集まりだったはずが、この頃にはもう完全に全員が打ち解けていたのも印象的。天気にも恵まれ、いろいろな意味でイベントは成功だったと言えそうです。イベントを終え、家路に就く学生さんたちからは、そのまま二次会で居酒屋に、なんていう声も聞かれました。
なお、今回ご協力いただいた岡部さんのスキマデザインラボと、サッポロビールがグループとして取り組んでいるサスティナビリティに向けた活動を紹介したページのリンクを掲載しておきます。ぜひご覧になってください。
(文・写真=稲垣宗彦)