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魅力と不思議に満ちた街。
フランス・コニャック地方を巡る旅の魅力
お薦めのアクティビティから観光名所、お酒まで、魅力と不思議に満ちたフランス・コニャック地方の魅力をご紹介します。
コニャックという言葉は、3つの意味を持っています。フランスにある街の名前、その街の周辺エリア、そしてその地で生産されるお酒の名前です。コニャック地方の丘で栽培された白ブドウから作られる蒸留酒のコニャックは3番目で、ブランデーの一種です。厳しい地理的条件と様々な規定をクリアした製品のみが「コニャック」を名乗ることができるのです。
コニャックの歴史
パリから電車で4時間ほどのところにあるコニャックは、週末を過ごすのに最適の場所です。森の中にそびえ立つ、17~18世紀建設のコニャックメゾンは「美女と野獣」に出てくる城を思い起こさせます。高い壁と塔が特徴的なこれらの城には、マーテル、クルボアジェ、ヘネシーなど、著名なコニャック創業者の一族がかつて暮らしていました。
今日、これらのシャトーは住居ではなくビジネス関連のクライアントをゲストとして迎える宿泊施設になっています。しかし、ベルベットの肘掛け椅子、優美な織物、暖炉に燃える薪の音など、建物内部には古き良きフランスの雰囲気が重厚に漂っています。残念ながらシャトーのツアーは開催されていませんが、蒸留所を見学してコニャックを試飲することは可能です。
コニャック地方にある蒸留所では、200年も昔に蒸留された幻のボトルが展示されていたり、希望すれば自分でオリジナルのブレンドにトライすることもできます。ボルドーなど、観光客に絶大な人気を誇るブドウ産地に比べると、コニャックのセラーは比較的空いているので他人に邪魔されず楽しむことができます。
しかし、コニャックは決して人里離れた場所という訳ではありません。最初は塩、次に蒸留酒の交易の拠点として1000年ほど前から栄えていました。その歴史的重要性に関わらず、のどかな田園地帯であり、ほかの観光地と比べると海外からの観光客はあまり多くないのも事実です。というのも、この街を訪れる人の大半はビジネス目的で、蒸留から流通、樽の製造までコニャックに関わる仕事に従事している人たちなのです。
職人がコニャックを作る蒸留所
今も昔もコニャック業界を牛耳っているのは長い歴史を持つトップブランドですが、スタートアップもたくさん出てきています。また、この10年でジンの人気が高まり、製造ノウハウや設備が比較的簡単に手に入るようになったことから、コニャックだけでなく小規模なジンの蒸留所も次々と生まれています。
その一つである「Audemus Spirits」は、蒸留所の一般公開こそしていませんが、創業者の家のリビングルームで製造していることを今でも誇りしています。ここの「Pink Pepper Gin」は是非試してほしい逸品で、パリはもちろんフランス全土で販売されています。
少量生産の希少なコニャックを飲んでみたい人には「Bourgoin Cognac」がお薦めです。ブランド名になっている夫のフレデリック・ブルゴン氏とクルボアジェの元重役、レベッカ・アスリーヌ氏という働き者の夫婦が真心を込めて作り上げた家族経営の蒸留所です。ここでは家族の一員がガイドを務めるツアーが開催されています。大きいブランドにはなかなか真似のできないアットホームな雰囲気の中で、ブルゴン・コニャックは丹精込めて作られています。
旧世界のコニャック・メゾンを巡る
よく知られた国際的コニャック・ブランドは、昔から受け継がれてきた伝統という点で他の追随を許しません。18~19世紀にルーツを持つこれらのブランドは、国家の盛衰だけでなく、歴史的な瞬間を目撃したことも一度や二度ではありません。そのようなブランドの一つである「クルボアジェ」は、ラッパーが歌う曲の歌詞にコニャックが頻出するようになるはるか昔、ナポレオン一族に愛されたブランドとして知られています。
クルボアジェのシャトーに併設されている博物館では、ホコリの積もったボトルから蝋封まで、200年以上におよぶクルボアジェの歴史を物語る収蔵品の数々を見ることができます。最も安価なツアーはテイスティング付きで20ユーロ(約2600円)以下とかなりお得です。より高額なツアーでは、セラーの奥深くまで入って最高級のコニャックを試飲することもできます。
クルボアジェの博物館とテイスティングルームはシャラント川の美しい岸辺に面して建っていますが、これは偶然ではありません。シャラント川はこの地方の成功の鍵を握った水路であり、コニャックをはじめとする様々な商品がこの川を通ってフランス全土、さらに遠くの土地へと運ばれて行きました。
コニャックの有名ブランドの中でも最も豪華なのはヘネシーのテイスティングルームでしょう。世界最大のコニャックの造り手の名に恥じない壮麗な本社社屋を訪れるツアーは25ユーロ(約3200円)から。豊富な知識を持つガイドに従ってコニャックを自分でブレンドする時間はまたとない体験です。ブランデーや蒸留酒をはじめ、アルコール全般が好きではないという人にとっても、メゾンでのテイスティングは、美食と歴史の深みを知る貴重な機会になることでしょう。
しかし、コニャック地方の魅力はこの土地で生産されるお酒だけではありません。コニャックを一滴も飲まなくても有意義な時間を過ごせること請け合いです。中世の町並みが残る地区や川のほとりを散策すれば古風な趣を堪能できます。
フランスではどの街へ行っても大抵のブラッスリ―で良質なワインとシャルキュトリの盛り合わせを出してくれますが、ここコニャックも例外ではありません。お手頃な所ではLe Bistro de Claude、高級店ではLa Maisonがお薦め。いずれにせよ、コニャック地方でコニャックを飲むのは特別な体験であり、それだけでもコニャックを旅する十分な言い訳になることでしょう。
注:新型コロナウイルスの感染拡大により、テイスティングルームが休業している可能性があります。事前の確認をお願いします。
この記事はTravel & Leisureのゴーリ・チャンドラが執筆し、 Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされています。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまで。