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FIFA vs ウイイレ:2大サッカーゲームのライバル史

2020年初め、バルセロナのセルジ・ロベルト選手は、新型コロナウイルスとの戦いを支援するためサッカーゲーム「FIFA20」が企画したチャリティー大会へ参加することが決まっていました。この試みに13万ポンド(約1800万円)もの寄付が寄せられましたが、エイバルのエドゥ・エスポジト選手と対戦するはずだった第1ラウンドが開催されることはついにありませんでした。その理由は「ウイニングイレブン2020」のオフィシャルパートナーチームであるバルセロナの選手が、最大のライバルゲームであるFIFA20のイベントに出場すること対して、発売元のコナミが難色を示したためだといわれています。この出来事は、ウイイレとFIFAが25年にわたって繰り広げてきたライバル史の新たな1ページとして加わりました。

1993年12月にメガドライブで発売された「FIFAインターナショナル・サッカー」は、競合のサッカーゲームが色褪せて見えるほど画期的なものでした。当時人気だった「Kick Off 2」や「Sensible Soccer」は、どちらもフィールドを上空から俯瞰する“オーバーヘッドビュー”を採用していただけでなく、人気サッカーリーグからのスポンサーシップを受けていないという点も共通していました。しかし、16ビットコンソール時代を念頭に置いて開発された期待の新ゲーム、FIFAは、華々しいローンチから1カ月でなんと50万本を売り上げました。ゲーム批評家もサッカーファンも、FIFAのアイソメトリック(斜め上から見下ろすよう)な視点、リアルなアニメーション、フィールド狭しと繰り広げられるアクション、そして華麗なオーバーヘッドキックに熱狂しました。ゲーム雑誌「Mean Machines Sega」 は、「“クラシック”という言葉を使い過ぎ」だとして94点の採点をつけましたが、「これぞ真のサッカーゲームだということを認めざるを得ない」と評しています。

FIFAのプロデューサーを務めていたマット・ウェブスター氏は、この成功に度肝を抜かれました。EAは公式のライセンスをもってはいましたが、初代FIFAは後継のタイトルと比較すると精度がそれほど高くなかったからです。「FIFAの名前とロゴを使用する契約は結んでいたものの、テレビゲームに実在の選手の名前を使うなんてあり得ないことでした」とウェブスター氏は振り返ります。「そのため何千人もの選手に架空の名前をつけなければなりませんでした。私もつい、イングランド代表のフォワードに自分の名前をつけてしまいました。このゲームに対する反響は私たちの予想を大きく上回るものでした」

リードデザイナーのブルース・マクミラン氏はウェブスター氏とは違って最初から成功する自信があったといいます。「私はびっくりしませんでした。絶対にヒットすると分かっていましたから。FIFAはサッカーゲームのグラフィック、音響、ゲームプレイの業界基準を打ち立てたのです」。このマクミラン氏の発言は、正確に的を得たものといえるでしょう。実際、その後発売された「Sensible Soccer」はコンソール版をリリースしませんでしたし、Gremlin Interactiveの「Actua Soccer」などの競合タイトルは、投入される技術やゲームプレイにおいてFIFAの足元にもおよびませんでした。そのため続く4年の長きにわたって、FIFAは批評家やファンに愛され続けたのです。

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FIFAがサッカーゲーム市場を独占するこの状況を一変させたのが、1997年発売の「実況ワールドサッカー(International Superstar Soccer)」でした。初期プレイステーションで、シンプルなサッカーゲームとして好評を博した「Goal Storm」の後継作ですが、1994年発売のスーパーファミコン用ソフトのタイトルを受け継いでいます。日本のコナミが開発を手掛けたこの作品は、新しい3Dグラフィックスエンジンを搭載し、事前に決められた動きや戦術ではなく、有機的かつ即興的なゲーム体験をプレイヤーに提供するという画期的な試みでFIFAの牙城に挑んだのです。

スピーディでスリリングなゴールシーンが多いFIFAと比較するとスピード感は控えめながら、実況ワールドサッカーは戦術の多様性を重視した画期的な開発アプローチを採用し、また粘り強いプレーやキレのあるパス回しを可能にしました。ゾーンプレスやオーバーラップなど9つある戦術オプションの存在は、アーケードスタイルのアクション重視なゲームというよりも、シミュレーション型であることを示しています。ビジュアルも非常にクオリティが高く、ウェブサイト「Absolute PlayStation」は「ゲームであることを忘れてしまうほど美しいビジュアルが、実際の試合でプレーしている気分にさせてくれる」と褒め称えたほどでした。

その後PS1からリリースされた後継の3作で両者のクオリティの差はさらに広がりました。この間、ウイニングイレブンは、“ロベルト・ラルコス”、“ナルドリーニョ”、“バトゥスティータ”といった架空選手の名前が一つの話題になりました。イングランド代表の選手も同様に架空のネーミングでしたが、それは本題とは関係のない些細なことでしかありませんでした。最も重要だったのは、このゲームの開発が細部まで計算し尽くされていたことです。忍耐強いプレーが報いられ、フランス代表のフォワード、“ハンリー”をはじめとするプレイヤーの華麗なパスさばきも目を見張るほど生き生きとしていました。

「ウイニングイレブンは常にゲームプレイを重視してきました 」と語るのは、2001年〜2018年までコナミのPR戦略の陣頭指揮を執ったスティーブ・メレット氏。「日本で開発された初期タイトルでもすでにコントロールに重点が置かれていました。角張った選手の姿はFIFAの繊細さに敵わないかもしれませんが誰がどの選手かは一目瞭然でしたし、ゲームプレイは流れるようにスムーズでした。例えばイングランド代表チームのガッザ(ポール・ガスコインのニックネーム)は本物そっくりにブリーチした白髪になっています。ゲームエンジンを開発したら、あとはどんどん洗練していくのみでした」

ウイニングイレブンが、プレイステーション2に登場した2001年、ウェブサイトの「Eurogamer」は「あらゆるゲーム機のソフトと比較しても、間違いなく過去最高のサッカーゲーム」と絶賛しました。ウイニングイレブンが10点満点中9点を獲得したのに対し、本物と全く同じユニフォームを着た選手からなる400ものチームが登場する「FIFA 2002」は8点。「EAはライセンス獲得に没頭し、コナミは本物のサッカーを追求している」といわれるようになったのはこの頃からです。

ヴァレリ、ヒメネス、カステロといった架空の選手が登場する「Master League」と呼ばれるキャリアモードが非常に素晴らしい出来だったこともあり、2000年代初頭はウイニングイレブンの黄金時代といわれました。「ウイニングイレブン6〜9までの間は、ジャーナリスト相手に新作ゲームのデモをすると、数日後には『もう前のバージョンには戻れない!』と賛辞を書きたてられたものです。それを見るたびに私たちは大成功すると直感しました」とマレット氏。

こうして自信を深めたコナミは「ウイニングイレブン7」の表紙に当時の人気レフリー、ピエルルイジ・コッリーナ氏を起用しました。「当時は何をやっても許されました。コッリーナ氏は存在感のある有名レフリーだったし、(サッカー選手の)マイケル・オーウェンやダヴィド・ジノラの写真を使ったお馴染みの白っぽいEAのカバーとの違いも明らかでした。私は関与していませんが、今にして思えば、あんなことをするなんて恐れを知らなかったのか、まぐれあたりだったのか、一体どっちだったんでしょうね。まあ、コナミに勇気があったということにしておきましょう」

当時、コナミのクオリティの高さにはライバルであるEAの従業員ですら感服していました。2005年10月にFIFAのリードデザイナーに就任したゲリー・パターソン氏は次のようにいいます。「当時あれほど変化に富み、革新的で、感情を揺さぶるゲームプレイを作り出したスポーツゲームはほかになかったと思います。私もウイニングイレブンが大好きでした」

パターソン氏は、ウイニングイレブンから学んだことと、自分自身の直感を組み合わせたことが評価されてリードデザイナーに昇格できたといいます。「ダイナミックな体験を作り出すには、プレイするたびに異なる展開をユーザーに提供することが不可欠です。そこで私は自分のサッカーに関する知識を反映した論理的なシステムを開発することに集中しました。ボールの物理的特性をさらに洗練させ、ゴールキーパーがシュートをセーブする方法のコードを書き直し、ランダムな要素を文脈に基づいた確率曲線に置き換えることにも注力しました」

この結果、「FIFA07」 は「FIFA 06」 より 100 万本以上も多く売れ、熱烈なレビューも獲得しました。パターソン氏によるコンテンツ重視の開発について、ゲーム関連サイトの「Gamespot」は「最初はどこが変わったのか正確に把握するのは難しいかもしれない。しかしFIFA 07は前作と似て非なるサッカーゲームに仕上がっている」と高く評しています。

パターソン氏はPS3に移行しても、この勢いと高い評価を失速させないことが重要だと感じたといいます。「ウイニングイレブンのことは、『FIFA08』が出た時期あたりからあまり意識しなくなりました。自分がやりたいことが本当にたくさんあったからです。PS2のために開発したシュートのシステムをどうすればPS3でより良いものにできるか、何度も議論を戦わせました。シュート一つとっても、デザイナーたちは、1回のパスではなく、ボール回しを15回くらいしてからシュートできるスペースができるようにすべきだとよくいっていました」

一方、ウイニングイレブンは厳しい時期を過ごすことになります。マレット氏は「EAは昔のウイニングイレブンの良いところを全てまねしてFIFAに実装した」といいます。「これ以降ウイニングイレブンは間違った方向にフォーカスし始めました。選手を実在のプレイヤーとそっくりにすることにこだわったので、モーションキャプチャーが目立つようになりました。これでは負け犬の遠吠えです。ゲームエンジンがスムーズに動かなくなり、リアルさを追求したばかりに操作性が犠牲になってしまったのです」

実際、「ウイニングイレブン 2009」 の販売数は「FIFA 09」 の870万本に遥かおよばず、690万本でした。そして6年後にはこの差がさらに大きな溝にまで成長することになります。「FIFA15」の1800万本に対し、「ウイニングイレブン 2015」の売り上げは170万本にとどまったのです。

「FIFA 09」のダウンロード版として7.99ポンド(約1100円)でリリースされた「Ultimate Team」では、デジタルカードアルバムを完成することで、エリート選手ばかりのドリームチームを結成することができます。「普段は考えたこともないような選手とつながりを築いていく過程は、信じられないほどエキサイティングでした」と12年来のFIFAファンで現在、FIFA Ultimate Teamのクリエイティブディレクターを務めるアダム・シャイフ氏はいいます。このゲームは驚くべき売り上げを記録しましたが、ゲーム内の課金制度に賭博的要素があると非難されることになりました。

シャイフ氏はこの批判を真摯に受け止めています。「私たちはUltimate Teamを最高に面白いゲームにするため全力を尽くしました。これほど多くの皆さんがプレイしてくれていることからも、EAのゲームが高く評価されていることは明らかです。そのため“課金重視”など、EAの真意を誤解した批判的なフィードバックを聞くとがっかりするのも事実です。ゲーム作りの原動力はファンの皆さんの笑顔です。自分たちのゲームをさらに良いものにしていくためにも、建設的な批判にはきちんと耳を傾けています」

Ultimate Teamについて議論する時に忘れられがちなのが、最近の重要な変化のトレンドです。例えば「FIFA16」には各国の女子代表チームが初登場しています。スポーツ番組「Sky Sports」のキャスターでカーディフ・シティ・レディースの元ストライカー、ミシェル・オーウェン氏も「随分長いこと待たされましたが、女子サッカーの試合が忠実に再現されています」と評しています。さらに1年後に出たストーリーモードの「The Journey」では、トミワ・エデュン氏が好演する架空の選手、アレックス・ハンターのサッカー人生を追体験することができるようになりました。

しかし驚くべきことに、ここにきてコナミはEAが優勢を誇ってきたライセンスの獲得競争で対抗する手に出ました。バルセロナのカンプノウスタジアム、ブラジルとロシアのプロサッカーリーグ、そして最も話題になったものでは、イタリアの強豪サッカーチーム、ユベントスとの独占契約を獲得したのです。この結果、「FIFA20」はクリスティアーノ・ロナウドが所属するチームの名前を「ピエモンテ・カルチョ」という架空の名前に変更しなければならなくなりました。

2000年代初期のウイニングイレブンでは、実在する選手の名前やユニフォームがゲーム内に無くても、ファンサイトから“オプションファイル”をダウンロードして自分で簡単に編集できたので、この大胆な戦術転換は、コナミの風土にそぐわないように見えました。結果、「FIFA 19」の1220万本に対し「ウイニングイレブン 2019」の世界販売本数はわずか55万本となり、コナミのライセンス戦略が失敗だったことが明らかになりました。コナミが今後、PS5とXboxシリーズXでどのような手に出るのかは予想すらできません。

ウイニングイレブンの大ファンだったことが認められて、2016年〜2019年までコナミのソーシャルメディアマネージャーを務めたアシム・タンヴィール氏は、ウイニングイレブンの未来は明るいといいます。「新しいゲームエンジンの実装が成功の鍵になるでしょう。今はFoxエンジンと古いコードが組み合わさって、過去に良かったところが足を引っ張っている状態です。ライセンスに大金をかけるのは止めて、ウイニングイレブンの人気を支えてきた3つの柱、『レスポンスの良いゲームプレイ』『リアルなAI』『魅力的なモード』という原点に回帰すべきです。FIFAをあまり好感していないプレイヤーに、ウイニングイレブンがチープな脇役ではなく、FIFAにとって代わる主役級のサッカーゲームであるというメッセージをファンに届けて欲しいと思います」

次世代のFIFAには、Ultimate TeamとeSportsという優先すべき課題がありますが、パターソン氏は、根本にある基礎技術を援用できるといいます。「PS3になってリアルさとゲームプレイの可能性が大きく広がったように、一歩先を行くアニメーションを見てみたいですね。アニメーションは没入感を高めてくれますし、“ゴールした時の感動”を呼び起こす重要な要素です」

歴史を紐解くと分かるように、ウイニングイレブンは劣勢と思われる試合に勇敢に挑み、複雑かつ華麗なサッカーでライバルを打ち負かしてきたゲームとしてファンに愛されてきたのです。しかし、Ultimate Teamで批判をされても、次世代ゲーム機への対応となるとFIFAに分があるようです。マクミラン氏は、これまでFIFAがウイニングイレブンに勝利してきたのは自然な流れだったとといいます。「コナミも良い製品を出しましたが、残念ながらそれはFIFAではなかった。インターネットの検索エンジンはいろいろありますが、グーグルはたった一つしかありません。FIFAが生き残ったのは、決して燃え尽きることがない情熱を持ち続けてきたからだと思います」

この記事はThe Guardianのベン・ウィルソンが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされています。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまで

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