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【eスポーツ】炭鉱で栄えたポーランドの町がeスポーツ誘致で奇跡の復活

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Intel

上:Intel Extreme Mastersは、ポーランドのカトヴィツェを本拠地とするいくつかの大きなeスポーツイベントの1つです。


かねてから“鉱山の街”として知られてきたポーランドの街、カトヴィツェ。18世紀に移り住んできた最初の移住者は、石炭が豊富に埋もれているという噂を聞いて、この南部ポーランドの低地にやってきた職人たちです。実際、地平線に点在するスターリン様式の巨大な鉱山など当時を偲ばせる風景は数多くあります。また市民が誇る街の中心街には、かつての鉱物投棄場跡地に建てられた屋内施設「スポデクアリーナ」があります。離陸を待つ空飛ぶ円盤のように見えるこの施設では、1972年の竣工以来、コンサート、見本市、ホッケーの試合などが開催されてきました。

しかし時代は進み、そのアリーナも今日では世界で最も権威のあるeスポーツ大会のひとつ「インテル・エクストリーム・マスターズ(IEM)」の開催地としてその名を世界に知られるようになっています。毎年、北米・南米・アジア・アフリカ・ヨーロッパの各地からeスポーツのプロチームがこの街を訪れ、ゲーマーとしての栄誉と100万ドルの賞金を賭けて腕を競い合っています。

eスポーツに興味がなければ、人口29万人ほどのポーランドの街まで、わざわざ飛行機を乗り継いでやってくる人間はそういないでしょう(そう、カトヴィツェに直行する国際便は多くないのです)。しかし、このどんよりした街が、毎年2月にはeスポーツの首都へと一気にその姿を変えます。2019年は、17万4000人の来場者を記録。「Esports Observer」のレポートによれば、IEMがカトヴィツェの街にもたらした宣伝効果は2450万ドル(26億円超)にもおよぶとの試算もあります。まさにこの小さな鉱山の街は、新たな基幹産業を模索した結果、eスポーツに未来を見出した成功例だといえるでしょう。

「ノルウェーの街、スタヴァンゲルを訪れた際、地元の若者グループにどこから来たのかと尋ねられたので『カトヴィツェ』と答えました。するとIEMをきっかけに会話が盛り上がりました。こういうことがあると、私たちにとってもさらなる励みになります」とカトヴィツェ現市長のマーチン・クルッパ氏は話します。

 

新たなるeスポーツのメッカ

クルッパ氏によれば、IEM誘致は、もともとカトヴィツェの元市議会議員、ミハウ・イェルゼイェック氏のアイデアだったといいます。市を挙げてeスポーツのコンテスト誘致に投資するという考えを持ち掛けたのは今から7年前。「膨大な資金を使って、何千人ものゲーマーをスポデクアリーナに迎え入れるなど、たいていの市長なら怖気付いて、手を引いてしまうことでしょう」と振り返るクルッパ市長。しかし、彼の前任者はこのアイデアに賛成の意を表しました。そして2014年、カトヴィツェ市議会は2019年までIEMを開催する契約をインテルと結んだのです。クルッパ市長は、このパートナーシップは今後も長く継続していくと考えています。事実、IEMの成功こそが自身が掲げる政策の最重要部分であると力説します。「このプロジェクトを継続し、さらに街として進化できることを光栄に思っています」。

上:IEMカトヴィツェのカウンターストライク用インテルエクストリームマスターズカップ。

実際、IEMカトヴィツェの認知度は年々高まっています。スポデクアリーナの施設内では、メインイベントとなる「カウンター・ストライク」以外にも、本格的なトレードショーや様々な関連イベントが行われ、その様子は小さなコミコンさながらです。クルッパ市長によると、カトヴィツェ市民の多くは(eスポーツイベントのターゲット層とは年齢的に大きな隔たりがありながらも)、世界中のゲーマーたちを迎え入れようとする市の姿勢に対し、徐々に理解を示してきているといいます。

「ホテルやマンション賃貸、レストラン、タクシーなど、IEMは地元にとって直接の収入増加につながります。また同時にカンファレンス会場など周辺施設も充実してきています」とクルッパ市長。「このイベントが大成功を収めているおかげで、開催継続や予算増額などの議題についても、住民や議会の反対派からとやかく言われることもありません」。

 

カトヴィツェに学ぶ

このカトヴィツェの成功事例に習って、eスポーツの大会を誘致しようとする都市の数は増加の傾向にあります。上海の南に位置する港町、杭州では、地元自治体によって14種類にもおよぶeスポーツ関連施設の建設がすでに承認されていて、その総費用は10億ドルを超えるといわれています。また、本場アメリカの代表的な事例としては、NFLのダラス・カウボーイズが本拠を置く、テキサス州ダラスの近郊都市フリスコが挙げられます。ダラス大都市圏は、伝統的にゲームビジネス発祥の地で「id Software」「Gearbox」だけでなく「Infinite」「CompLexity」「OpTic」などのプロゲーム企業も本社を置いています。ジェリージョーンズが所有するCompLexityは、最近、カウボーイズの91エーカー(36万平方メートル)のキャンパス内に11,000平方フィート(1,000平方メートル)の新しい企業基盤を開設しました。CompLexityの最高収益責任者、ダニエル・ハーツ氏は、フリスコ市をeスポーツ界における世界的なメッカにしたいという考えから、市政府および同市の商工会議所などとも緊密な関係を築いていると言います。

「ここ(テキサス)では誰もが、ビデオゲーム業界のトレンドや、その経済効果の大きさを熟知しています」とハーツ氏。「ビデオゲームの技術を教育に活かすなら『Frisco ISD』と話をすればいいし、ビデオゲームだけではなく、そのサウンドトラックやゲーム内プロダクトの話であればノース・テキサス大学に持ちかければいい。ビジネスという観点から見ると、そこには膨大な投資がある。これまで商工会議所内の様々なグループとも対話を続けてきましたが、eスポーツへの関心はとても高い。デンバーやニューヨークよりも高い。『5〜10年後、自分たちの街はどう進化しているのか』という先見性がその根底にあるのです。そして、その中核を担っているのがeスポーツであり、そのためのインフラを構築する能力が我々にはあるのです」。

ハーツ氏の主張は、eスポーツ誘致を検討している各都市が期待するところでもあリます。カトヴィツェや杭州と同じように、フリスコも大都市ではありません。外部からの投資を期待できるような高度に多様化した経済的地盤もありません。しかし、だからこそeスポーツのような大きな賭けに出ることができるともいえるのです。もちろんプロゲームの世界は不安定なビジネスです。しかし大きく当たれば、いち早く投資をした自治体は莫大な利益を得る可能性があるのも事実で、実際、その徴候は現れ始めています。昨年インテルは、シカゴと上海の両都市でIEMトーナメントを開催しましたが、世界選手権を開催する権利はいまだにカトヴィツェが握っています。どんな世界にも必ず第一人者が存在します。そしてカトヴィツェが証明しているように、その第一人者となる都市は世界中のどこであっても良い、ということなのです。

「カトヴィツェは、都市の再生、娯楽施設の建設、そして文化やビジネス、観光の開発に注力してきた結果、伝統的な工業都市から近代を代表する大都市へと変貌を遂げたユニークな街です」と話すクルッパ市長。「イギリス軍隊がかつて使った『挑む者が勝つ』というキャッチフレーズがあります。この言葉は、数年前eスポーツに挑んだ私たちを言い当てた表現と自認しています。まさに英断でした。だからこそ、こうして今の私たちがあるのです」。

 

この記事は、VentureBeatサイトのLuke Winkieによって書かれたもので、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じて法的な許可のもとに掲載されています。使用許可に関する質問については、legal@newscred.comまでお問い合わせください。