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特別連載「YEBISU BREWERY TOKYO開業への道」第2回

 2024年4月3日(水)、いよいよヱビスビール発祥の地である恵比寿に「YEBISU BREWERY TOKYO」が開業します。はたしてこれはどんな施設なのか。また、ヱビスビールの現在の取り組みについて、同施設でChief Experience Brewer として醸造責任者を担う有友亮太に話を聞きました。

130年の歴史を経て起こる回帰と革新

 サッポロビールは、2024年1月10日に、恵比寿ガーデンプレイスに建設中のYEBISU BREWERY TOKYOの開業が4月3日に決定したと発表しました。

 ここはヱビスビール発祥の地。そもそも山手線の駅名にもなっている「恵比寿」という地名はこの地にヱビスビールの工場があったことから生まれたもの。さまざまな商業施設が集まりオフィスビルもそびえ立つ恵比寿ガーデンプレイスは、ビール工場の移転跡地に作られているのです。

 今を遡ること130年以上も前となる1890年、サッポロビールの前身である日本麦酒醸造会社は、今日のヱビスビールのルーツである「恵比寿ビール」の製造・販売を恵比寿の地で開始。以降、1988年までの約100年間、この地でビールはつくり続けられました。そしておよそ35年の時を経た今年、2024年4月に恵比寿でふたたびビールづくりがはじまるのです。

※第2次世界大戦の影響で、1943年からしばらくブランドラベルが廃止されていましたが、ヱビスビールは1971年に復活しています。

 そして昨年はこのYEBISU BREWERY TOKYO開業のお知らせと並んでもうひとつ、ヱビスは大きなトピックがありました。それが新たなビール体験ができるヱビスビールの新ライン「CREATIVE BREW」の創設です。第一弾として2月に「ヱビス ニューオリジン」、10月には「ヱビス オランジェ」を発売。

2023年より新たに幕を開けた新ラインCREATIVE BREW第一弾は、1890年のヱビスビール発売当時に使用したと思われるドイツ産のファインアロマホップ「テトナンガー」を使用した「ヱビス ニューオリジン」(終売)。ヱビスビールブランドの起源となるビールを現代の最新技術と感性で甦らせました。

 一世紀以上に渡って受け継がれてきた知見・技術をもとに生み出されたこの新ラインによって、ヱビスビールの歴史はまた新たな一ページが開かれたと言っても過言ではありません。

 このYEBISU BREWERY TOKYOでの醸造をはじめ、CREATIVE BREWを含むヱビスブランドすべての中味開発を任されているのが、2022年に入社10年目の36歳という若さで同施設でChief Experience Brewer として醸造責任者を担う有友亮太です。

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YEBISU BREWERY TOKYOの完成イメージ図。恵比寿という土地で歴史を積み重ねたヱビスの過去、現在、未来のすべてを体験できる圧倒的なリアル体験施設になる予定です。

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2023年より新たに幕を開けた新ラインCREATIVE BREW第一弾は、1890年のヱビスビール発売当時に使用したと思われるドイツ産のファインアロマホップ「テトナンガー」を使用した「ヱビス ニューオリジン」(終売)。ヱビスビールブランドの起源となるビールを現代の最新技術と感性で甦らせました。

 

ビールづくりを学ぶためにドイツ留学も経験

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 大学時代に乳酸菌の研究をしていたという有友は、2012年にサッポロビールに入社。新人時代の研修を経て、北海道工場で味づくりをはじめとした醸造工程を担当しました。当時担当していたのは、ヱビスビールや黒ラベル、サッポロクラシックなど、北海道工場で作っているビールはすべて。それらを実際に醸造していたといいます。 

 こうしてビール醸造に関する生産管理や味づくりを経験し、もともと興味のあった醸造のおもしろさに目覚めた有友は、その後、酵母に関する研究のため酒類技術研究所(現価値創造フロンティア研究所)へと異動。さらにビールづくりの本場、ドイツのベルリンにある教育研究機関(VLB Berlin)へと留学し、醸造、設備、製造用水、パッケージングなど基礎的な知識を習得しました。

 留学から戻ってからは中味開発や製造も任されるようになるなど、この10年で仕事の幅は拡大。同時にマーケティング部にも所属することとなり、今ではヱビスブランドの中味開発とともに、ヱビスというブランド全体のマーケティングに関わるいろいろな仕事に携わっています。

「仕事の内容としては広がっていますけど、ビールの醸造を担当するという中心となる業務だけを見るなら工場に配属されたときと大きく変わってはいないと思います」(有友)

 工場にいたときは中味が決まっているものをいかにおいしくつくるかが大事。マーケティング部署に移ってからは、そのひとつ前の段階、それぞれのブランドが持つコンセプトに対してどんな商品をつくるかが重要になったと有友は語ります。

 特にヱビスブランドを担当するようになってからは、ブランドの戦略を考えながら新たな商品をつくるところに難しさとおもしろさを感じているそうです。そうして生まれたのが、新ラインのCREATIVE BREW。2月20日にはその最新作となる「ヱビス シトラスブラン」が発売になります。

「春や夏にふさわしいさわやかな味をつくりたいと思っていたのですが、ホップを工夫するだけでは物足りなくて。そこで、副原料としてエジプト産のレモングラスというハーブを採用し、これと相性のいいシトラという柑橘系の香りを持つホップと小麦麦芽を一部使ってホワイトビールに仕上げています」(有友)

 お互いが引き立てあうシトラとレモングラスのマリアージュを楽しんで欲しいと語る有友の口調からは、新商品のシトラスブランへの確かな手応えと自信が感じられました。

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2月20日に期間限定で発売されるCREATIVE BREWの最新作ヱビス シトラスブラン。レモングラスと柑橘系が香る新たな一品です。

 

YEBISU BREWERY TOKYO内には「有友の部屋」も

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 さて、今年4月に開業予定のYEBISU BREWERY TOKYOとはいったいどんな施設であるのかについても改めて有友に聞いてみました。YEBISU BREWERY TOKYOは大きくわけて、3つのエリアから構成されている、とのこと。

 まずは「ミュージアムエリア」。これはヱビスビール記念館の機能を引き継いだもので、ヱビスビールが重ねてきた100年以上に渡る歴史を知ることができる、まさに博物館としての資料などが展示されているそうです。

 次は施設全体の名前にもなっている「ブルワリーエリア」。

「ミュージアムがヱビスビールの過去を知るためのエリアであったとするなら、ここはヱビスビールの現在を知ることができるエリア。ドイツ製の醸造設備を採用し、YEBISU BREWERY TOKYOでしか飲めない特別なヱビスをリアルタイムに生み出していきます」(有友)。

 そして3つめのエリアが「タップルームエリア」。ここは来場者が実際にビールを楽しむことができるエリアだそうです。通年で提供される「ヱビス∞」と「ヱビス∞ブラック」を中心に、そのときどきの限定ビールなど、常時6種類くらいのビールが飲めるようになるとのこと。

「ひとりでもグループでも楽しめるよう、テーブルや席の配置もいろいろと工夫しているほか、ミーティングや歓談に使える個室も作っています。このタップルームエリアはヱビスブランド、さらにはビールの未来を感じていただける場所にしたいですね」(有友)

 実はブルワリーエリアには、「ブリュワーズルーム」と名付けられた有友の個室も作られるとのこと。

「実際にはじめてみないと見えてこない部分も大きいですし、僕が常にいることは難しいかもしれませんが、お客様と僕ら作り手が直接にコミュニケーションをとれる場にしたいんです。ビールの魅力を伝えるだけでなく、お客様との会話から得た着想を今後の製品開発に活かしたりできるようにしたいな、と思っています」(有友)

 ブリュワーズルームにはかつての恵比寿工場にあった資産などのほか、有友の私物も置かれ、有友のプライベートルームのようなテイストも加えられるとのこと。「どんな人がヱビスを作っているかを感じていただけるようなものにしたい」(有友)のだそうです。

 今まで数多くの人たちが醸造に関わり、ヱビスビールの長い歴史は紡がれてきました。その作り手の顔が見える施設にしたいとの想いが有友にはあるのです。

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ブリュワーズルームのイメージ図。ご来場いただくタイミングによってはここで新たなヱビスの構想を練る有友の姿を見たり、実際に会話を交わせることもあるかもしれません。全体的なイメージはとある映画をモチーフにしているとか。また、有友の趣味である陶芸作品や植物なども置きたいとのこと。

 

YEBISU BREWERY TOKYOでしか飲めない「ヱビス∞」とは?

 ここをお読みのビール好きの皆さまにとってはYEBISU BREWERY TOKYOという施設そのものもさることながら、タップルームエリアで提供されるオリジナルビールヱビス∞とヱビス∞ブラックが気になっていることかと思います。

 実はヱビス∞のプロトタイプは昨年8月に一般のお客様にお披露目がされているんです。恵比寿ガーデンプレイスのセンター広場で開催された「YEBISU BEER HOLIDAY」において、「シークレットタップ」として提供されていたビールこそ、ヱビス∞のプロトタイプだったんです。

 有友によると、この名前はビールに秘められた無限大の可能性を表現したものだとのこと。ホップにはCREATIVE BREW第一弾であるヱビス ニューオリジンと同じく、1890年のヱビスビール発売当時に使用していたと思われるドイツ産のファインアロマホップ「テトナンガー」を採用※①。さらに驚くべきことに、1988年まで操業していたかつての恵比寿工場で使われていた酵母を使っているのだそうです。※①一部使用

「弊社には今までのビールづくりで使用してきた酵母を保管している酵母バンクがあるんです。そこに保管されている約1000種類ほどの酵母のなかから恵比寿工場で使われていた酵母を探し、さらにいくつか選抜して使っています」(有友)

 恵比寿に工場があった当時の酵母でビールをつくることを思いついたのは、2021年のこと。それ以来、約2年間に渡って試行錯誤を続けて来たのだそうです。

「ヱビスビールの長い歴史における現在、過去、未来を考えたときに、それぞれの要素を組み合わせて商品を作っていけたらいいな、と考え、その答えが恵比寿工場で使っていた酵母の採用でした。過去の酵母でつくった新たなビールを未来の時間軸に持って行けたらすごくおもしろいんじゃないかと思って」(有友)

 しかし、思いつきはしたものの、40~50年も前の酵母を使うというだけでかなりの難しさが伴ったと言います。酵母というものは、今までの醸造家たちが選抜を繰り返し、よりよいものへと洗煉を重ねた努力の結晶でもあります。それを約半世紀近くも遡り、今のお客様の好みにマッチしたビールをつくろうというのですから、険しい道のりであったことは想像に難くありません。

 実はその酵母を使っての醸造試験で最終的なOKが出たのは、2023年12月。このインタビューを行った当日でした。

「もしこの結果がダメだったら別の切り口を考えねばならず、YEBISU BREWERY TOKYOの開業に間に合わない可能性すらありました。でも、YEBISU BEER HOLIDAYでお出ししたプロトタイプよりかなりいいものができました」(有友)

 1890年当時に使われていた品種のホップと、かつての恵比寿工場で使われていた酵母のマリアージュ。「ヱビス∞」、いったいどんなビールに仕上がっていのでしょうか?

 

 最後にここをお読みの皆さまへ向けた有友からのメッセージをご紹介します。

「ヱビスビールはご愛飲してくださったお客様がいたからこそ、100年以上に渡る歴史を紡ぐことができました。私たちはこれからもお客様にきちんと向き合い、ビールでどんな幸せを提供できるかという点を大事にしながら、ブランドを発展させていきたいと思っています。

 もうすぐ開業になるYEBISU BREWERY TOKYOではお客様の声をダイレクトにうかがうことができる施設です。僕にとっては今まで経験したことのない仕事もいろいろと出てくるとは思うのですが、そこで得た皆さんからのご意見をこれからのビールづくりの糧として、ヱビスというブランドをもっと伸ばすべく活動していきます。

 できるだけ多くのかたにYEBISU BREWERY TOKYOへとおこしいただき、また、ヱビスというブランドを応援していただけることを願っています」(有友)

 いよいよ開業が迫ってきたYEBISU BREWERY TOKYO。次回は2月19日に開催される当施設のメディア向けイベントのレポートをお届けする予定です。お楽しみに。

(写真・文:稲垣宗彦)

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