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黒人醸造家たちがアメリカのクラフトビールシーンに変革をもたらす
これまでにない味覚と世界観を武器に、アメリカの首都ワシントンDCでクラフトビールの新時代を切り開く黒人醸造家たち
Images Courtesy of Black Brew Movement
クラフトビールブームの立ち上がりこそ他の都市に遅れをとったとはいえ、黒人醸造家を巻き込んだダイバーシティの広がりという観点で見れば、アメリカの首都ワシントンは全米を牽引する重要な存在になりつつあります。
ワシントンにはじめてモダンなブルワリー「DC ブリュー」がオープンしたのは2011年のことでした。以来その数は増加する一方で、現在では15のブルワリーが存在し、そのうちの20%を占める3つが黒人オーナーによるものです。
ワシントンに暮らすアフリカ系アメリカ人とクラフトビール業界を隔てる溝を埋めるためのさまざまな草の根活動を行う「ブラック・ブリュー・ムーブメント」。この団体と連携して2018年に創業した最古参の「サンコファ」をはじめ「ソウルメガ」「アーバンガーデン」といった黒人経営の3ブルワリーは、この街のビール文化を一変させる可能性を持つ新しいフレーバーを打ち出し、白人が大勢を占めるクラフトビール業界に新たな変革を起こす起爆剤となっています。
Courtesy of Eamoni Collier
まずは「アーバンガーデン」。ワシントン出身のイモニ・テイト=コリアが2021年に創業したブルワリーで、主力商品はカモミールとハチミツを使ったゴールデンエールの「カモミール」です。ハチミツの豊かな風味と穏やかな酸味のバランス、そして滑らかなのどごしは、ここ10年以上アメリカのクラフトビールシーンを席巻してきたホップを強烈に味わうIPAとは一線を画しています。
「ハーブやスパイス、フルーツを使ったビールを作るのが好みなんです」と語るテイト=コリア。「ホップよりもフレーバーに重点を置いています。ハーブティーを飲んでいるような、ビールらしくないビールを目指しています」
テイト=コリアは、黒人系の消費者がもっと気軽にクラフトビールを楽しめるようにこの業界に変革を起こすのが夢だといいます。その思いは、2018年に誕生した「ブラック・ブリュー・ムーブメント」の発起人も同様で、クラフトビールの魅力をより多くの黒人消費者に伝えるためのキャンペーンの一環として、コラボイベントの開催やコラボビールの開発に力を入れています。
Courtesy of Black Brew Movement
「私たちが開催するイベントでは、さまざまな体験をお届けしたいと思っています」と、発起人の1人で社会学者でもあるコートニー・ロミニーはいいます。「例えば、私たちのターゲットとなる客層が好む音楽を会場でかけるのもその一つです。世界観や体験を提供する。そして来場者が気持ちよく時間を過ごせる空間を作ることに注力しています。イベントをやるたびにお客さんについてより深く知ることができるので、着々と前進している手応えを感じています。イベントやタップルームに来てくれる黒人系のお客さんも増えてきました」
ロサンゼルスの「クラウンズ&ホップス」からアトランタの「ヒッピンホップス」まで、全米各地で黒人系ブルワリーの人気が広がりを見せるなか、1957年にアメリカではじめて黒人の人口が過半数を超えた街として知られるワシントンがこのムーブメントを牽引する存在となったのは当然のことなのかもしれません。さらに、メリーランド州チャールズ郡の「パタクセント・ブリューイング・カンパニー」など、ワシントン郊外にもたくさんの黒人系ブルワリーがあります。
パタクセントとワシントンのブルワリーの違いをあえてあげるなら、それは実店舗の有無でしょう。後者には、20世紀にラガービールで財を成したクリスチャン・ヒューリッヒの邸宅を改造したヒューリッヒハウス美術館のビアガーデンや、地下鉄駅に隣接する地下鉄車両を改造したバー「メトロバー」などがあります。また「ザ・クラフト・ビア・セラー」などでは黒人所有ブルワリーのクラフトビールが常時販売されています
このままいけば、ワシントンに黒人経営のブルワリーが手がけるタップルームがお目見えする日もそう遠くはないでしょう。テイト=コリエもタップルーム開設が大きな目標の一つであるといいます。また去る8月27日には、前述の「ソウルメガ」が創業3周年記念のフェスティバルとして「メガフェスト」を巨大商業施設「ザ・パークス@ウォルター・リード」で開催しました。このフェスでは「ソウルメガ」はもちろん「サンコファ」「アーバンガーデン」「パタクセント」「ブラックバイキング」「リキッドイントルゥージョン」「ジョイハウンド」など、ワシントンとその周辺エリアに拠点を置く黒人系醸造所のクラフトビールが多くの来場者に提供されました。
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