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大統領の後はウイスキー蒸留所を経営。ジョージ・ワシントンの知られざる素顔

様々な伝説を残したアメリカ初代大統領のジョージ・ワシントン。有名な桜の木の逸話は、伝記作家のでっちあげだといわれています。また1ドル銀貨をポトマック川の対岸まで投げることができたという話もありますが、当時1ドル銀貨はまだ作られていないはずです。木製の入れ歯をしていたという伝説も事実ではありません。ワシントンの入れ歯は、カバの牙、金属、人の歯で作られていました。

しかし、18世紀アメリカ最大のウイスキー蒸留所を経営していたという話は本当です。「生産量ではアメリカでトップ3に入っていたはず」とワシントン経営の蒸留所があるマウントバーノンで歴史部門のディレクターを務め、蒸留酒の製造も手がけるスティーブ・ベイショア氏はいいます。「1799年には11万ガロン(約4万リットル)近いウイスキーを製造していました」

1797年3月に大統領を退任したワシントンは、公邸(当時、ホワイトハウスはまだ建設されていません)を離れ、引退後はのんびりしたいと少年期を過ごしたバージニア州マウントバーノンに戻りました。

しかし、ワシントン所有のプランテーションを管理していたスコットランド人のジェームズ・アンダーソン氏は、別の計画を描いていました。清麗な水と様々な種類の穀物、中でもウイスキーの最も重要な主原料であるライ麦が育ち、最先端の製粉所まで揃っているマウントバーノンはウイスキーの製造に理想的であると考えたアンダーソン氏は、裕福な元大統領である主人のワシントンに蒸留所を建設するよう説得を試みました。

“アメリカ建国の父”として長年活躍したワシントンはこの時65歳。悠々自適な余生を送ってもいい年齢でした。ウイスキーの醸造所を作ると、ガラの悪い連中が集まってくるかもしれないという心配もあり、当初は消極的でした。しかし、切れ者のワシントンがビジネスチャンスを見逃すはずはありません。また、ワシントン自身も時折お酒を嗜むこともあったといいます(ウイスキーよりマデイラワインやポータービールの方が好みだったそうですが)。こうして1797年後半には、マウントバーノンでウイスキー製造を始める許可をアンダーソン氏に与えました。

バージニア州マウントバーノンにあるジョージ・ワシントン蒸留所
by John Greim / Getty Images

ワシントンのウイスキーは、発売されるや否や大ヒット商品となりました。マウントバーノンの記録によると、1799年に製造された11万ガロン強のウイスキーは7500ドル(現在の14万4000ドル=1600万円相当)の利益を上げたということです。今日流通しているウイスキーの大部分とは違い、ワシントンのウイスキーはできるだけ早く出荷するために熟成されていませんでした。

「いち早く出荷するため、ウイスキーをスチル(蒸留器)から直接樽に詰めていました。当時は木樽熟成していてない“ホワイトウイスキー”が当たり前だったからです」とベイショア氏は語ります。「彼らはウイスキーをいち早く店舗へ、市場へ、そして飲み屋へ届けたかったのです」。また興味深いのは、ワシントンが作ったウイスキーはエリートや富裕層のためのものではなかったという点です。18世紀の平均的なアメリカ人が消費するために作られ、相応の価格で販売されたといいます。ベイショア氏によると「それは普通の人のための普通のウイスキー」だったということです。

それから2世紀以上が経過し、マウントバーノンの蒸留所ではウイスキーの生産が再開されました。長期に渡る改修工事を終え、2009年には昔ながらの蒸留所が再び稼働し始めたのです。今では観光のオフシーズンに当たる3月、11月に毎年仕込みが行われています。ベイショア氏率いるチームは、毎年およそ1200ガロン(ボトル4000~5000本相当)のウイスキーを生産します。安全上の理由や現代の法規制により多少の変更はありますが、発酵・蒸留はほとんど全て18世紀と同じ方法で行っているということです。

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もちろんワシントンのウイスキーは販売されていますが、ウイスキー愛好家の皆さんはマウントバーノンまで足を運ばなければなりません。プランテーションのギフトショップと蒸留所でしか販売されていないからです。また、全ての売上はマウントバーノンにおける教育プログラムと蒸留所の保存のために使われています。

気になるテイストはというと、筆者は鋭い味覚を持ち合わせていませんが、ジャック・ダニエルなどにはない独特のスパイシーさを感じました。これはベイショア氏も認めるところです。さらにベイショア氏によると、18世紀スタイルのウイスキーによくあるコーンと穀物の後味も感じられるということです。

アメリカ初代大統領が作ったウイスキーで、プレジデントデー(リンカーンとワシントンの誕生日を記念した祝日)に祝杯をあげたいという方は、心の準備をしておいたほうが良いとベイショア氏はいいます。「人によっては、熟成していないウイスキーを強すぎると感じることもありますからね」

この記事はFood & Wineのマット・ブリッツが執筆し、 Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされています。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまで。

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