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”もろこしビール”でクラフトビールに新たな旋風を巻き起こす

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2019年に行われたスーパーボウル中継の際に放映されたTVコマーシャルで、バドワイザーがビールの原材料としてコーンシロップを使用している競合他社を攻撃した「コーンゲート」論争からも明らかなように、ビールにトウモロコシを使うと槍玉にあげられてしまうことがあるようです。しかし、コロラド州デンバーにある醸造所では、アメリカのクラフトビールファンにひと味違うスタイルのビールを広めようと、不名誉な烙印を押されたトウモロコシを積極的に活用しているのです。

ドス・ルセス・ブリュワリーでは、モルト化したブルーコーンを使って、クリストファー・コロンブスが1492年にアメリカ大陸に到達する以前まで、インカ・アステカ帝国の人々が作っていたビールと同様のものを製造しています。デンバーのサウス・ブロードウェイ地区にあるこのブリュワリーでは、伝統的なラテンアメリカの酒であるチチャプルケを独自に解釈した新しい飲み物を生み出しています

「バドワイザーが、コーンシロップを使っている(ライバルブランドの)クアーズ・ライトを馬鹿にしたコマーシャルをご覧になったことはありますか? しかし現実にはトウモロコシは全くもって悪いものではありません」とドス・ルセス・ブリュワリーの共同創始者、サム・アルカイネ氏は語る。「種類が豊富なトウモロコシから、豊かな伝統と深みのある味わいが作られてきました。安っぽい冗談では済まされない重要な作物なのです。トウモロコシを使うと、とても濃厚な味のドリンクを作ることができるのです」。

バドワイザーの見解とは異なり、この醸造所ではトウモロコシがビール作りの主原料で、ともすると見逃されがちなメキシコやペルーといった国々で作られるビールの伝統に光を当てようとしています。もちろん、美味しいビールを作ることが一番の目的ですが、これまでになく多様化した今日のアメリカにおいて多様性の素晴らしさを訴えることも大切にしています。

「西ヨーロッパから来た植民者たちは、ビールのあるべき姿を一方的に決めつけていますが、それがビールの全てではありません」と同ブリュワリーの共同創始者でオーナーのジャッド・ベルストック氏は言います。「南北アメリカ大陸には、ヨーロッパから来た人々がもたらしたものよりもずっと沢山の種類のビールが存在するのです」。

ビールは一般的に大麦から作られます。この伝統は、初期の文明が穀物を栽培しパンを作り始めた時代にまで遡ります。パンを水に浸すとイーストの力で発酵が始まることから、パンが作られているところには必ずビールがありました。

今日でも米やトウモロコシが副原料として使われることもありますが、トウモロコシや糖類の添加物に対する決して好意的でないイメージも手伝って、ビール作りは大麦に限ると言う意見が大半を占める傾向にあります。

しかしベルストック氏とアルケイン氏は、このトウモロコシの汚名返上に果敢にチャレンジしています。両名ともビールの世界で輝かしい経歴を持っていて、ベルストック氏はアメリカのビール製造会社であるミラークアーズとボルダービールで働き、また現在コーネル大学で助教授として乳製品の発酵について研究しているアルケイン氏も同じくミラークアーズで勤務した経験があります。

実際、アルケイン氏はミラークアーズで研究開発に携わり、トウモロコシを含む様々な原材料を使ってビールの試作を行ってきました。エルサルバドル出身の父親とキューバ人の母親を持つアルケイン氏は、ラテンアメリカの伝統的な飲料についても多少の知識を持っていると言います。

自宅では、インカ帝国の人々のお気に入りでアンデス地方では今でも人気がある飲み物、チチャをモルト化したトウモロコシから作る実験をしているというアルケイン氏。できたチチャは、友人たちに試飲してもらっています。ベルストック氏もその友人の一人ですが、彼の父親は1960年代に平和部隊に参加してペルーで過ごした経験があり、ベルストック氏は子どもの頃からチチャがいかに素晴らしいか聞いて育ったと言います。2018年7月にドス・ルセスをオープンする前には、二人で古代メキシコのアステカ帝国で飲まれていたプルケの醸造にも挑戦したそうです。

ドス・ルセスでは大麦の代わりにトウモロコシを使用するため、醸造と蒸留の双方が可能な特注のハイブリッド設備を使っています。

伝統的にチチャはトウモロコシを噛んでから吐き出したものを使って作ります。口いっぱいにトウモロコシを頬張る代わりに、彼らはトウモロコシをモルト化したものを潰してスターチを分解した“ウォート”と呼ばれる糖液を作っています。発酵に使う酵母菌は、ペルーの山中で自生している種類に近い菌を使うことで、オリジナルのチチャになるべく近い飲み物を製造しています。

また彼らが作るプルケは、モルト化したトウモロコシと、テキーラの原料として使われているメキシコの植物、アガベのシロップから作られています。そしてプルケの自然な発酵を促進するために、メキシコから輸入したアガベの樹液から直接培養した独自の菌株を使用するのです。

こうしてできたチチャとプルケに、さらに新鮮なフルーツ、スパイス、コーヒー、チョコレートなどのフレーバーで味付けしてクラードスやフルティージャスと呼ばれるドリンクが出来上がるのです。

伝統的なレシピや製法を徹底的に研究した上で、彼らはこの古代の飲み物を現代的に解釈して自分たちにしか作れない独自の商品を作り出しました。“トウモロコシを噛み砕く”という工程はもちろん省略されていますが、その他にも昔は発酵中のチチャやプルケが飲まれていましたが、輸送・法規制上の理由から発酵が完了した状態で出荷しています。さらに、伝統的なチチャやプルケは無炭酸ですが、ドス・ルセスでは炭酸を加えています。

「私たちは3,000年以上の歴史を持つ伝統のドリンクからインスピレーションを得て、全く新しい飲み物を作っています」とベルストック氏は言います。

こうして完成したグルテンフリーのビールは、陶器のマグカップやピッチャーに入れて販売しています。外見だけでなく中身も市場の他のビールとは全く異なるものです。ベルストック氏によると、ドス・ルセスはモルト化したブルーコーンを主原料に、トウモロコシ100%のビールを作っているアメリカ唯一の醸造所だそうです。(一回限りの試みとしてチチャやプルケを作ったことがある醸造所やミードを生産するワイナリーはあるようです。)

アメリカの小規模醸造業者と個人事業主を代表する業界団体「ブリュワーズ・アソシエーションのクラフトビール・プログラム・ディレクターを務めるジュリア・ハーツ氏は「(ドス・ルセスの)ビールは、未だかつて体験したことがない味です」と言います。「エールやラガーといった標準的なビールとは似ても似つかない飲み物です。この違いは本当に興味深いですね」

この記事はFood & Wineのサラ・クタによって書かれたもので、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じて合法的にライセンスされています。ライセンスに関する質問については、legal@newscred.comまでお問い合わせください

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