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ぶどうがなりたいワインを作る~グランポレール チーフワインメーカー工藤の哲学~
グランポレールの醸造の哲学は「ぶどうがなりたいワインを作る」です。
私たち、つくり手の 「こういうワインにしたい」というエゴを極力排し、ぶどうの個性を最大限生かすワインづくりをモットーにしています。
ぶどうの特徴、個性を最大限生かすことを第一に考え、醸造テクニックで何かを無理やり付け加えることはしない、という考え方です。
ワインづくりはぶどうが収穫されてワイナリーに運ばれて来るときよりもずっと前から始まっています。
「どこに産地、畑を持つか、その産地で何の品種を育てるか。」一番大事なことはそこから始まっています。
なぜならば、「ワイン」の品質を決めているのは、「ぶどう」であり、「ぶどう」の個性、特徴を決めているのは、畑の土壌と気温・降水量・日照量などの気候だからです。
土壌や気候を見極めて、最適の品種を植える。
日々の天候を見ながら、ぶどうの生育を管理し、最適なタイミングで収穫する。これができれば、ワインづくりはほぼ成功したようなもの。
ワイナリーで私たちが考えなければならないことはそれほど多くはありません。
香りや味を引き出すための最適な発酵温度や、樽で熟成する場合は、どんな樽を使い、どれくらいの期間熟成させるか、そういう微調整が私たちのワイナリーでの仕事になります。
もっとも私も最初から「ぶどうがなりたいワインを作る」をモットーにしていたわけではありません。
「自分が作りたいワインを作るんだ」と意気込んでいた時期もありました。いくつもの失敗・経験を経て、試行錯誤の末に辿り着いたモットーです。
この考えに辿り着いた背景には、サッポロ安曇野池田ヴィンヤードでの経験がありました。
幸いにも安曇野池田ヴィンヤードでは、ぶどうの苗植えから、その成長を見ることが出来ました。
その中で、樹齢が如何にぶどうの樹の成長と果実の充実に寄与するかを目の当たりにし、「やっぱりワインの品質を決めているのは、ぶどうだな」と実感できたのです。
先日、サッポロビールはローヌのワイン銘醸地タン・エルミタージュの名門ワイナリーⅯ.シャプティエとの戦略的パートナーシップ契約の締結を発表しました。
事前に7代目当主 ミッシェル・シャプティエさんがワイン造りについて語る映像を見せていただきましたが、同じことを言っていました。
ただし、もっとうまい表現で。
「栽培は梯子作りだ。ワインメーカーはその梯子を登るようなもの。醸造では梯子より上には行けない」
安曇野池田ヴィンヤードも2010年の最初の苗植えから10年を経過し、だんだんと「最高の区画」が見えてきました。
そこに梯子を立て(たぶん一番高い梯子になるはずです)、その梯子を足を踏み外すことなく一番てっぺんまで登れば、今まで見たことのない景色が見える。
そう信じて、今年のワイン造りに臨みます。
グランポレール チーフワインメーカー 工藤雅義