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ポルシェが”未来の新車”をグランツーリスモ7で発表

ビデオゲームにポルシェのクルマが登場することは珍しくありませんが、このドイツのスポーツカーブランドが純粋にゲームのためだけに新車をデザインしたのは、今回の「グランツーリスモ7」が史上初めてとなります。

Porsche designed this concept car for the Gran Turismo video game.

ビデオゲームにポルシェのクルマが登場することは珍しくありませんがが、このドイツのスポーツカーブランドが純粋にゲームのためだけに新車をデザインしたのは、今回の「グランツーリスモ7」が史上初めてとなります。

2022年3月4日に発売されるソニープレイステーションの人気ゲームタイトル「グランツーリスモ」シリーズ最新作に登場するのは、ポルシェ初のフルEV(電気自動車)です。実際に道路を走行することはできませんが、ゲームの中では実現可能な未来的機能をいくつも備えています。

ポルシェのブランド&パートナーシップ部門を率いるデニズ・ケスキン氏によると、実車と同じように作り込まれたこのコンセプトカーの開発には、約3年の月日が費やされたといいます。ソニー傘下のソフトウェア開発会社「ポリフォニー・デジタル」の協力のもと、同ゲームを代表する「ヒーローカー」の一つとして作られました。

ポルシェ自体は、2017年からグランドツーリスモに登場しています。直近では2019年に「タイカン ターボS」が追加されました。そして 「グランドツーリスモ7」の発売に向けて、史上初となるゲーム限定レーシングカー「ポルシェ ビジョン グランツーリスモ」を開発したのです。

「通常モデルの開発と同じように、ポルシェならではのやり方でこのプロジェクトに取り組みました」とケスキン氏。「2030年のコンセプトカーは、このようなものになるのではないでしょうか。未来っぽいデザインですが、リアルさを追求し、実現不可能な機能は一つも搭載していません。コンパクトで機敏さを極めた完全なフルEVです」

ポルシェ史上初となるコンピューターゲーム専用のコンセプトカーである「ポルシェ ビジョン グランツーリスモ 」は、PlayStation 4およびPlayStation 5用ソフト「グランツーリスモ7」にのみ登場する予定です。このクルマを開発するにあたっての最大の難関は、ポルシェの精神を体現したスポーツカーであることが一目でわかるようにすることでした。

ポルシェが「グランツーリスモ7」のため、ゼロから開発したフルEVのコンセプトカー
Image Credit: Porsche

「ポルシェの魅力は、純粋主義を追求したデザイン性にあります」とポリフォニー・デジタル代表の山内一典氏はコメントしています。「エンジニアリングの知見に関して、私たちとポルシェはどちらも完全主義を貫いています。レーシングへの情熱を共有し、クルマの未来を見据えていることも、私たちの共通点です」

ケスキン氏によると、量産車の開発につきものの制約から解放されたデザインチームは、グランツーリスモのコンセプトカーに斬新なアイデアを詰め込むことができたといいます。

「純粋に仮想世界のためだけにクルマを開発するという今回のプロジェクトは、普段は量産車のデザインプロセスを遵守している私たちポルシェのエンジニアに、ワクワクするような可能性を見せてくれました」とプロダクトスタイリングの副社長を務めるミヒャエル・マウアー氏はいいます。「ポルシェ ビジョン グランツーリスモのようなプロジェクトは、クリエイティブの観点から見ると非常に貴重な経験です。明確に定義されたポルシェのデザインDNAをさらに発展させ、異業種のデザイナーと交流することは、私たちの仕事の重要な一部なのです」

「ビジョン グランツーリスモ」には、未来をイメージしてアレンジされたおなじみのポルシェのデザイン要素が備わっています。ポルシェ特有のプロポーションを採用し、スポーティーさを追求した車高と全幅のバランス、低く構えたボンネットとボリュームのあるフェンダーが大きな特徴です。

また、純粋主義を強く感じさせるフロントライトと一体型のエアインテークは、タイカンのデザインを連想させ、このクルマがフル電動スポーツカーであることを物語っています。さらに、幅の狭いライトバーがあしらわれたリアビューは、911やタイカンのデザインをさらに発展させたものです。内装においても、ポルシェのブランドアイデンティティがしっかりと表現されています。ステアリングホイールの上に浮かんで見えるカーブしたホログラムのディスプレイ。ダイナミックな印象をさらに強める低いシートポジション。内装は本物そっくりで、ドライビングデータは前述のホログラムに表示されます。

「重量を抑えつつ、パフォーマンスを向上させるために、カーボンとチタンを使った内装素材の検討に長い時間を費やしました」と語るのはポルシェのインテリアデザインを担当するマルクス・アウエルバッハ氏。「未来を志向するこのプロジェクトにおいては、サステナビリティも重要なテーマです。そこで今回は、ヴィーガン素材(動物の皮革を使わず本革の繊維構造を人工的に再現した合成皮革のこと)のみを使用しました」

純粋にデザインに関連する要素に加え、スポーツカーとしての印象を強調する新機能もこのゲームには盛り込まれています。例えば、プレイヤーはコントローラーを介して、ステアリングホイールを操作する感覚をダイレクトに伝える触覚のフィードバックを体感することができます。この瞬間的かつダイレクトなフィードバックが、本物のレーシングカーを運転している感覚を作り出すのです。

また、ポルシェにとってゲーム業界におけるプレゼンスの拡大は、戦略的にもとても重要です。

「ポルシェのターゲットである若いデジタル世代が、最初にクルマへの憧れを抱くゲームの世界で、ユーザーとエンゲージできるからです」とポルシェでマーケティングの最高責任者を務めるロバート・エイダー氏はいいます。「ポリフォニー・デジタルとグランツーリスモとのパートナーシップは、ポルシェにとってパーフェクトなプロジェクトでした。リアルであれバーチャルであれ、モータースポーツはポルシェのDNAの根幹だからです」

心を動かす本物の体験を提供することで知られるポルシェにとって、ビデオゲームやバーチャルの世界でインタラクティブなスポーツカーを生み出すことで、その魅力を幅広い人々に堪能してもらう新しい機会を提供しています。このためポルシェは、数年前からゲーム業界の様々な企業とコラボレーションを行ってきました。またこうした活動は、ポルシェのマーケティングにおいても不可欠なものとなっています。ポルシェは、永続的なブランド体験を生み出すことを最優先事項に掲げています。また、ポリフォニー・デジタルは、1997年からグランツーリスモを発表し続けてきました。

実在のポルシェのスポーツカーが初めてゲームに登場したのは、マイクロソフトのXbox用レーシングゲームシリーズ「Forza」でした。このクルマが好評を博したことを受けて、ポルシェはソニーのPlaystationにも参戦したのです。

「ポルシェにとってゲームは重要なセグメントであり、eスポーツコミュニティ全体にリーチする機会をもたらしてくれる今回のプロジェクトには、大きな熱意を持って取り組んできました」とケスキン氏。「幼少期にポジティブなブランド体験をして欲しい。クルマ好きの若いユーザーの多くがこのゲームに魅了されています」

グランツーリスモ7の世界を駆け抜けるポルシェのコンセプトカー Image Credit: Porsche

ゲームデザイナーは、ポリゴンやテクスチャを使ってゲームの世界を構築することに全神経を集中しますが、これは実物のクルマをデザインするのとは全く別の作業です。ゲームで目にすることはありませんが、ボンネットの下には多くのパーツが存在しています。また車内のインテリアにもこだわっているので、プレーヤーは異なるディテールを様々なアングルから見て楽しむことができます。

「モーターショーに登場する、本格的なコンセプトカーに見劣りしません」とケスキン氏はいいます。

「このクルマを開発するにあたって、私たちは何一つ妥協しませんでした」

ケスキン氏にとっては、デジタルとフィジカルなプロダクトの双方が同等の価値を持つということは理解しがたいことだといいます。しかし彼の息子世代にとっては、両者に価値の差がないのはは当たり前のことなのです。

「このことから、ゲームやeスポーツの世界で、ポルシェのようなブランドが活用できる機会について、非常に興味深い議論がたくさん湧き上がってきます」とケスキン氏はいいます。「少なくとも、一つのブランドとして自分たちを表現する手法について考える良いチャンスです。デジタル空間に特化した史上初のポルシェをデザインすることは、デジタル空間を正しく理解し、貢献したいという私たちの企業姿勢を表しています」

また、コンセプトカーのデザインに3年を費やしたことの費用対効果については、グランツーリスモの目玉の一つとして、マーケティング施策やeスポーツのイベントで脚光を浴びる可能性が高く、ゲームがもたらす利益だけで投資の元が取れるとケスキン氏は確信しています。新しいグランツーリスモが発売されるたびに何百万本という単位でゲームが売れてきたことを考えると、ポルシェのリーチは非常に大きなものになるはずです。

「グランツーリスモのコミュニティの皆さんも、ポルシェの存在を喜んでくれると思います。ただ長期的な効果についての予測は難しいのも確かです」とケスキン氏。「このクルマを実際に生産するには、道路交通法上の問題があるので、仮想世界のためにデザインしたものをそのまま実現することは不可能です。デザインスタジオの同僚たちも、特定の制約がなければ、もっと自由にクリエイティビティを発揮できるのに、と言っています。マーケティング担当者としては、5年後、6年後にポルシェが世界で大ブレイクして、皆さんが街で見かけた時に、あの時のあのクルマがインスピレーションになっているのかもしれないと思ってもらえたら最高です。そうなればもう本当にすごい話ですし、とても嬉しいことだと思います 」

この記事はこの記事はVentureBeat のディーン・タカハシが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされています。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまで。 

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