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“論理だけじゃない、感性だけじゃない” バランスを大切に新しいお酒を。サッポロビールで働く人の 「I・eye・愛」 vol.12 ―商品開発担当谷川知沙

――あなたは仕事やプライベートにどんな「アイ」を持っていますか? きっと誰しも強いこだわりや熱い想いを持っているのではないでしょうか。本企画では、サッポロビールで働く人に、「私はこんな職種(I)」で、「こんな視点(eye)」で仕事をしていて、「こんな想い(愛)」を持っている、といった3つの「アイ」を語ってもらいました。みなさんが普段飲むお酒をつくる人たちの思いとは。そこには意外な仕事とユニークな人たちがいました。

連載第12回目は、商品開発を担う谷川知沙に取材。ドイツ留学を通してビールづくりを深めてきた谷川。 日々、新しいおいしさを切り拓く彼女の仕事観に迫ります。

はじめに…谷川知沙はこんな人

・静岡の研究所に勤務しており、一番一緒にお酒を飲むのは会社の同僚が多い
・「琥珀ヱビス」を飲んだ時にビールのおいしさに目覚め、サッポロビールに入社
・趣味は旅行。旅行先のおいしいご飯とお酒を探すのが好き

I  ー 私はこんな職種で、

留学で得た知見を活かし、新しいお酒を切り拓く、
商品開発担当                                  

――まずは、現在の部署や入社からの経歴を教えてください。

谷川:現在は商品・技術イノベーション部という部署で、ビールの商品開発やそれに付随する研究を行っています。2017年に入社し、最初の3年間は北海道工場で醸造担当を務めました。その後、2020年春からは静岡にある現在の部署に異動しています。また、2024年には社内制度を活用して、1年間ドイツのミュンヘン工科大学へ留学してビール醸造を学びました。

――ドイツ留学中にはどのような勉強や活動をしましたか?

谷川:ミュンヘン工科大学の研究室に所属し、メンバーと一緒に醸造に関するさまざまな研究(主にノンアルコール)を行ったり、ヨーロッパの各地で行われる学会に参加したりしていました。また、ドイツなどヨーロッパの醸造所やメーカーを巡り、現地のビールづくりの技術を直接学んだり最新の設備を調査したりしていました。

――現在の具体的な仕事内容を教えてください。

谷川:各部署との打ち合わせやレシピ作り、味の改善や新商品開発に関する課題解決のための試験に時間を費やしています。具体的には、マーケティングや生産技術、R&Dなど、さまざまな部署との打ち合わせを行い、「こんなコンセプトの商品を作りたい」という相談を受け、それを実現するためのレシピ開発を行ったり、逆に私たち側から「新しい技術が生まれたので、こんな商品開発ができますよ」といった提案をしたりします。

ビールの開発には通常長い時間がかかるので、私たちは常に将来の市場を予測しながら日々の業務に取り組んでいます。

――レシピ開発とは、具体的にどのような仕事ですか?

谷川:ビールは基本的に、麦芽、ホップ、酵母、水の4つの原料から作られますが、それに加え果実やスパイスなどの原料を使用することもあります。レシピ開発ではこれらの原料の配合を調整していきます。麦芽の配合や使用量をどうするか、どの種類のホップを使いどのタイミングで投入するか、ビールの苦味をどう設定するか、といった点を細かく検討していきます。

――他部署との連携が多そうですが、社外での取り組みもあるのでしょうか。

谷川:異なる会社の方と共同で研究開発に取り組むこともありますよ。例えば、森永製菓さんと共同で今年(2025年)取り組んだ事例があります。「小枝」の製造過程で生まれる販売できない規格外のお菓子を原料の一部として活用したビール「サッポロ MILD BLACK with小枝」を限定品として開発・販売しました。この取り組みについては、ビール商品開発はもちろんサスティナビリティーにも関わるものでした。

基本的なビール開発は通常1年程度で完了しますが、このような前例のない取り組みやビール業界にとって新しい挑戦となるテーマは、さまざまな課題が出てくることが多いので何年もかけて継続的に取り組むことがあります。このケースは、森永さんと最初に構想を開始して商品開発が完了するまで2年年ほどかかりましたね。

eye  ー 私はこんな視点で、

独りよがりにならず、感性と論理を調和して、
「納得の一杯」を生み出す

――担当している仕事に関して、大事にしている視点を教えてください。

谷川:「独りよがりにならないこと」です。そのため、さまざまな視点で物事を考えることを意識しています。また、気になることがあればフットワークを軽くして情報を集めて行動に移しつつ、突き進みすぎないというバランス感を大切にしています。

私は研究開発に携わっているので、これまでの知見や経験といった部分が大切になってきます。しかし、そこに囚われすぎると課題を打開できなくなってしまうことがあるんです。なので、一旦立ち止まって「視野が狭まっていないか?」と自分に問いかけ、柔軟に外部の情報や意見を取り入れるように心がけています。人からの単純な疑問やアドバイス、考えているだけではなかなか思いつかない、会話の中で生まれるアイデアが、解決に繋がることも多いからです。

――新商品など、新しい取り組みに向き合う中で意識していることはありますか?

谷川:ビールはもちろん、さまざまな飲み物や食べ物の新しい情報はアンテナを高く張ってチェックしています。私の部署はトレンドに敏感な人が多く、グループチャットではよく最新情報を共有していますよ。最近では、新しい売り方や飲む場所といった「体験価値」に重きが置かれる傾向があるのでその部分はより注視していますね。

例えば「HOGUSU」は、まさにその「体験」を起点にデザインした微アルコール飲料(アルコール0.7%)でした。現在は販売を終了しているのですが、“飲むシーンそのものを心地よくほぐす”という発想で作られた商品で、まさに体験を起点にした開発の一例でした。

飲むシーンそのものを大切にしたくて、“ただ味わう”ビールというより、“特別なひとときを演出する一杯”として考えた商品です。制作過程で「どこで、誰と、どう飲むか」という“飲酒体験”のあり方にまで目を向ける重要性を改めて実感しました。こういった挑戦は、ビールやお酒、ノンアルコールの持つ可能性を広げる第一歩だったと思います。

――仕事でやりがいを感じる瞬間を教えて下さい。

谷川:自分が携わった商品がお客様の手に取っていただけるところを実際に見られることが大きなやりがいです。私たち技術者は、直接お客様と話す機会は多くありませんが、時々イベントの応援などに行き、生の声を聞くことができると本当にやりがいを感じますね。また、SNSでの反響が良かったり、友人から「買ったよ」と言ってもらえたり、居酒屋などで自分が開発したビールが提供されていて「おいしいね」という声が聞こえたりすると、やはり嬉しいですね。

他には、開発を進める中で自分自身はもちろんチームの皆が「おいしい、これなら納得して提供できる」と思えるものが完成したときも、とても嬉しい瞬間です。

愛  ー 私はこんな想いを、

アカデミックな知見と温かいホスピタリティ。
未来の“おいしい”をカイタクしていく

――サッポロビールのどのような点に魅力を感じていますか?

谷川:やはり「人」にあります。就職活動中から、人の温かさやホスピタリティを感じていたのがサッポロビールでしたし、実際に入社してみても風通しがとても良いと感じています。自分が担当している仕事について、違う部署の人が「今こういうことやってるんでしょ」「最近頑張っているね」と声をかけてくれることがよくあるんです。また、以前少しだけ関わりがあった人でもお会いした時に親しく話しかけてくださるなど、本当に素敵な人が多いんですよ。

上司との距離感も近いです。もちろん一定のラインや敬意はありますが、意見を相談しやすくて、「やりたいことをやりたい」と言いやすい環境です。

――サッポロビールについてあまり知られていないけど紹介したい部分はありますか?

谷川:サッポロビールは、原料にとてもこだわりを持っているという点です。大麦やホップの新品種開発などに力を入れていて、原料に関する研究を数多く行っています。その研究成果は海外の学会などで積極的に発表しているんですよ。頑張って英語で資料を作って発表したこともあります。この経験をきっかけに留学制度に手をあげました。

また、日本でも醸造学会などがあり、発酵技術に関する研究発表に定期的に参加しています。

――ビールに関する国際的な学会があるんですね。

谷川:はい、そうなんです。大きな学会がヨーロッパとアメリカで定期的に開催されています。そこでは、世界中のビール会社や原料メーカー、設備メーカーが集まり、新しい技術の内容などを発表・共有します。会社をアピールする機会としても活用されますが、そこで発表された技術を皆で共有し、ビール業界をより良いものにしていくという側面もあります。

こういったアカデミックな取り組みはあまり知られていないかもしれませんが、ホームページのニュースリリースなどを見ると、学会発表の経歴などが載っているのでぜひ見てみてください。

――サッポロビールの行動規範に「カイタクしよう」とありますが、仕事でカイタクしていることはありますか?

谷川:私たち商品・技術イノベーション部が日々行っていること全てが、まさにカイタクだと思っています。この仕事はお酒の未来を作っていく部署だと思うので、これからも研究活動やレシピ開発を通して、よりよい商品を生み出していきます。

――自分の人生で大切にしている価値観は何ですか?

谷川:インスピレーションです。もちろん、インスピレーションだけで仕事を進めるのは危険ですが、直感的に「これは良いかもしれない」と思ったことやふと思いついたアイデアに対して、後からロジックを考えていくことが多いんです。直感と論理が成り立った時、それを試してみるとあまり失敗しなくて。だから、この感性を大切にしているんです。

――サッポロビールのビジョンに「誰かの、いちばん星であれ」という言葉を掲げていますが、これから仕事を通して自己実現したいことがあれば教えてください。

谷川:お客様の笑顔に繋がるものをどんどん作っていきたいです。今ももちろんおいしい商品をお届けできていると思いますが、その可能性をさらに広げていくことが今後ますます大切になると考えています。お酒に対する社会的な意識も変化してきています。その中で、例えばノンアルコールの分野など飲み方の多様性を広げていけるような商品をしっかりと作っていけるように今後も仕事に取り組んでいきます。

▼こちらの記事・サイトも一緒にいかがですか?

・谷川も制作に携わった、“サッポロ MILD BLACK with小枝”を見る

・個性豊かなサッポロ社員のストーリー「I・eye・愛」はこちらからどうぞ

・SAPPOROグループ企業の採用情報 

プロフィール

谷川知沙

2017年にサッポロビール株式会社入社、3年間北海道工場で醸造担当を務める。その後、2020年春にマーケティング本部・商品・技術イノベーション部に異動。2024年から1年間ドイツのミュンヘン工科大学へ留学。ビール醸造を学ぶとともに、ヨーロッパの醸造所やメーカーを巡り、技術調査・研究を行う。2025年8月に帰国。 

クレジット:
Photograph_Keisuke Yasuda
Text_ Nana Tabara
Edit_Nana Tabara,Tenji Muto(amana)

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