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漫画家 パピヨン本田の一コマ漫画で見る 「お酒好きのふとした日常」
「飲まないと決めた日に限って誘われる」「やたら語りたくなる推しの酒場」――お酒好きには、お酒好きならば、ついつい共感してしまう“生態”や“あるある”があるもの。本企画でご紹介するのは、そんな共感してしまう“お酒好きのふとした日常”を切り取った一コマ漫画。漫画家/イラストレーターであるパピヨン本田さんに1コマ漫画を描き下ろしていただいた。飾らないのに心に残る、そんな飲み時間を、クスッと笑えて少し沁みるユーモアで描いてもらいました。今夜の晩酌のアテに、どうぞ。
“缶を開ける音”だけで、
ビールの香りや泡を連想しちゃう
プシュッと鳴っただけで、もう飲んだ気になる。
冷えた缶の手ざわり、シュワッと立ちのぼる泡、一口目の「くぅ〜っ」まで、頭の中で再生されてしまう。
お酒好きの脳は、たぶん条件反射でできている。誰かの缶ビールの音にも、自販機の前で聞こえてくる開栓音にも、なぜか勝手に“飲む準備”を始めてしまうのです。
しかも想像力が豊かすぎて、グラスまで登場させたりする。
今夜の晩酌どうしよう、なんて考えてなかったはずなのに。
きっとそれは、お酒が好きだからこそ起きる、ささやかで愉快な“脳内フライング乾杯”。
飲んでなくても、ちょっと幸せになれる。
そんな音に、「ピクっと」。今日も反応してしまうのです。
いつも飲んでいるアノお酒が、
“異常に美味しい日”がある
銘柄もグラスも、冷やし方も、前日と変わらない。
それなのに、飲んだ瞬間「今日は妙に美味しいな」と感じる夜があります。
香りが際立って感じられたり、喉ごしがやけに心地よかったり。“同じお酒”でも、こちらのコンディション次第で、印象ががらりと変わる。
例えば、何かを乗り越えた日の夜や、静かに終わった休日の締めくくり。
ちょっとした達成感や、心の余白が、その一杯を格別なものにするのでしょう。
特別な銘柄でなくても、特別な気分になれる。
いつもと変わらぬ晩酌のなかに、思わず「うまい」と声が漏れる瞬間。
それはきっと、日々を頑張っている自分への小さなごほうびです。
“赤星”があるお店は、
「ここ赤星あるじゃん」と言ってしまう
居酒屋のメニューに「サッポロラガー(赤星)」の文字を見つけた瞬間、
なぜか小さくうれしくなる。
瓶の赤い星は、それだけで店の個性やこだわりを感じさせる存在です。
「ここ、赤星あるんだ」と、つい口に出してしまうのも自然な流れ。選択肢が豊富な時代だからこそ、こうした“古くて新しい一本”に出会えることが、ささやかな発見になるのかもしれません。
料理との相性もよく、グラスに注いだときの存在感もまた格別。注文して席に届いた瞬間、ちょっと背筋が伸びるような感覚すらある。
赤星のある店に出会うたび、「いい店、見つけたな」と思える。
そんなふうに、酒場での“小さなよろこび”が増えるのも、悪くないですよね。
プロフィール
パピヨン本田
1995年生まれの作家。2021年5月からX(当時のTwitter) に美術にまつわる漫画をアップしはじめ、またたく間に人気を得る。美術史やアーティスト、展覧会、ギャラリーなど、美術業界の様々な題材で漫画制作をするほか、近年では企業 タイアップや各媒体での執筆など活躍は多岐にわたる。また、美術作家として別名義で創作活動をしている。主な著書に『常識やぶりの天才たちが作った美術道』(KADOKAWA)、『美術のトラちゃん』(イースト・プレス)がある。また、ウェブメディア『CINRA』で「美術のトラちゃん」連載中のほか、集英社のウェブメディア『UOMO』にて「コンセプチャル・ガール」を連載している。
