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自社開発した特別な大麦の栽培に向けて、カナダで奮闘している若手研究員

今回は自社開発した特別な大麦をカナダで栽培するべく、カナダで奮闘している若手研究員をサッポロビール広報部で日本ビール検定1級を持っている楯 優作が取材しました。

サッポロビールは創業時よりビールの原料研究に力を入れており、主力商品である「サッポロ生ビール黒ラベル」に一部使用されている「旨さ長持ち麦芽」を自社で開発したり、現在は気候変動に対応する大麦開発にも注力しています。「旨さ長持ち麦芽(以下、LOXレス大麦)」と「気候変動対応大麦N68-411(以下、気候変動大麦)」開発については、以前の記事で紹介していますので是非ご覧ください。

他ビールメーカーにはない原料調達の仕組み、協働契約栽培とフィールドマン

始めに今回の記事のキーワードとなる2つの言葉を少し説明させてください。

サッポロビールには他のビールメーカーにはない「協働契約栽培」という原料調達システムと、その仕組みを支える「フィールドマン」という仕事があります。

「協働契約栽培」とは、大麦とホップの産地、生産者、生産方法が明確で生産者との交流がされていることを条件に、生産者と一緒に原料を造っていくサッポロビール独自の原料調達システムのことです。

道の駅やスーパーの野菜販売コーナーで、「この大根は私が作りました!」という農家さんの顔写真つきのPOPが貼って売られているのを見かけた人もいると思いますが、それに近いイメージになります。

「協働契約栽培」や国内外の原料生産管理などの仕事に従事しているのが「フィールドマン」です。フィールドマンは国内外に9名おり、大麦(関東、北海道、北米、豪州、欧州)とホップ(東北・北海道・北米・欧州)の担当エリアに足を運んで生産者と話し合いながら、気候変動に関する懸念から栽培に関する悩みごとまであらゆる面でアドバイスや情報交換を行っています。世界各地で活動するフィールドマンによって、良質な原料を安定的に確保できるような体制になっています。

女性初のフィールドマン誕生、原料にこだわるサッポロの姿勢に惹かれて入社

今回は、「LOXレス大麦」と「気候変動対応大麦」の現地栽培を目指して奮闘しているサッポロビール原料開発研究所 原料育種研究グループの若手研究員兼カナダ担当フィールドマンの牧本梨奈さんにお話を伺いました。

楯)牧本さんはまだ入社6年目でありながら、大麦研究だけでなくフィールドマンとしてもご自身の活躍の幅をどんどん広げられていますね。入社してからの経歴と現在の業務について教えてもらえますか。

牧本)私は2019年にサッポロビールに入社し、原料開発研究所の群馬県太田市の研究拠点に配属されてから主に大麦の研究を担当していました。入社2年目にカナダエリアの育種(品種開発)を担当する研究員になり、3年目に女性で初めてのフィールドマン(カナダの大麦担当)となりました。ちょうど今年の4月に北海道上富良野の研究拠点に異動することになり、今後は大麦研究を続けながら、ホップ研究もするかもしれません。大麦とホップを両方研究している研究員はまだいないのでワクワクしています。

楯)すごいですね、女性初のフィールドマン!それだけでなく、大麦もホップも研究する、まさに二刀流研究員になる可能性もあるのですね!もしよければ、ちょっと過去にさかのぼって、学生時代と就活のサッポロビールを選んだ理由などのお話も少し聞かせてください。

牧本)私は農学部出身で、大学4年生から大学院にかけては果樹園芸学研究室で果樹の柿について研究していました。就活を開始した当初は、多くの人と関わって日本の産業や地方を盛り上げたいと思い、国家公務員を考えていました。しかし、就活を進めていくうちに自分は民間の会社で直接的に日本の産業を盛り上げていきたいとと思い始めるようになりました。食べることやお酒が好きだったので、研究スキルも活かせる食品メーカーを中心に受けました。そして、一番おいしいと思ったビールが「サッポロ生ビール黒ラベル」だったことと、原料からこだわって品質の良いビールを作るというサッポロの姿勢が自分に合うかもと思って選びました。

楯)なるほど。確かに創業時から原料にこだわってビール造りを続けている会社って珍しいですよね。そして牧本さんの学んできたこともそのまま活かせそうで、まさに適職って感じですね。農業や原料に興味がある学生はサッポロビールの社風は合うかもしれないですね。

入社時から希望していたフィールドマン任命、カナダでの新たな挑戦

楯)最初にフィールドマンに任命されたときの気持ちはどうでしたか?

牧本)そうですね。面接時から一貫してフィールドマンをやりたいと言っていたので、1つ夢が叶ったなと思いました。2年目でカナダの大麦育種担当になっていたのと、フィールドマンになるための研修も会社で受けていたので、無事になれて良かったって気持ちが強かったですね。女性初のフィールドマンということもあって、これから目指す後輩たちのモデルケースになりたいと気が引き締まりました。

楯)夢が叶っても先をしっかり見据えているのは素晴らしいですね。実際に現地ではどんな仕事をしているのですか?

牧本)私は主に育種とフィールドマンの2つ仕事を担っています。カナダには、毎年夏に1ヵ月、冬に1週間行っています。

育種の業務では、共同研究をしているカナダのサスカチュワン大学の先生や現場スタッフと一緒に品種についての研究のデータ分析やディスカッションをしたり、複数個所ある試験圃場で大麦の生育の評価をしています。

フィールドマンの業務としては、「協働契約栽培」の取り組みとして生産者と畑の確認や求める大麦品質について意見交換をしています。あとは「LOXレス大麦」と「気候変動対応大麦」のそれぞれ新品種を開発し、現地で栽培すべく、製麦会社や生産者と話し合いを重ねています。どのようにしたらカナダの畑でも生育できるか、日々現地の方とコミュニケーションを取りながらいろんな実験を行っています。

楯)なるほど!育種とフィールドマンの二足の草鞋でとても忙しそうですね。新品種の開発とは具体的にどういうことですか?

牧本)新品種の開発とは、優れた大麦同士を交配して、今までにない大麦を作ることです。今、目指しているおいしさ長持ち、雨に強い、製麦にかかるエネルギー削減ができる大麦を開発できればビール業界のサステナビリティに貢献できます。そんな大麦をカナダ全域で普及、販売していきたいと思っています。

楯)その新品種開発によってカナダ全域に高品質な大麦が普及できるということですね!まさに牧本さんがカナダの大麦の未来を背負っていますね。

※牧本さんの奮闘ぶりはカナダサスカチュワン州政府の公式YouTubeにも掲載されています。

ヘリで協働契約栽培のミーティング

海外における新品種0→1の立ち上げに挑戦

楯)カナダで実際に働いてみて大変だったことは何でしょうか。

牧本)大変だったことは、私が担当した後にカナダにて「LOXレス大麦」に加えて、新たに「気候変動対応大麦」の新品種開発も始まったことです。これまでの前例が全くない分析・評価を現地で実施しなければなりません。現地のスタッフに1から説明して、実施する意義や内容を理解してもらうのが大変でした。この研究が解決する課題や検査基準を何度も何度も丁寧に説明した結果、現地スタッフも納得してくれて、今ではとてもスムーズに研究が進められています。本当に多くの方に支えられて、仕事ができていることを実感しますね。

楯)牧本さんが担当になってから、「気候変動対応大麦」の新品種開発が加わって、「0から1」のスタートだったんですね。

牧本)大変なこともありますが、ずっと憧れの仕事だったのと、社内もカナダで関わる方々も良い人たちばかりなので、とても楽しく働けています。カナダの広い畑を見ると、ここにある大麦すべてが最終的にビールになっていることに感動します。多くの人に「この畑全部がビールになるんだよ!」ということを伝えたいですね。

歴代の先輩たちのバトンを受け継ぐ責任と希望

楯)素晴らしいマインドで活躍されていますが、今後のご自身の展望などを教えてください。

牧本)不思議な縁を感じるのですが、サッポロビールがカナダの大麦育種を始めた1994年は私の生まれ年でもあります。カナダの育種担当は私で6代目なのですが、先輩方が長い年月をかけて整えてくれたシステムや材料で良い研究ができているので、この成果を次の世代にも繋げていく責任感を感じています。

特に「LOXレス大麦」と「気候変動対応大麦」のそれぞれの新品種開発は絶対やりきりたいですね。今後はホップも含め、原料のスペシャリストになって、将来の仕事にさらに厚みが出せるフィールドマンになりたいです。

楯)女性初のフィールドマンからの大麦ホップ二刀流の研究者。夢は広がりますが、牧本さんならできると思います。応援しています!

最後に

いかがでしたでしょうか。今回はサッポロビールの若き研究員兼女性初のフィールドマンを取材しました。牧本さんの話を聞いていると周りの人に感謝をしながら、夢に向かって進んでいるたくましさを感じたと同時に、今後も研究員やフィールドマン1人1人の挑戦によって、おいしいビールの品質が未来まで守られていくことを確信しました。これからもサッポロビールの明るいビールの未来にご期待ください!

サッポロビール広報部楯 優作(日本ビール検定1級保有)

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