CATEGORY : 知る
大会を支える関東学連・学生幹事インタビュー 「箱根駅伝は私たちにとっても〝集大成〟のイベント」 (前編)
※2018年12月25日にサッポロビール箱根駅伝応援サイトに掲載した記事の転載です。取材当時(2018年)内容となります。
箱根駅伝を主催する関東学生陸上競技連盟は〝学生主体〟の伝統を受け継ぎ、現在も学生幹事を中心に大会を運営している。12月に入って準備も大詰めとなった中、4年生の幹部2人に関東学連学生幹事となったきっかけ、裏方の仕事内容、最後の箱根駅伝への想いなどを聞いた。
高3まで9年間は長距離選手、父・姉の影響で大学入学と同時に関東学連へ
関東学生陸上競技連盟(以下、関東学連)は、関東の大学陸上競技部によって構成される学生主体の団体のことを指す。5月の関東インカレ(関東学生陸上競技対校選手権大会)や10月の箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)予選会、年始の箱根駅伝本大会など、関東地区で行われる年間10回の陸上競技会を主催・運営している。
各種行事の運営は〝学生主体〟が伝統で、学生幹事のリーダーである今年度の幹事長を務めるのは、東洋大学4年生の川崎和葉里さん。「大学も学年もバラバラで、陸上競技の経験者も半分くらい」という31人の学生幹事をまとめ、協力し合いながら、東京・千駄ヶ谷の事務所を拠点に日々の活動に勤しんでいる。
中央学院大学陸上競技部・川崎勇二監督の次女として生まれ、子供のころから陸上競技、箱根駅伝に親しみ、自身も小学4年から高校まで9年間、長距離選手として陸上を続けてきた。國學院大學陸上競技部のマネージャーをしていた3歳上の姉の勧めもあり、川崎さんは大学入学とともに関東学連に入った。
「選手としてやれるのはここまでかなと。ただ、スポーツや陸上が好きなので、大学でも何かしらに関わっていたいと思っていた中、父が役員を務める関東学連の存在を知り、自分も選手を支える側の仕事をやってみたいと思うようになりました」
大会準備に膨大な時間と労力を注ぐ
学年を重ねるごとに仕事量と責任が増す
主催・運営する各大会では、学生幹事の担当がつき、その担当者が軸になって役割分担されたスタッフとともに、それぞれの業務を進めていく。大会当日の運営はもちろんだが、何よりそれまでの準備に膨大な労力と時間がかかる。関係各所への挨拶から始まり、綿密な打ち合わせや調整、大会プログラムの作成……。スタッフは授業が終わり、各大学から三々五々に事務所に集まって、夜遅くまで作業を続けることは日常茶飯事。土日に業務に当たらなければならない日もあるという。
「1、2年生の頃は先輩についていろいろと教わり、3年生、4年生と学年が上がるにしたがって、任される仕事が増え、責任を持たなくてはいけません。また、幹事長としては、各担当が打ち合わせを行ったとき、それをすべて共有し、確認しなければいけないという点で大変さはあります」
今年度は、特に関東インカレと箱根予選会が終わった後、「頭が真っ白になったというか、解放されたという気持ちが沸き上がったほど苦労しました」と川崎さんは振り返る。
「関東インカレは、今までとは違う相模原市での開催でした。競技場が変わると、競技方法や規制方法など、いろいろと変えなければいけないこともありますし、今回は関東学連の総務委員長や競技審判委員長と相談しながら、ハーフマラソンのコース設定も行いました。『選手にとって、こんなコースなら良いよね』という案はありましたが、警察の方との交渉ですべて採用とはなりませんでした」
箱根予選会の距離を変更した背景
〝国際基準〟のハーフマラソンに
箱根予選会も今回から距離が変更され、前回までの20kmレースから21.0975kmのハーフマラソンとなった。川崎さんはその意図を「現在は国際的に20kmレースはあまり行われておらず、ハーフマラソンが主流になっている国際基準に合わせようという意見が3年ぐらい前から出ていました」と説明する。箱根駅伝は10区間中7区間が21km以上の距離で行われ、駅伝対策委員会でもハーフマラソンの方が選手の強化につながるという判断があったようだ。
「約1.1km距離が延びただけではありますが、こちらもやはり関係する方たちと打ち合わせを重ねる必要があり、昨年の12月ぐらいから準備を始めました。なかなか思うようにいかずに、今まで2周していた自衛隊立川駐屯地の滑走路を2周から3周に増やしたり、ラスト4kmでヘアピンカーブを組み込んだりして、何とか調整できた感じです」
予選会はコンディションに恵まれたこともあって、好記録が続出した。「選手にはきついコースになったかもしれませんが、予選会は基本的にタイムを狙う大会ではないので、順位におもしろみが出てきたという点で、まずまず成功だったと捉えています」と、滞りなく大会を終えたことに胸をなで下ろしていた。
箱根駅伝は学生幹事にとっても〝集大成〟
「事故やアクシデントもなく無事に終わってほしい」
いよいよ迎える箱根駅伝本大会が、今年度の関東学連にとって集大成のイベントとなる。夏ごろから各大会と同時進行で準備を進めてきたが、12月に入ると、事務所ではスタッフが黙々と詰めの作業に取り組み、川崎さんも警察などとの最終調整に追われていた。
本大会では、川崎さんは「父の中央学院大学や自分が通う東洋大学の結果が多少は気になります」とは言うものの、終始、熱を持って応援することもないという。むしろ一般のファンと同じように、駅伝を楽しみたい気持ちの方が強い。しかし、関東学連の幹事長という立場上、それもなかなか難しそうだ。
「レース当日は、大会本部車に乗り込み、スタートからフィニッシュまで先頭の選手の前でレース全体を見守るかたちになります。無線を使って、各選手のすぐ後ろにつく各校の運営管理車の入れ替えを指示したり、細かい連絡事項があれば伝えたりするのが仕事です。順位の変動が多いレース前半は慌ただしくなりますが、復路の途中あたりからは無線も落ち着いて、少しはレース観戦を楽しめるかもしれません」
そして、関東学連のスタッフとして願うのは、「みんなで時間をかけて準備してきていますので、当日はとにかく事故やアクシデントなく、選手全員が棄権せずに無事にゴールしてほしい」ということ。駅伝を戦う各大学の選手たちと同様、関東学連のスタッフたちもチームワークで、大一番の箱根駅伝を乗り越えようとしている。