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“枠に捉われない。それが良いんじゃない?” YouTuber 岡奈なな子 × SORACHI 1984 ブリューイングデザイナー 新井健司
目まぐるしく時代が変化する社会において時代が令和になり脚光を浴びた、YouTuber岡奈なな子と伝説のホップだけでつくったビール「SORACHI 1984」。まったく異なるように見える両者には意外な共通点がある。様々な活動・経歴を経て、なお自身の個性や価値観を貫き、脚光を浴びている点だ。そんな意外過ぎる共通点を中心に、本記事ではYouTuber「岡奈なな子」氏と「SORACHI 1984」のブリューイングデザイナー「新井健司」に対談いただいた。「ありのままの自分をお届けしたい」、「周りと価値観が違ったって大丈夫じゃない?」。そんな肩肘張らない、自然体な価値観を少し覗いてみよう。
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意外な共通項。”同じ匂いを嗅ぎつけて、人が集まる”
──YouTubeに日常の些細な幸せを投稿し、登録者数59万人(2023年3月現在)を誇るYouTuberの岡奈なな子さん。一方、ビールの原料であり後に伝説と呼ばれる、ホップ「ソラチエース」が35年の時を経て「SORACHI 1984」として商品化。その開発から宣伝まで担当するのが、サッポロビールのSORACHI 1984 ブリューイングデザイナーの新井健司。本来交わることのない両者だが、思いもよらない共通項が存在した。
岡奈:お会いできるのを楽しみにしていました! お話いただいてから考えていたんですけど、私に対談をオファーしていただいた理由ってなんですか? サッポロビールさんからの依頼が意外だなって思って。
新井:そこは気になりますよね。「SORACHI 1984と共通項があるな」ってシンパシーを感じたんです。
岡奈:シンパシーですか……?
新井:実はそもそも僕が担当している「SORACHI 1984」って”一味違う”ビールだと思っているんです。いわゆる一般的なビールって、ホップなどの原料の個性をマイルドにして、誰にでも飲みやすいテイストにすることが多いんです。
岡奈:そうですね。そのイメージがあります。
新井:でもSORACHI 1984は違っていて、ホップの苦味や味わいといった、本来の風味を大事にしたビールなんです。”個性を貫く”みたいなことをコンセプトにしていますね。
岡奈:”個性を貫く”‥‥なるほど。
新井:岡奈さんって自然体だけどワンアクセントある動画を投稿されているじゃないですか。時代や周りに右ならえではなく、”いわゆるYouTuber”とは別のラインにいるというか。「SORACHI 1984と通ずるものがあるな」と思って、色々お話を伺ってみたかったんです。
岡奈:なるほど、それは私にピッタリですね!適任者です、はい(笑)。
新井:それに岡奈さんの動画を拝見しましたが、ビールをよく飲んでいますよね。ビール好きというところも対談をお願いした大きなポイントの一つですね。
岡奈:それは嬉しいです。昔、友達と北海道の「サッポロビール園」に行ったことがあって。そこで飲んだビールが、「こんなにビールっておいしいの!」って感動したんですよ。それからビールが大好きに。
新井:サッポロビール園は間違いないですよね! 私も北海道に行くことがあったら、絶対に立ち寄るようにしています。話題が少し戻りますが、岡奈さんの個性だったり世界観を出すために、大事にしているスタンスとかあったりするんですか?
岡奈:実はスタンスに関しては、何も決めていないんです。”いわゆるYouTuber”って企画系が多いじゃないですか。企画毎に動画を上げるっていうか。でもそれっていつかネタが尽きちゃいそうで。だから私は何も考えず、自分の”ありのままの生活”をそのまま動画で投稿してやろうと思って。「日常short movie」というチャンネルも、私の素をそのままお届けするためのチャンネルだと考えています。
新井:逆転の発想から始まったんですね。ちなみにチャンネルってどんな層のファンの方が多いんですか?
岡奈:いわゆるカルチャー層というか、感度の高い人に見ていただくことが多いですね。なんというか、私と似ている人と言うか。視聴者から「同じ髪型にしました!」とDMが届いたり、同じ美容院に通っているファンの方もいたりします(笑)。
新井:それは熱狂的ですね。
岡奈:一方でSORACHI 1984も親近感があるけど、他のビールとは違う魅力がある気がします。実際のところどうでしょうか?
新井:そうなんです。同じ雰囲気を感じ取っていただけるのか、比較的狭い分野で挑戦をしたり、自分を貫いている人に見つけてもらうことが多いですね。今までもSORACHI 1984ファンということで、クラリネット奏者の方やパリでパフォーマンスした書家さんとコラボしたりしています。
岡奈:ええ、それはすごい。かなり感度高い方々ですね(笑)
新井:面白いのが、SORACHI 1984を好きな人同士で仲良くなる傾向があって。SORACHI 1984好き同士で集まったり、”SORACHI 1984が好きかどうか”をバロメーターにしているみたいなんです。
岡奈:皆さん、同じ匂いを嗅ぎつけるんですかね。私もSORACHI 1984を飲ませていただきましたけど、私が好きな味でした! 今まで飲んだことのないタイプの味というか。料理の深みを引き出すスパイス的な魅力があるように思いました。
新井:それは嬉しい感想ですね。まさにSORACHI 1984が狙っている部分なんです。普通のビールだと喉ごしが重視されて、料理の油成分が流れちゃったりするんですけど、SORACHI 1984は香りを大切にしていて、そういった旨味のもとを流さないんです。特にイタリアンと合わせるのをおすすめしています。
両者の出発点。”祖母の一軒家”と”1984″
──業界は違えど、同じように個性を貫き、似た人を惹きつける魅力を持った両者。しかし両者の出発点は全く異なるものだった。「あの日があったから‥‥」、そんな知られざるターニングポイントに迫る。
新井:そういえば、岡奈さんは何でそもそもYouTuberになろうと思ったんですか?
岡奈:きっかけですか。東京に出てきて、バイトを転々としていたんですけど、特に「これがやりたい!」みたいな明確な目標がなくて。そんな時におばあちゃんが亡くなって、おばあちゃんが住んでいた一軒家を取り壊すって話が上がったんです。
色んな思い出がなくなってしまうと思ってかなり落ち込んでいたんですけど、ふと思い立ったんです。私が「おばあちゃんの一軒家に住んで、その生活をYouTubeにあげてみようかな」って。
新井:そんな思いがあったんですね。
岡奈:おばあちゃんの家にいたいってのは決めていたけど、YouTubeは本当に思いつきだったんです。思い出も残せるし、良いんじゃないかなって。その時、手元にあったiPhoneと無料の編集ソフトだけで始めたんです。
新井:動画でいつも登場するレトロ味溢れるお家は、元々おばあ様のお家だったんですね。
岡奈:実はそうなんです。逆にSORACHI 1984ってどうやって誕生したんですか? ビールの名前に数字が入っていることも珍しいですよね。「1984」の由来も気になります。
新井:「1984」は年号ですね。ビールに使用されている「ソラチエース」というホップが品種登録されたのが、名前にもある1984年。そこから35年経って、2019年に商品化したんです。
岡奈:どうして年号を商品名に入れているんですか?
新井:ソラチエースというホップは風味が強いことが特徴なのですが、当初はそれが日本のビールのニーズにフィットせず、アメリカなど海外でのみ評価されていたんです。けれど近年、その風味がむしろ「オリジナリティーがある」と評価されて、SORACHI 1984として商品化に至ったんです。
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岡奈:「時代が追いついた!」という感じなんですね。世間が求めるニーズが変わったというか。新井さんはいつからSORACHI 1984の構想があったんですか?
新井:実は、僕もソラチエースを知ったのが、ビールを学ぶためにドイツ留学していた時なんです。現地のブリュワーにサッポロビールから来たって言うと「あのソラチエースを作った会社だよね!」と。”逆輸入的”な形で知ったんです。
岡奈:もとから知っていたわけではないんですね!
新井:留学から戻ってきて「いつかソラチエースを使ったビールを作りたいな」と思っていたら、ちょうど商品開発の部署に転属になって、そこからとんとん拍子で開発に取り組み始めたんです。
両極端な道程。”緻密なマイナーチェンジ”と”私生活の投げっぱなし”
──異なる出発点から動き出す両者。”個性を貫く”というポリシーこそ共通するが、軌道に乗るまでの道程は対局に位置するものだった。
新井:開発を始めたのは良いものの、そこから商品化までに約5年も掛かったんですよ。2015年から具体的に構想を上げて、それを現場の研究者と相談しながら味わいだったり、パッケージだったりを詰めていって。緻密に計画を立てながら、何とか商品化に漕ぎつけたという感じです。
岡奈:そんなに時間を費やして開発されたんですね。
新井:そうなんです。色んな方法でテストしながら進めていって、最初は瓶ビールとしての販売だったんです。そこからパッケージデザインも3回ほどリニューアルしていて。この3月にもまた新しいパッケージに生まれ変わりました。
SORACHI 1984の歴代パッケージ。右のデザインから順にリニューアルが行われた。
岡奈:ソラチエースのアイコンが大きくなっていたり、日本語のコピーが追加されていたり、少しずつ変化がありますね。SORACHI 1984のデザインって”がちゃがちゃ”していなくて好きです。
新井:最初は名前も違っていて「伝説のSORACHI ACE」でスタートしたんですよ。そしたら業界からはかなり反響があって、時代もあってかすぐ受け入れられたんですよね。その後もテストを重ねて、色んなお客様の意見だったりとかデータを参考にマイナーチェンジを繰り返して、今に至りますね。
SORACHI 1984の最新パッケージ。ホップをかたどるアイコンの中に、ソラチエースの「A」(エース)が浮かび上がるデザインになっている。
岡奈:やっぱりリサーチだったり試行錯誤されているんですね。冒頭でも話しましたけど、私は企画には凝らず、素の自分をそのまま届けたいので、他のYouTuberさんの動画や自分のチャンネルのデータを見ないようにしているんです。
動画内でも基本的に喋っていないんですよね。他のYouTuberの動画って常に時間を詰めて話したり、字幕をたくさん入れたりしているんですけど。ありのままの自分だから「喋らなくていいか!」って。
新井:本当に真逆ですね(笑)。天性のものと言うか、羨ましいです。ちなみにYouTubeの登録者数が一気に伸びたタイミングとかあったんですか?
岡奈:1年前ぐらいに、YouTubeのおすすめ欄で私の動画が掲載されるようになってからですかね。ありのままの生活を投げっぱなしにしていたら、逆にそれが刺さっちゃったみたいなんです。
新井:なかなか狙って出来ることじゃないですね(笑)。あと思っていたんですけど、岡奈さんの動画ってラジオ的な魅力がありますよね。良い意味で、流しっぱなしでちょうどいいというか。
岡奈:そうかもしれないです。あんまり話さずただただご飯食べているだけだから、10秒スキップしても風景が変わらないって言う(笑)。
新井:そこがやっぱり岡奈さんの動画の魅力ですよね。情報を詰め込んで、消費するための動画ではなくて、雰囲気も含めて“観ること”そのものを楽しむ動画というか。
SORACHI 1984も似たような価値があるかもしれないですね。一気に飲み干すようなビールではなくて、じっくりと味わいを楽しんでもらうビール。YouTube的に言うと”10秒スキップ”のビール”じゃないというか。
岡奈:”10秒スキップのビール”じゃない。そのままキャッチコピーとして使えそうですね(笑)
訪れる過渡期。”もがく両者、見据える此れから”
──両極端な道程ながら、各々の魅力が世に伝わり、順風満帆に見える両者。しかし、まだ”ここ”は通過点。ネクストステージに進もうとする両者は”産みの苦しみ”を迎えている真っ最中だった。両者は何を見据えているのか。
岡奈:ここまで順調に来たところもあるんですが、今もがいている時期だったりするんです。動画の投稿頻度をあまり気にしていなくて、そんなに動画を投稿してこなかったことが、今になって動画再生数に響いてきているという感じで。明確なこれからの設計図みたいなものがなくて、実は結構焦っていたりします(笑)。
新井:でも、そこが岡奈さんの強みでもありますよね。普通企業だったり、個人のYouTubeでも規模が大きくなっていくと、どうしても計画を立てると思うんです。けど、そこに縛られる”しんどさ”みたいなものもある。岡奈さんはそういった計画を持たずに結果が付いて来ているから、そのままで良いと思うんですよ。それは天性のもので、計画を持たないことが一種のスタイルになっていると思います。
岡奈:そう言っていただけると心強いです。SORACHI 1984は現在どんな時期なんですか?
新井:実はこちらも”産みの苦しみ”の時期に差し掛かっています。元々SORACHI 1984を知ってもらう接点としてイベントが多かったんです。実際に飲んでもらって「なんだこのビールは。飲んだことないぞ」という感じで認知が広がっていったんです。けど近年コロナ禍ということもあって、SORACHI 1984を知ってもらうタッチポイントが減ってしまって。
岡奈:そっか。ビールって社会の情勢とかにもかなり影響されるものなんですね。
新井:でも冒頭でも話しましたがどんな苦労がありながらも、”個性を貫いて”挑戦をしたい、新しいことをやってみたい人が”嗅ぎつけてくれる”ところがSORACHI 1984の魅力。だから今あるSORACHI 1984らしさを変えずに、伝え続けていれば、もっとたくさんの仲間に見つけてもらえると思うんです。
なので今後はそういった”挑戦する人”達と積極的にコラボをしたり、一緒に成長していけるような動きをしていきたいですね。
岡奈:素敵ですね!それこそSORACHI 1984専門のYouTubeチャンネルとかどうですか?”挑戦する人”との対談をたくさん投稿するようなチャンネルとか。
新井:それはいいですね。SORACHI 1984の魅力を伝えるのに、YouTubeはもってこいかもしれません。ちょっと本当に検討してみます。
岡奈:もしやることになったら、是非また呼んでください!私もチャンネルに呼ばれるように何かに”挑戦する”人間になっていますね(笑)。
新井:その時は是非お願いします。それこそ岡奈さんは何か新しいチャレンジを考えていたりするんですか?
岡奈:たった今思いつきましたけど、映像作品を撮ってみたいかも。元々映画が好きですし、中古のトイカメラみたいなもの買って、それで”私が良いなって思うもの”だけを集めたショートフィルムを作りたいですね!基本のスタンスは変わらないけど、岡奈なな子の一部分として。
新井:是非頑張ってください!それにしても今日は色々お話しできて良かったです。岡奈さんと対談してみて、個性を貫く大切さが再認識できました。
岡奈:こちらこそです!時代が移り変わっていき、これからYouTuber・ビールブランドとして変わっていくこともあるかと思いますが、「周りと違ったって大丈夫」という初心を忘れずに、お互い頑張りましょう。
──YouTuberとブリューイングデザイナー。まったく異なるように見える両者の対談は、”思いもよらない”共通項の発見と”次なるチャレンジ”への気付きで幕を閉じた。枠にはまらず、自身を大切にする。その結果、似た匂いを嗅ぎつけた同志が見つけてくれる。目まぐるしく情報が更新され続ける現代において”当たり前だけど、見落としがちな”、そんな初心を思い出させてくれる”対話劇”となった。
また、今回の対談を踏まえて、岡奈なな子氏にSORACHI 1984とのコラボ動画を制作いただいた。”ありのまま”の岡奈氏はどんな風にSORACHI 1984を表現するだろうか。是非チェックしてみてはいかがだろうか?
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対談者プロフィール
岡奈なな子 YouTuber
2017年よりYouTuberとしての活動を開始。チャンネル名は「岡奈なな子の日常short movie」。どこか昭和レトロな雰囲気漂う日常風景と、その時々に作りたい料理を作り、がつがつ頬張る自然体なスタイルが人気を集め、現在の登録者は約59万人。
新井健司 SORACHI 1984 ブリューイングデザイナー
サッポロビール株式会社に新卒で入社し、発酵・酵母関連の研究を担当。その後ドイツへ留学し、ミュンヘン工科大学 Weihenstephan 校で醸造技術を学ぶ。 留学から帰国後、新商品開発を担当し「SORACHI 1984」ブリューイングデザイナーとして、開発から宣伝までを一手に担当。