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ウイスキーに水を入れる派? それとも入れない派?

この伝統的な飲み方には、しっかりとした科学的根拠があるのです。

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レモンを飾ったグラスに入った氷とスコッチ。Viennetta / Shutterstock

ウイスキー愛好家は、あらゆることに強いこだわりがあることで知られています。テロワールの表現について延々と持論を展開し、冷却濾過したウイスキーを見下し、熟成期間と味のクオリティが比例する関係にあるかどうかについて熱い意見を戦わせます。文字通り、ウイスキーに関して議論されてきた事柄を挙げればきりがありません。

この傾向はテイスティングに関しても同様で、ウイスキーの香りを“開かせる”ために水を加えるべきか、もし水を加えるならどこの水を使うべきか、さらには水の純度といったディテールについても、愛好家の間でも意見が真っ二つに分かれています。

ウイスキーと水の関係は、あなたのグラスに注がれるずっと前の生産段階から始まっています。大麦を水に浸して発芽させること(大麦麦芽を使うウイスキーにとって、発酵前段階の重要なプロセスです)に始まり、麦芽をすりつぶすマッシング、発酵、アルコール度数を調整するプルーフィングまで、ウイスキー生産において高品質な水を使うことの重要性は火を見るよりも明らかです。蒸溜所がどこの水を使っているかが重要であることは周知の事実ですが、テイスティングの際に使う水の種類と量については見過ごされがちで、時に十分理解されていない場合もあります。

しかし、ウイスキーの研究が進むにつれて、水を加えるとフレーバープロファイルや個性をバランスよく理解できることがわかってきました。それでは、ウイスキーに水を加えるとグラスの中で何が起きるのか、化学的な観点から検証してみましょう。

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ウイスキーに水を加える科学的根拠

「ウイスキーは、アルコール分子、水分子、そしてさまざまなフレーバー化合物から構成されています」と、「ボウモア」のチーフブレンダーを務めるカラム・フレイザー氏は説明します。「しかし、水を足すとアルコール度数が変化し、化合物や分子の組成も相対的に変わるので、フレーバープロファイルも変化します」。

フレーバープロファイルとは、ウイスキーに含まれるフレーバー化合物によって決まる味の特徴で、置かれる条件によって変化する特性をもっています。このフレーバープロファイルに影響を与えるのが、濾過方法からカスクフィニッシュ(詰め替え熟成)に至る数々の要素です。

「水に対するウイスキーの溶解度は分子ごとに異なるので、水を加えると特定のフレーバー、中でもアルコール濃度が高い時は、それまで影に隠れていたフレーバーが表に出てきやすくなります」とフレイザー氏。要するに、ウイスキーを水で割るとアルコール濃度が変化し、特定のフレーバー化合物が水溶性から非水溶性に変わります。この非水溶性化合物に変化する過程を経ることで、フレーバーの1つとして感知できるようになるのです。

こうしたフレーバーの変化の主な原因は、エタノール分子(ウイスキーのアルコール濃度)と、それ以外の分子や水分子との関係性が変化するためです。エタノール分子は親水性のヒドロキシ基と疎水性のエチル基の2つの基を持つため、アルコール濃度が低いとエタノールはウイスキーの上面に集まることになります。

この上面部分では、疎水性の基が上向きになった状態のエタノール分子が安定したクラスターを形成しています。アルコール濃度が一定以上になると、水面のエタノール分子が飽和状態になり、クラスターに収まりきれなかった分子が沈んで非水溶性に変化するため、人間の舌では感じにくくなります。

ウイスキーに加える水の種類にこだわるべき理由

ウイスキーが好きな人でも、ここまで化学的な分析はちょっと退屈かもしれません。そんな時は、エタノール分子の再配列といった小難しいことではなく、実際に私たちはフレーバーをどのように感知しているのか見てみましょう。

水の種類によるウイスキーのフレーバーへの影響に限っていえば、ミネラルが多い水は避けたほうが無難です。「不純物が全く入っていない水を使うことが重要です。これは、蒸溜所、熟成庫、ブレンディングルームを通じて深められたウイスキーの個性を損なわないためです」とフレイザー氏はいいます。「ボウモアのブレンディングルームでは、樽に水を加える、あるいはサンプル用に希釈する必要がある場合には、事前に分析した水を使用しています」

ボウモアでは、テイスティング用の水を選定する際、その分析結果を重視していますが、同じ業界のプロでも、「ザ・ウイスキーエクスチェンジ」のヘッドバイヤーであるドーン・デイビス氏は、pH値だけに注目しているといいます。「純粋な水が条件ということであれば、天然水で十分です」と彼女はいいます。「ウイスキーの味に影響するのは、水の味よりもpH値です。もし、水に特徴的な味があれば、ウイスキーの味にも当然影響しますが、大量に使うわけではないので、それほど問題にならないはずです」

ちなみに水を追加するにはピペットがおすすめということですが、家庭にピペットがない場合は、水の入ったグラスにストローを差し込み、上部をつまんで水が落ちないようにしてウイスキーグラスまで運んで指を離せば、ピペットと同じ効果が得られます。

どんなウイスキーでも水を加えると美味しくなる?

テイスティング時に加える水は出来るだけ少量にするのが基本ですが、そもそも水を加えたほうが良いかどうかはウイスキーの熟成年数によります。「ボウモア12年など、現在も出回っている有名なウイスキーであれば、アルコール度数20%のサンプル(水割りによるテイスティングの業界平均値)を使って、ウイスキーにあるべき全ての特徴が揃っているか、あってはならない特徴がないかどうかを確認します」とフレイザー氏。「12年程度の若いウイスキーであれば、水を加えるとアルコール濃度が下がり、全てのフレーバーが開いてきます」

逆に、長期間の熟成サイクルを経た古いウイスキーは、そもそも水で割る必要もありませんが、もし水を加える場合には、木の香りが全面に出すぎないように気をつけつつ、長い時間をかけたフレーバーのニュアンスが存分に発揮されるよう、繊細な調整が必要になるといいます。「例えば52年間熟成したARC-52など、非常に長熟なウイスキーは、上質なオーク樽で長期間熟成したことによってアルコールの影響がまろやかになり、ぜいたくな熟成感が絡み合う複雑な魅力が花開いています。個人的には、このようなウイスキーに水を足すと、時間の流れが生み出したフレーバーの完璧なバランスが崩れてしまうと思います」

ウイスキーに加える水の量は?

数々の受賞歴を誇るウイスキーコンサルタントでブローカーのブレア・ボウマン氏は、テイスティングについて次のように説明します。「ウイスキーをストレートで(さらには樽熟成時の度数そのままで)飲むことをおすすめしています。それはウイスキーにもよりますし、ウイスキーを楽しみたいのか、評価したいのかによっても違ってきます。まずはストレートで、それから徐々に水を加えていきます。喉が焼けるようなアルコールの感覚がなくなるまで水を足すというのが、ウイスキーテスティングの大原則です。アルコール耐性は人によって違うので、必要な水の量も個々人で異なります。普段からアルコール濃度の低いワインやビールを飲んでいる人は、喉が焼ける感覚が消え、ウイスキーが開くまで水を加えるといいでしょう」

ウイスキーに加える水の量を変え、アルコール濃度と化学構造を徐々に変化させてテイスティングをすると、そのフレーバーやテクスチャーをより深く理解することができるといいます。また多くのテイスティング方法にいえることですが、評価には多少の主観が入るものです。

「結局のところ、ウイスキーに水を加えるべきかどうかは、それぞれのウイスキー、またそれを飲む一人一人の好みによって決まります。絶対的な正解といえる方法はありません。あなたがこのウイスキーにはこれがよいと感じればそれでいいのです」。

この記事はFood & Wineのタイラー・ジエリンスキが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされています。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまで。

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