世界で最も愛されているスコッチ「ザ・マッカラン」は、今なおその地位を守り続けています。

樽の上に置かれたウイスキーグラス  @Getty Images

ポケットに入れっぱなしにしていた20ドル札を30年後に見つけたとしても、その価値が額面の20ドルから大きく跳ね上がるということはありません。しかし、レア物のウイスキーとなると話は違います。1988年に6275ドル（約80万円）で購入したカスクに対して、30年後には130万ドル（約1億7000万円）の値がつくなんていうこともあるのです。

オークションサイト「Whisky Hammer」で、先日あるアメリカ人バイヤーにより129万5500ドルで落札された、1988年物の「ザ・マッカラン」のカスクは、オークションに出されたウイスキー樽として世界最高の落札額を記録しました。これ以前の最高記録は、つい昨年、オークションハウス「Bonhams」で57万2000ドルで落札された、同じく「ザ・マッカラン」で30年熟成され、その後シェリー樽に詰められたウイスキーでした。

落札額の記録を塗り替えた今回の話を一層興味深いものにしているのは、カスクがオークションに登場するまでの経緯です。1988年5月5日に樽詰めされたこのカスクをわずか5000ドル（現在のレートで約6275ドル＝約80万円）で手に入れた買い手は、その存在をすっかり忘れてしまっていたようです。しかし「ザ・マッカラン」から倉庫にカスクが30年以上保管されているという知らせを受けた瞬間、所有者の頭上にはドルマークが飛び交ったことでしょう。

「Whisky Hammer」によると、この374リットルのリフィルバットは、700mlのボトル534本分に匹敵します。ということは、「Bonhams」で落札されたウイスキーカスクのボトル1本あたりの最高額の記録も塗り替えることになるのです。「Bonhams」のカスクはこれより小さく、落札額は1本あたり2200ドル（約28万円）だったのに対し、今回のザ・マッカラン1988のカスクは、1本あたり2426ドル（約31万円）になります。

「このカスクが私どものオークションに出品された時、歴史を塗り替えるかもしれないことは分かっていました」と「Whisky Hammer」の創業者で常務取締役を務めるダニエル・ミルン氏は述べています。「これほど古く、質がよく、大きなカスクに遭遇するだけでも滅多にないことですが、さらに『ザ・マッカラン』で蒸留されたウイスキーということで世界的な注目が集まりました」

ちなみに、昨年10月に「VCL Vintners」で233万ドル（約2億6000万円）で落札されたマッカラン1991のカスクのNFTには、クリプトアーティストとして活躍するトレバー・ジョーンズ氏のデジタルアートつきでした。しかし、これが落札額にどれくらい影響したのかについては議論が分かれるところです。

いずれにせよ、今回のカスクの落札ニュースもまた、拡大を続けるレア物ウイスキー市場を牽引しているのは、ウイスキーボトル1本あたりの史上最高額を何度も塗り替えてきた「ザ・マッカラン」であるということを示しているといえるでしょう。

この記事はFood & Wine のマイク・ポメランツが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされています。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまで。