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「GOLD STAR」リニューアル記念企画 開発者インタビュー前編
開発担当者が改めて語る「GOLD STAR」にかけた想い
新ジャンルカテゴリーのビールテイスト飲料としてご愛顧いただいている「GOLD STAR」が2021年12月製造分から中味、パッケージともにさらに磨かれ、新たに生まれ変わりました。新商品の開発により集中するべく弊社の開発体制が変更になったことに伴い、今回のリニューアルでは、中味の開発からブランディングまで同一担当者が担う体制に変更となっています。GOLD STARの開発担当者と、それを引き継いだ現任のブランド担当者の2人が、改めて「GOLD STAR」という商品と、今回のリニューアルについて語ります。
前編である今回は、「GOLD STAR」の生みの親、新木絵理の登場です。
「GOLD STAR」開発担当 新木絵理
2013年サッポロビール株式会社に入社。
広島・岡山県にて3年間、スーパー・酒量販店の営業を経験した後、2016年春に新価値開発部第1新価値開発グループに着任。
現在までの約6年、ビールテイストの商品開発に従事。麦とホップブランドやGOLD STARの開発を担当してきた。
■サッポロビールだからこそできる「確かな美味さ」を
――新ジャンルのビールテイスト飲料としては「麦とホップ」という先行商品があるなか、新たに「GOLD STAR」を発売するに至った経緯を改めて教えてください。
新木絵理(以下、新木):ビールの代替として生まれた新ジャンルというカテゴリーは15年以上が経ちました。この間にお客様の価値観も変わってきています。当初はビールの代替品として「美味しくない」ものが当然ととらえられていましたが、商品が出そろうにつれ、全体のレベルが向上。美味しさや味わいだけでは差別化が難しい状況にまでなってきました。
――美味しくなったうえに多様化もしていますよね。
新木:そうですね。一方で、飲料だけでなく、お菓子などにしても、「美味しければなんでもいい」ではなく、美味しさへの確信があったうえで、「自分の好みにあったこれを選ぶ」、あるいは「企業が本気で取り組んでいる姿勢への共感から選ぶ」と言うように、お客様の選び方も時代と共に変わってきました。単なる美味しさよりも、ひとつうえの条件を重視する時代になってきたという実感も得ていたんです。
そこで、サッポロビールだからこそできる「本気のものづくり」や「確かな美味さ」を届けることが、「今の時代の新ジャンル」として大きく受け入れられるんじゃないかと思いました。
――そこで生まれたのが、“「黒ラベル」の麦芽と「ヱビス」のホップ”を一部使うというコンセプトなんですね。
新木:そうなのですが、実はそう簡単にはこのコンセプトにはたどり着けませんでした。「確かな美味さを届けたい」とか「「堂々と自信を持って買える新ジャンルを作りたい」という目標は決まっていましたし、ターゲット層も明確になってはいましたが、サッポロビールだからこそできるアイデアを生み出すのに、かなり苦戦しました。
■「GOLD STAR」を生んだサッポロビールの長い歴史
――コンセプトの候補はいくつもあったんですか?
新木:アイデアはたくさん出たのですが、「サッポロだからこそ」「サッポロならでは」の部分がどれも弱く感じられたんです。そこでサッポロビールの長い歴史に着目し、それをうまく転換できないかと考えたときに、「やっぱりサッポロといえば黒ラベルとヱビス」だよね、と。
――考えてみるとずいぶん大胆な発想ですよね。
新木:絶対にダメと言われると思ってました(笑)。でも、半ば勢いに任せて「それぞれの原料を使う」というコンセプトを立てたところ、上司に背中を押していただけて。逆に「本当にやるんですか?」と不安になりつつ具体的なレシピ作成に取りかかっていきました。
――新商品の開発に着手されてから、2大ブランドの原料を一部使うというコンセプトが生まれるまでにどれくらいの時間がかかりましたか?
新木:半年くらいかかりました。4~5ヶ月間はああでもない、こうでもないと悩んでましたね。実は「黒ラベルとヱビス」のコンセプトが生まれる前に、市場調査まで行った別のアイデアもあったのですが、それだとまだ弱いと感じられて、白紙に戻したこともあって……。
――「黒ラベル×ヱビス」というコンセプトはストーリー性と言い換えることもできると思いますが、こうした部分は「GOLD STAR」のヒットした要因として大きいでしょうか?
新木:ストーリー性というと少し大袈裟かもしれませんが、新ジャンルはどうしてもビールの代替として妥協で選ばれるものでした。そこに黒ラベルとヱビスという2つのブランドを持ち込むことで、本物がベースとして存在する、「間違いのない美味さ」を感じていただくことができたと思っています。
■「GOLD STAR」の開発は苦労の連続!?
――2つのブランドの原料を一部使うというコンセプトが決まってから開発はスムーズに進んだんですか?
新木:それがそこからがまた大変で。
中味の開発については、当社の歴代の新ジャンル商品とはまったく違う原料バランスのレシピに辿りついたので、全工場で生産前の補助試験が必要になったりと、さまざまな苦労がありました。
ネーミングに関しても「スターはつけたい」というところからはじまり、かなりの紆余曲折がありましたし、パッケージについても「星を大きく描く」ことだけ決めてはいましたが、サッポロらしさを感じさせるこのデザインに落ち着くまで、かなり迷走しましたね。
そもそもの部分になりますが、「黒ラベル」の麦芽と「ヱビス」のホップを訴求するからには、両方のブランド関係者にも納得していただく必要がありましたし、あらゆる面に大変さがありました(笑)。
――“「黒ラベル」のホップと、「ヱビス」の麦芽”という逆の組み合わせになる可能性はあったんですか?
新木:黒ラベルの魅力の中心にあるのが「旨さ長持ち麦芽」なので、ここは外せないと思っていました。だから原料の組み合わせだけはすぐに決まりました(笑)。
“2大ブランドを特徴付ける原材料を一部使用する大胆な発想が「GOLD STAR」を生んだ。”
■「GOLD STAR」の経験を活かして新商品開発に挑む
――「GOLD STAR」のような商品は1年に1度くらいの頻度でリニューアルが行われるわけですが、今回の2度目のリニューアルでは、中味の開発担当が、これまでブランドマネージャーを務めていた野並祐介へと引き継がれましたね。
新木:そうなんです。昨年実施された弊社の組織改変がその理由です。私が所属する新価値開発部という部署が新商品開発に特化した部署になったことに加え、ブランドマネージャーが中味の設計まで自ら携わり一気通貫してブランディングに取り組むべきだという2つの理由がありました。
――なるほど、ブランドマネージャーの野並と二人三脚で育ててきた「GOLD STAR」から離れるにあたって、どんな気持ちでしたか?
新木:私が手がけてきた商品のなかでも最大のヒット商品がこの「GOLD STAR」です。発売から1年程度で販売終了となる商品も多いなか、自分が作ったブランドのリニューアルにずっと携われることはやはり幸運なことですし、嬉しく、ありがたいと感じてきました。GOLD STARから離れると決まったときは、やはり少し寂しかったですね。
ただ、受け渡す相手がブランドマネージャーとしていっしょにやってきた野並ですし、技術系のスタッフも変わりません。なので、不安な要素はまったくなかったですね。
――今後はブランドを熟成させることはせずに、ひたすら新商品の開発に携わるわけですね。
新木:はい。ビールテイストに限らず、チューハイ、RTD(レディ・トゥ・ドリンク/開栓してすぐに飲める飲み物の総称)などを担当しています。
――「GOLD STAR」の経験が今の新商品開発に生きている部分はありますか?
新木:時代背景からターゲット層の絞り込み、それから、商品の特徴や戦略を営業にどう伝えるか、また、会社自体の戦略まで幅広く意識してつくった初めての商品が「GOLD STAR」でした。新商品を開発しているなかで、「GOLD STAR」の経験を経て視野が広がったことを実感しています。特に4~5年先までのロングスパンで戦略を描きながら、これからどういう商品やサービスの提案がお客様に求められるか、といった観点で開発に取り組めるようになりました。
新価値開発部は、お客様にきちんと寄り添った商品をつくるという方針で開発に挑んでいます。単に商品をつくって売るのではなく、お客様に寄り添ったストーリーや、お酒とともにある未来といったビジョンから提案していこうと考えています。「GOLD STAR」の経験を活かして、お客様にわくわくして頂ける商品をたくさん生み出せるよう、頑張っています。
(文=稲垣宗彦 写真=志田彩香)