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オクトーバーフェストで最高のビールを提供する秘策とは

Want an Oktoberfest Beer Fast and Cold? There’s an App for That

毎年秋にドイツ・ミュンヘンで開かれる「オクトーバーフェスト」。この世界的ビールフェスティバルで飲むのに「もっとも理想的なビールは何ですか?」とウーヴェ・ デイブル氏に質問を投げかけると、「しっかりと冷えているビール」との答えが返ってきました。

ミュンヘンに拠点を置く醸造所「パウラナー社」のエンジニアであり、長年に渡ってオクトーバーフェスト会場でのビールの流通を管理してきたデイブル氏は「手にした時に冷たいビール」の提供を可能にする技術的戦略を、まるでバレエの舞台を指揮するかのように綿密に練っている人物なのです。

伝統的なバイエルン地方の民族衣装である赤いベストにジーンズとスニーカーという出で立ちのデイブル氏は次のように話します。

「最後のひと口までよく冷えたビールでなければ、理想のビールとは言えません」

毎年恒例のオクトーバーフェストでは、オリンピック用のプール3つ分に匹敵する800万リットルという大量のビールが消費されます。2万8,000リットルを貯蔵することができるタンクからビールが注がれ、約600万人の酒客たちに消費されるのです。

ビールの温度を2℃以下に保ち、また炭酸ガスの含有量を1リットルあたり4.5グラムに維持するのが理想と説明するデイブル氏。このターゲットを達成するため「シーメンス」と連携し、IoTを活用することに決定したといいます。

ヨーロッパ最大級の大企業であり、ミュンヘンに拠点を置くシーメンスは今、自動化システムに特化した企業への転換を図っています。そして同社はパウラナーがオクトーバーフェスト会場で展開するパーティーテントを含む3つの大きなテントのビールの流通を管理しているのです。

通常、運搬用のトラックに搭載された3つのタンクを満杯にするに7時間ほどかかります。しかしシーメンスはパウラナーのためにタンクを一か所に集めて、90分程度でいっぱいにできるようインフラを整えました。このビールがタンクからパイプラインを通して各テントへと送られフェスティバル客のグラスに注がれるのです。

このオペレーションを管理するのがシーメンスのIoTソフトウェア「マインドスフィア」です。パウラナーのオペレーションルームには15インチのタブレットが据え付けられていて、デイブル氏はこのデバイスを使って全ビールステーションの状況をリアルタイムで監視します。

タブレットには、システムの全体図が表示されるようになっています。小さな木の樽のアイコンが笑っていれば、大量のビールが順調に供給されていることを意味します。デイブル氏が数値をチェックすると、ビールの温度は1.8℃、CO2圧力は1.14バールと申し分ないレベルで「以前よりもずっと安定した結果」と大変満足な様子です。

デイブル氏によると。この集中管理システムが導入される前は、ひとり一人のバーテンダーにビールの管理が一任されていたためビールのクオリティが安定しなかったといいます。またタンク中のビール量が減少するとビールの気が抜けないよう炭酸ガスボンベを追加して調整しなければいけないものの、そのやり方は人それぞれで、なかには何の対処もしないバーテンダーもいたとか……。

「しかしそれではビールの炭酸は完全に抜けてしまいます」とデイブル氏。

現在は、同じくミュンヘンに拠点を置く「リンデAG」が提供する液化炭酸ガスの大型タンクがフェスティバル会場に設置されていて、いつでもガス圧が一定に保たれるよう、タンクからビールが供給されるとシーメンスのソフトウェアが自動的に炭酸ガスを補充する方式を採っているといいます。

このシステムのおかげで1時間あたり1万2,000リットルものビールを提供することが可能になりました。しかしオクトーバーフェストを楽しみにしている酒豪がたくさん集まるフェスティバル初日の土曜日以外は、余りあるほどの供給キャパシティーだといいます。

パウラナーと共にこのプロジェクトを立ち上げた「シーメンス・デジタル・インダストリーズ」の営業部長、シュテファン・シャーペン氏によると、醸造所はビッグデータを活用することで需要を事前に予測できるようになると説明します。

オクトーバーフェスト会場での安定したビール供給の決め手となるのは温度。タンクにビールを入れ過ぎると、一日の終わりに大量のビールが残ってしまい、次の日までに温度が上がってしまいます。またビールがぬるければぬるいほどパイプラインを流れるスピードも遅くなるので、タンクからジョッキまでの移動時間にも影響が出てしまうといいます。

「そうなるとバーテンダーは1リットルあたり1.8秒ではなく2.5秒でビールを提供しなくてはならなくなるという問題が生じます」とシャーペン氏。

このビール供給システムに関連する全ての装置は、お祭り騒ぎの現場から遠く離れた、一般の人の目に触れないところに設置されています。酒に酔った人たちの多くは、ビールを運ぶパイプやセンサー、高圧ガスの緻密なネットワークの存在などもちろん知りませんし、気にも留めていないのです。

友人たちとボックス席に陣取って、レギュラーサイズの1リットルジョッキでビールを飲んでいたマリア・ラスプさんはミュンヘン生まれの21歳。毎年このフェスティバルに来ているといいます。

その彼女が絶対譲れない条件としてあげたのは「ビールが冷えている」こと。そして「きっちり1リットルの線まで注がれている」こと。

そして一番大きな条件はデイブル氏が語る内容と似ており「注文したらすぐにビールが出て来ること、これが重要です」と話しました。

この記事はBloombergのオリバー・ザッハガウ氏が執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願いいたします。

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