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台湾の歴史が詰まったソウルフード、牛肉麺

Taiwan’s Changing Tastes, in a Bowl

海外在住の台湾人にとって「牛肉麺(ニューローメン)」は故郷の味です。米ニューヨーク市の台湾料理店「886」のオーナーシェフ、エリック・スゼ氏は、この料理に思い焦がれてレストラン業界に身を投じたと言います。

「台北には文字通りどの町角にも必ず牛肉麺を出す店があります。そして全部とは言いませんがどの店もかなり美味しいのです」。

しかし、かつて自宅でこの料理をゼロから作ろうと試みたスゼ氏はその奥深さに直面することになりました。一見シンプルなようですが、牛すね肉を煮込んで作る素朴で味わい深いスープをトマトや台湾産の豆板醤で引き立てるこの麺料理には、中国本土と台湾の食文化が豊かにブレンドされています。しっかりとしたコクがありながらほっとする味は台湾中で愛されているだけでなく、スゼ氏のようなレストラン・オーナーたちもそれを海外で再現しようと研究に研究を重ねているのです。

今から60年ほど前、台湾では牛肉麺どころか牛肉さえほとんど食べられていませんでした。台湾の牛肉麺の物語は、ここ半世紀ほどの台湾料理全体の変化を暗示しているのです。1940年代後半に中国共産党に敗れた中国国民党は台湾に逃れ、戒厳令を敷きました。中華民国国軍の兵士や彼らと共に移住してきた人々によって中国全土から様々な食文化が台湾にもたらされました。小麦の麺や万頭が日常的に食されていた北部の食文化がその他の地域の食文化とも融合して今日の台湾料理が形作られたのです。

またこの食文化の融合と同時にもう一つの変化が起きました。それは、台湾では牛肉を食べることが何世紀の間タブーとされてきましたが、それが広く受け入れられるようになったことです。台湾人が牛肉を好むようになった理由の一つに、アメリカから輸入された牛肉の缶詰が地元軍隊で提供されていたことが指摘されています。

A Culinary History of Taipei」の著者、ケイティ・フィ・ウェン・ハン氏とスティーブン・クルック氏は次のように説明しています。「数世代に渡って全ての健康な男性に2年の兵役が課せられ、また軍で出されたものはどんなものでも食べなければなりませんでした。時には牛肉も出たので、どんな環境の家庭から来た人たちの多くも牛肉を食べることに次第に慣れていったのです」。また台湾政府も強靭で健康な体を作る食生活の一部として牛肉を推奨していました。この考え方は今でも根強く残っているようです。

「店に来る台湾人のお母さんは誰もが秘密のレシピを持っていて、私にこっそり教えたくてたまらない感じです」とニューヨーク市の牛肉麺専門店「ホー・フーズ 」のオーナーシェフ、リッチ・ホー氏は言います。「本当かどうかは分かりませんが“私の子どもたちは小さい頃からこれ(牛肉麺)を食べてバスケットボール選手になったのよ”というようなことをみんなが口にするのです」。

ご想像の通り牛肉麺を作るには数えきれないほどのレシピがあり、どれがベストかはもちろん主観的なものです。自分の母親のレシピがあれば文句なくそれが一番でしょう。今回は台北の有名料理店「ヨン・カン・ビーフ・ヌードル」の人気牛肉麺をベースにしたレシピをご紹介します。

Blanched baby bok choy and pickled Chinese greens add fresh flavor—and welcome pops of color—to the noodle soup.

スープを作る

シェフによってはスープに甘みを出すため、人参やリンゴを加える人もいます。また調理を簡略化するために骨なしの牛すね肉を使う人もいます(私のレシピ本「The Food of Taiwan」でも家庭で作る際のお薦めの調理法として紹介しています)。スパイスが利いている方が好きな人は豆板醤や唐辛子などを入れますが、辛味を全く入れないレシピが大半です。このレシピでは牛すね肉を茹でてひと口サイズに切ってから焼き目をつけています。

香味野菜を炒めて香りを出す

次は香味野菜と調味料です。牛肉を脇に寄せて、しょうが、にんにく、唐辛子を香りが出るまで炒めます。それから酒、醤油、黒酢、砂糖を加えます。炒めることで、牛肉麺に欠かせない味わいと色を出すことができます。

生のトマトを加える

一般的にトマトはスープに欠かせない食材とされています。ニューヨークのアメリカ風台湾料理店「ウィン・ソン」のシェフ兼共同オーナーのトリッグ・ブラウン氏は、スープを作る最初の段階でトマトを加え、形がなくなるまでよく煮込むのが良いと言います。

「トマトには自然に生成されるMSG(グルタミン酸ナトリウム)がたくさん含まれているので、味に深みとうまみが出ます」とブラウン氏。

この段階で玉ねぎ、八角、粒胡椒などのスパイスを鍋に加えます。

肉を「QQ」にする?

典型的な台湾牛肉麺には牛すね肉が入っています。これを煮込むとコラーゲンたっぷりのプルプルした筋が入った歯ごたえ抜群の肉の塊になります。台湾ではタピオカのようにモチモチした食感を「Q」とか「QQ」と呼びますが、この食感が大好きな人にとってはたまらなく美味しく感じられます。ブラウン氏やスゼ氏がよくオックステールをスープに加えるのはこのためです。しかしこれは故郷の牛肉麺に特別な想いを持っている人でなければ、それほど重要な要素ではありません。

牛すね肉についてホー氏は次のように説明します。「牛すね肉は脂っこくないのにスープを滑らかで味わい深くしてくれます。筋っぽさはいらないけれど肉の歯ごたえは欲しいという方は塊肉で代用できます。私にとっては筋の部分は欠かせませんが」。


台湾牛肉麺のレシピ

このレシピは台北の有名料理店「ヨン・カン・ビーフ・ヌードル」の牛肉麺をベースにしています。

時間:3時間45分

材料(6~10人分)

  • 骨なし牛すね肉ロングカット 3切(約1キロ)
  • キャノーラ油 大さじ2
  • しょうが 長さ約5cm(皮をむいて約6cmにスライス)
  • にんにく 10かけ(潰しておく) 
  • 唐辛子 3つ
  • 酒 1/4カップ
  • 濃口醬油 大さじ2
  • 黒酢 大さじ1
  • 砂糖 小さじ1
  • 玉ねぎ 中2個(4分の1にカット)
  • トマト 3個(4分の1にカット)
  • 八角 4個
  • 粒胡椒 大さじ1
  • 塩(コーシャー・ソルト)
  • ベビー青梗菜 6 本
  • 細い卵麺 約900g
  • 千切りしたからし菜の漬物(飾りに使う)

調理法

  1. 大きな鍋に牛すね肉を入れ、肉が隠れるくらいまで水を入れます。沸騰させてさらに10分間煮立たせます。お湯を切って30分ほど冷ましてから約1cm幅にスライスします。
  2. 同じ鍋に油を入れ中火で加熱します。スライスした肉を加え、両面に焼き色がつくまで8分ほど焼きます。鍋の端に肉を寄せ、 しょうが、にんにく、唐辛子を真ん中に入れ、香りが出るまで2分ほど炒めます。酒、醤油、黒酢、砂糖を入れて1分ほど加熱します。玉ねぎ、トマト、八角、粒胡椒、塩大さじ2、水8カップを入れ、沸騰したら火を落とし、蓋をしたまま1時間ほどぐつぐつと煮込みます。その後、火を消して蓋を開けずに1時間以上置きます。
  3. 鍋の蓋を開け、肉を中位のボウルに入れておきます。スープを濾し、スパイスなどの固形物は捨てます。肉とスープをもう一度鍋に戻して中火で再加熱します。
  4. 食べる直前に大きな鍋一杯に水と塩を入れて沸騰させます。ベビー青梗菜を入れ、ちょうどよい柔らかさになるまで2分ほど茹で、ボウルに移します。次は麺を加え、柔らかくなるまで4分ほど茹でます。麺のお湯を切って人数分に分け、ベビー青梗菜、肉、スープを入れ、からし菜の漬物を飾って完成です。

この記事はSaveurのキャシー・アーウェイによって書かれたもので、NewsCredパブリッシャーネットワークによってライセンスされています。ライセンスに関する質問については、legal@newscred.comまでお問い合わせください。

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