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“つかず離れず、心地よい都会の距離感の食堂” 街でヨリミチ in 恵比寿 vol.4 ― 恵比寿じもと食堂 末岡真理子さん&元茂ふみえさん
誰もが一度は訪れたことがあるであろう街、東京・恵比寿。カフェやレストランなど新旧様々な飲食店が立ち並び、食やショッピングのスポットとして認知されている。しかし、サッポロビールと共に歩んできた歴史があるこの街の魅力を、私たちはまだ全て知らない。そんなメインストリームから1本曲がって”寄り道”をして、1歩踏み込んで”より未知”な魅力を発見したい。本企画では様々なジャンルで、恵比寿に貢献する人物にお話を伺い、恵比寿の”ヨリミチ”な魅力を語ってもらう。
連載4回目は、地元での関わりと食事を提供する「恵比寿じもと食堂」のメンバーである末岡真理子さんと元茂ふみえさんにインタビューを実施。これまで延べ6000人以上の親子や地域の人たちに料理と時間を共有してきたお二人に、CHEER UP!のメディア担当でもある杉浦若奈が、「地元の関わり」というテーマで、”ヨリミチ”な魅力についてお伺いした。
※恵比寿じもと食堂では、お酒の提供は実施しておりません。恵比寿の魅力を探るため、特別にインタビューさせていただきました。【この連載の他の記事が気になる方は、こちら。】
必要であれば帰れる場所として、地域の繋がりを増やしたくて
杉浦:はじめに、お二人の簡単なプロフィールを教えてください。
末岡さん:もともとは渋谷区教育委員会から委嘱を受けて、渋谷区内の区立小・中学校と、そこに併設の「放課後クラブ」の総合コーディネーターをしていました。2016年に恵比寿じもと食堂を立ち上げ、2022年から認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえで働きながら、自身のこども食堂の運営も続けています。
元茂さん:私も同じく恵比寿じもと食堂のメンバーで、初期から参加しています。恵比寿に住んで長いのですが、食堂立ち上げの記事を新聞で見たことをきっかけに、大好きなお料理で役に立つならと参加させていただいています。本職は企画会社の代表としてアパレルブランドのニットデザイナーをしています。
杉浦:恵比寿じもと食堂を立ち上げた末岡さんですが、なぜ恵比寿で始めようと考えたのでしょうか?
末岡さん:そもそも子どもが一人でも行ける低額・無料の食堂、「こども食堂」という市民活動が2012年から盛り上がりはじめていました。その当時、私は恵比寿に住んで子育てをしていて、子育ての悩みを抱えている人が多いことに気づき、恵比寿にも「こども食堂」のような活動が必要だと感じました。そして都会だからこそ、地域コミュニティが希薄化してしまっているという部分も解決できないかと考えたんです。
杉浦:そうして末岡さんがスタートさせた恵比寿じもと食堂ですが、どんな活動をされているのでしょうか?
末岡さん:子どもが一人でも行ける食堂という建付けですが、「どんな人でも、そこが必要ならば来られる場所」というのが、私たち恵比寿じもと食堂が提供していることです。支援者と被支援者という関係になるのではなく、“ただただ料理を作りたい人”や“何かをしたい人”、“ごはんを食べたい人”が自然と集まるような場所でありたいなと思っています。
「あまり大きなことをやろうとしない」というのが方針でもあります。大仰な何かではなく、ご近所付き合いの力で悩みや課題を解決するといいますか。できる人が、できることを持ち寄って楽しくやっているうちに、なんとなく誰かの役に立ったり、支えになれればいいなと。だから私たちは“ボランティア”という言葉もあえて使ってないんです。
元茂さん:私は子供も持たずに仕事ばかりしてきましたが、そういう人間でも参加できて、地域の子供達や親御さんが喜んで来てくれる場所があるなんて素敵なことだなと思います。作る人も食べる人も楽しめる場を作っている感じですね。
杉浦:実際にお二人はどのような役回りで動かれているのでしょうか?
末岡さん:私は予約を取ったり、食堂に来る人とコミュニケーションをとったり、SNSでの発信をするなど、いわゆる“関わり”を担当しています。
元茂さん:私はメニュー決めと食材の調達、そして料理の段取りですね。手伝ってくれるみんなに指示を出す“段取り係”です。単純に好きなんですよ、料理を作るのが。後片付けは大の苦手なんですけど(笑)。
でも恵比寿じもと食堂には、後片付けが得意なメンバーがいたり、会計に強いメンバーがいたり、さまざまな得意分野を持っている人が集まっているんです。お互いの苦手分野を得意分野で補い合って、楽しく活動していますね。
ラベリングしないことで、広がる人の輪
杉浦:恵比寿じもと食堂ができる以前、恵比寿に“地元の関わりを持てる場”はあったのでしょうか?
末岡さん:お祭りだったり、恵比寿の地元町会の繋がりはあったと思います。けれど地縁とも町会とも無縁な、私のような“恵比寿に越してきて間もない人”が関わりを持つ場は、あまりなかったように思います。
杉浦:恵比寿は新しくやってくる人が多い街なのに、その人たちも巻き込むような“つながり”は希薄だったのですね。そういった状況で恵比寿じもと食堂を作り、街に何らかの変化を与えたいと考えていましたか?
末岡さん:街に変化をということまでは考えていませんでしたが、この街に暮らす人や関わる人にとっての一種の“セーフティーネット”になれたらと考えていました。近年ご近所付き合いなどが希薄化していくなか、家庭や学校などだけではケアしきれない、公的なセーフティーネットに引っ掛からない子どもや人がいると思うんです。恵比寿じもと食堂から地域の関わりが増えて、そういった人々の助けになれたらと、所得や居住地域などで“ラベリングしない”というスタンスを大事にしています。
一方で、みなさんと深い関係性はつくらないようにしています。近しい間柄になることのよさもありますが、求める距離感は大人も子どもも本当に人それぞれなので、こちらからあえて距離を縮めるようなことはしないようにしています。お手伝いに来てくれるメンバーも同様で、ここに集まればお互いの背景をあまり知らなくても繋がっている感覚があります。
杉浦:末岡さんならではの素敵なスタンスですね。“都会での人との関わり方”ともどこか似ていて、恵比寿じもと食堂にぴったりです。食堂がオープンしたときの反響はいかがだったでしょうか?
末岡さん:プレオープンの日から大勢の方が食堂に来てくれました。子育てにおいて“気楽に頼れる場所”を、多くの人が求めていたのかもしれません。こうした活動を続けたことで、地元の方々との間で関わり増えているようです。食堂で知り合った人同士がテーブル越しに「先日、恵比寿のあそこで会いましたよね!」とお話しされていたり、お子さんを預けあったりもして。いわゆる“ご近所付き合い”が生まれるようになりましたね。
偶発的な出会いが多いサードプレイス的な街、恵比寿
杉浦:食堂を越えた関わりも育む、じもと食堂ですがどんな方がよく来られるのでしょうか?
末岡さん:さまざまな方が来られますが、小学校入学前の子が多いですね。また、この8年間でお父さんと来られる割合がかなり増えています。ファミリーでいらっしゃる場合もありますし、お父さんとお子さんだけでいらっしゃるケースも。
元茂さん:あとは、恵比寿に住んでいるアーティストの方が来てくれたりしますよね。お呼びしたとかではなく、自然と食堂に顔を出してくれる方がいたりして、ちょっとしたイベントになったりします。そこは恵比寿という街ならでは、という印象があります。
末岡さん:そうですね。そもそも恵比寿って、サードプレイス的な魅力がある街だと思うんです。普段住んでいるというよりは、ごはんや買い物をしにくる外からの人も多いですし。住んでいる人もそうでない人も入り混じって、 “偶発的な出会いが多い”のが魅力だと思います。
実際に食堂に自然と来てくれるアーティストの方々との出会いも偶発的ですし、そういった方が学校教育だけでは教えられないことを、子どもたちに教えてくれたりもします。
元茂さん:それこそ、サッポログループの社員さんも顔を出してくれたことがありましたよね。
末岡さん:そうでしたね。食堂用に水やお茶などの飲料を支援してくれたり、一緒に餃子を包んでくれたり、とても助かりました。
杉浦:そんなお付き合いがあったんですね。それこそ恵比寿にサッポロビールの本社があったり、ヱビスビールを販売しているなど縁もあって、恵比寿と共に歩んでいくことを大事にしているんです。ちなみにサッポロビールの商品は、普段お飲みになったりしますか?
元茂さん:お酒が好きで飲食店でよく飲むんですけど、プレミアム樽生ビールト 白穂乃香(しろほのか)は大好きなビールですね。それこそ恵比寿に住んでいる身からすると、恵比寿ガーデンプレイスの存在も大きくて、地元民にとって素敵な場所とお酒を提供してくれて大変感謝しています。
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杉浦:“地元の関わり”という観点で、恵比寿は今後どう変わっていって欲しいですか?
末岡さん:今後の予測はなかなかできませんが、個人と個人の関わりや繋がりがもっと増えてほしいなと思います。地域や街も、分解していくと“人”になります。大きな会社、それこそサッポロビールさんだけを見ると、大きすぎて人の顔をイメージしにくいのですが、分解していけば、そこには杉浦さんという個人がいらっしゃると思うんです。
そのような普段は見えなかったり、関われなかったりする人との繋がりは、組織と組織だと生まれにくいものです。しかし人と人、個人商店とお客さんというようなつながりが戻れば、社会も恵比寿の街も今後、さらに良い方向へ向かっていくのではないでしょうか。
杉浦:本当にその通りですね。今後もっと人の繋がりが増えることを祈っております。最後の質問になりますが、おふたりにとって「恵比寿」とはどんな存在でしょうか?
末岡:ひらがなの「じもと」です。恵比寿じもと食堂の名前にもある、ひらがなで書く「じもと」はそこで生まれ育ったかとは関係のないものだと私は思っています。その街が大好きで、「ただいま」と思える場所であれば、そこはその人にとっての「じもと」になったらいいなと思っているし、私にとっても恵比寿は「じもと」です。
元茂:「27年間ありがとう そしてこれからもよろしくね!」です。27年間、東京での暮らしのほとんどを恵比寿で暮らしてきて、私にとっての暮らしのベースでした。主人と犬たちと、恵比寿での暮らしは幸せだったと思えます。 これからの私も恵比寿と共にゆっくり成長していきたいです。
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