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本場が認めた日本人シェフたちの奮闘記
パテ・クルート世界大会の舞台裏【前編】
2021年11月29日、フランス・リヨンの「アベイ・ポール・ボキューズ」で開催された「2021年パテ・クルート世界選手権決勝大会」では、2019年の東急ホテル 塚本治シェフに続き、アジア代表の東京・田園調布「メッツゲライササキ」福田耕平シェフが優勝、東京・湯島「アターブル」中秋陽一シェフが世界3位に輝くという快挙を成し遂げました。
フランスでは、ワインのお供としても定番の「パテ・クルート」。二人の日本人シェフがトップクラスに輝くまでの道のりをうかがいました。前編では、まず、「パテ・クルート」がどんな料理なのかを紹介します。
「パテ・クルート」はお菓子の技術も必要って本当!?
古くからある料理の難しさと魅力とは?
「パテ・クルート」という言葉に聞き覚えがなくても、肉料理の「パテ」なら食べたことがあるという方も多いのでは。今回、二人の日本人シェフが挑戦したフランス料理「パテ・クルート」(パテ・アン・クルートともいう)は、「パテを生地で包んだもの」という意味。中世には多くの種類が作られていたともいわれる伝統的なフランス料理です。こんがり焼けたパテ・クルートにナイフを入れると現れるのは、サクッとしたパイ生地に包まれた、フォアグラや鴨、ホロホロ鳥、トリュフ、野菜などからなる、しっとりしたファルス(詰め物)。
お気づきのように、パテ・クルートの構成は、大きく分けてパイ生地と詰め物とシンプルですが、実はこれがなかなかの曲者。外側のパイ生地はしっかり焼き込んでサクサクした食感に仕上げる一方で、中の詰め物はなめらかにしっとりさせるため、火を入れ過ぎないよう細心の注意を払わねばなりません。つまり、パティシエに要求されるような難易度の高いパイ生地を作る力と、肉の火入れをコントロールする力の両方が求められる、シェフにとっては難しくも腕のみせどころの多い料理といえます。
また、詰め物の組み合わせもバリエーション豊か。どんな素材をどのように詰めるか、味のバランスは?など、日本人がおにぎりの具材のパターンをいろいろと思いつくように、パテ・クルートの詰め物の内容も味わいも、手がけるシェフによって様々です。
さらに、パテ・クルートの形にご注目。パイ生地の上の部分に、まるで短い煙突のような円筒の穴が開いているのが見えますが、ここからコンソメのジュレを注ぐのです。そのため、フランス料理の命ともいえる基本のコンソメを作る力も問われます。日本料理でいえば、いい出汁がひけるかどうか。このように、フランス料理に必要な総合力の集合体ともいえる「パテ・クルート」。本国はもちろんのこと、世界中からフランス料理の雄が集まる世界大会で、日本人シェフが優勝と3位に輝いた価値がおわかりいただけたでしょうか。
こちらは“ワインオープナー”の記事です。