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「GOLD STAR」開発担当とブランドマネージャーが商品開発の裏側を語る 2人がリニューアルにかけた想いとは?【後編】

 2020年2月4日に発売された「GOLD STAR」は、わずか1ヶ月でその売り上げが100万ケースを突破。おかげさまで、とても高い評価をいただくことができました。その大ヒット商品が、2020年12月製造品より順次、新たなものへと切り替わり、リニューアルを果たしました。

 記録的大ヒットとなった商品開発の裏側には、いったいどんな“想い”があったのか?

 開発担当者とブランドマネージャーの2人へのインタビューを、前後編の2回に渡っておとどけします。今回は「味を言葉で表現しない」といったセールスのコンセプトや、「開発はたった4人で行っている」など、ふだんは知り得ない興味深いエピソードが続きます。お楽しみください。

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「GOLD STAR」開発担当   新木絵理(あらきえり)
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「GOLD STAR」ブランドマネージャー   野並祐介(のなみゆうすけ)

■味を表現せずに「GOLD STAR」の魅力を伝える

――新ジャンルではカロリーオフなど機能性を持たせた商品も増えています。それらに比べ、王道的においしさを追求していく「GOLD STAR」のような商品のほうが開発に大変な部分もあるのでしょうか?

新木:わかりやすい「差」を見せることが難しいのは確かですね。「何が違うのか」「なぜこの商品を選ぶのか」という購入の動機を生み出す商品作りをしなければなりません。あくまでも嗜好品なので、機械のようにスペックを向上させれば優れた商品に見えるというものとは違いますから。

――評価が感性で左右されますからね。

野並:スタンダードな商品が数あるなかで、「GOLD STAR」のよさを多くの人に感じてもらうのは難しい挑戦でした。
たとえば、味わいひとつにしても、人によってそれぞれ感じ方は違いますよね。濃い・薄い、キレやコクがあるというように味を定義してしまうと、お客様を絞ることになってしまいます。そこで、商品の特長を語るのに、「味を表現しない」と決めていたのですが、これが難しかったですね。

新木:こちらが「こういう味です」と伝えるのではなく、「お客様一人一人にとってのうまさを感じてもらいたい」と思っていたんです。

――それはビールテイストのマーケティングでは特異なケースではないですか?

野並:そうですね。でもけっきょくはお客様に商品を理解してもらうために、どんな特長を持っているか、言葉で述べないとなりません。そこで、「GOLD STAR」では、商品の特長を「“力強く飲み飽きない”うまさ」と表現しています。
でも営業を担当する部署としては、商品を仕入れてくれるお店に対して「~味です」と表現したくなりますし、お店の側からもそういう答えを求められるんですよね。

新木:社内でもいろんな人に「どういう味ですか?」って聞かれますね(笑)。

野並:でもビールテイストを飲んだときに、多くの人は「爽快でうまい」とは表現せず、「うまい」としか言わないですよね。ですから、営業的な目線と、お客様の目線とで、言葉を使い分けるなどの工夫をしていました。

――味を言葉で表現しないというのはユニークですね。でも、作り手として共通の目的や認識を持つためには、どうしても言語での具体的な表現は必要になると思います。今回のリニューアルでは、どのようにその意識を共有したのでしょうか?

野並:先ほども言いましたが(前編参照)、今回のリニューアルでは「黒ラベル」と「ヱビス」の魅力を併せ持つことをより強く伝えていくことが大きなテーマとしてありました。
世の中にいろんな商品があるなかで、「GOLD STAR」を含めたサッポロビールの商品には、もの作りへのこだわりも含め、歴史やブランドに基づいたしっかりとした土台や背景が必ず存在します。そこが「サッポロビールらしさ」だと思っています。
「GOLD STAR」の場合はその土台や背景にあたるものが「黒ラベル」であり、「ヱビス」だったわけです。ここがまだまだ伝わりきっていないことが課題としてあったので、リニューアルではそこを強く伝えていきたいとテーマに掲げていました。

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味の感じ方はひとりひとり違っている。具体的な表現を使うとその時点でお客様のなかに味のイメージが生まれ、手に取っていただけない可能性が生まれてしまう。とりあえず手に取っていただき、味わってもらう。そのために、「味を表現しない」と決めた。

■「GOLD STAR」の輝きが二つのブランドに埋もれないために

――「GOLD STAR」が持つ「黒ラベル」と「ヱビス」という背景を伝えるため、具体的にはどんなことをされたのでしょう?

野並:ブランド担当として、パッケージやイメージグラフィックといったビジュアル面の見直しなどを行ってきました。
一方で、「サッポロらしさ」にこだわるといっても、メーカーのエゴになってはいけないという認識もありました。あくまでもお客様から見た「おいしさ」や「欲しくなる商品像」を追求しつつ、「黒ラベル」と「ヱビス」という要素を強く打ち出すことを心がけています。

――サッポロとヱビス、ひとつの会社のなかに実質的に二つの会社が入っていて、「GOLD STAR」では両社のいいとこ取りができたというのは、とても戦略的ですし、贅沢な話ですよね。

新木:ほかの会社にはできないことですね。

――「黒ラベル」と「ヱビス」という2つのブランドを並べたときに、気をつけた部分はありますか?

野並:「黒ラベル」「ヱビス」と「GOLD STAR」のあいだで打ち消しあってしまうことは避けたいという思いがありました。「GOLD STAR」という商品に二つのブランドを背負わせようとしたときに、けっきょく「GOLD STAR」ではなく、「黒ラベル」と「ヱビス」の広告になってしまっては失敗です。それを恐れて議論を重ねました。
特に新発売のときには「GOLD STAR」という商品はまったくの無名です。それと「黒ラベル」「ヱビス」の名前をどうバランスさせるか、新発売のときには特に慎重に考えました。

■たった4人のチームで開発した「GOLD STAR」

――お二人はブランドマネージャーと開発担当ですが、新商品を開発するとなった当初、どちらの主導で動き出したのでしょうか?

新木:「GOLD STAR」のようにまったく新しい商品の場合は、開発担当が主導します。コンセプトから中味、パッケージ、ネーミングを開発担当が考え、商品として大半の仕様が定まった時点でブランド担当者が決まります。
そこからはいっしょに商品の魅力をどうお客様に伝えていくかなどを決めていきます。

――ちなみに開発担当とブランドマネージャーはそれぞれひとりで担当しているんですか?

野並:それぞれひとりでやっています。

新木:ほかに中味を開発する技術担当とデザイナーがいるので、チームとしては4人ですね。イメージとしては、設計図を描く人、中味を実際に醸造する人、パッケージを作る人、売り方を決める人、といった感じでしょうか。

野並:こうした体制はメーカーによっても大きく違う部分だと思います。

――ということは、「GOLD STAR」の開発やブランドマネージメントは「私がやった」と断言できるわけですね。それぞれ何人か担当者がいるものと思っていました。そうすると、商品がヒットするかどうかの責任は重大ですね。リニューアルについての手応えはどうでしょう?

野並:リニューアルの反応はすごくいいです。
新商品に比べて2年目の商品はなかなか取り扱っていただくのが難しいのが現実です。しかし、「GOLD STAR」という商品自体がヒットしたことと、それをよりよく見せていくという方向性も含めて高い評価をいただけています。
そもそも新ジャンルの商品は発売から1年を経たずして販売を終了してしまうものもあって、2年目のリニューアルを大々的にアピールできること自体、あまり多くはないんです。
僕も以前は開発担当をしていたのでわかるのですが、そもそも開発担当が作ったものすべてが発売されるわけではありません。世の中に出ることなく終わるものも多く、発売できたうえにTVCMまで展開して、大々的に売ってもらえるチャンスってあまりないんです。

新木:それだけ多くのお客様に支持していただけたということですから、とてもありがたく思っています。

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開発担当の新木は言ってみれば新商品の「設計図を描く人」。新木の舌とセンスが「GOLD STAR」を生み出した。
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サッポロビール北海道工場の外観。新木らの手によって最終的な製品仕様が決定した「GOLD STAR」は、サッポロビールが持つ全国の工場で生産、出荷される。

■「これでいい」が「これがいい」に変わる

――リニューアルをはたした「GOLD STAR」ですが、それにあたってお客様に向けたメッセージを聞かせてください。

新木:私はこれまでも新ジャンルの商品を担当する機会が多くありました。その経験から言うと、どんな商品であっても、新ジャンルを手にするお客様の心のどこかに「本当はビールが飲みたいんだけれど……」という思いがほんの少し存在しているんです。
でも、そういった複雑な思いを持ちながらも、自分が作った商品に魅力を感じて手に取っていただける。開発する側として、そんなところに新ジャンルの商品をお届けするやりがいを感じています。お客様の複雑な胸中に、飲んだときの感動をどう響かせるかが腕の見せ所となるわけです。
今回さらに進化した「GOLD STAR」は、今まで新ジャンルをお飲みになるときに「ビールが飲みたいけどこれでいいや」と思われていたお客様にこそ、ぜひ飲んでいただきたい商品です。これはサッポロビールが本気で作った新ジャンルです。きっと「これでいい」が「これがいい」に変わっていくと信じています。
「黒ラベル」と「ヱビス」という2つのバックボーンを背負いつつ、しかもそれを新ジャンルで実現した「GOLD STAR」の贅沢なおいしさ。これを楽しんでいただけたらうれしいですね。

――「これでいい」が「これがいい」に変わる、というのは素敵な表現ですね。

新木:実は「GOLD STAR」を発売したあとに、お客様からいただいた言葉なんです。「今まで“これでいい”と思って選んでいたけど、初めて“これがいい”と思えました」という感想をInstagramで見つけたんです。
新ジャンルをずっと担当してきた開発者として、この言葉は非常に大きな喜びとなりました。以来、「これがいい」と言っていただけるお客様が、ひとりでも増えてくれたらと思って開発を行っています。

――ブランドマネージャーとしてはいかがですか?

野並:「GOLD STAR」を飲むことが明日への活力につながればいいですね。
ブランドマネージメントをするにあたって、「誰に飲んで欲しいか」とお客様をイメージしたときに、自分と近いかたがターゲットになると思ったんです。30代ぐらいの人が仕事で揉まれて1日を終えるときに、「なんとか明日も頑張ってやっていこう」と思いながら手にしていただく、そんなイメージですね。
「黒ラベル」でも「ヱビス」でもない、それこそ「GOLD STAR」だからと選ぶ。飲んでオフになるのではなく、「また明日頑張ろう」という力になったと思える。
リニューアルされた「GOLD STAR」はそういう商品でありたいし、ブランドとしてそういう風に育てて行きたいと思っています。

――週末の特別感のあるときに飲みのではなく、平日にこそ飲んで欲しいということですね。新ジャンルは飲食店で飲むものではありませんし、確かに、平日に家で楽しむ飲み物ですよね。

新木:そうなんです。仕事からの帰り道、「何を飲むか」と考えたときに、お店で積極的に手に取ってもらえる商品になって欲しい。これが開発担当者としての今の気持ちです。

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新木がいくら美味しい商品を開発したとしても、それがヒットするとは限らない。お客様に店頭で実際に手に取っていただき、その美味しさを実感してもらう。そのためのブランドイメージ構築が、野並の仕事だ。
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「GOLD STAR」開発担当 新木絵理(あらきえり・左)
●プロフィール
2013年サッポロビール株式会社に入社。
広島・岡山県にて3年間、スーパー・酒量販店の営業を経験した後、2016年春に新価値開発部第1新価値開発グループに着任。
現在までの約4年半、ビールテイストの商品開発に従事。麦とホップブランドやGOLD STARの開発を担当してきた。

「GOLD STAR」ブランドマネージャー 野並祐介(のなみゆうすけ・右)
●プロフィール
2008年サッポロビール株式会社に入社。
サッポロビールで2年半、営業を経験した後、サッポログループでポテトチップスを製造・販売する会社に出向。
2013年新価値開発部に着任し6年間ビールテイスト・RTDの商品開発に従事。黒ラベルブランドやレモン・ザ・リッチの開発を担当。
2019年から現・ビール&RTD事業部に着任しGOLD STARブランドを担当している。

(文=稲垣宗彦 写真=志田彩香)

 → GOLD STAR ブランドサイト

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