CHEER UP! 毎日の“ワクワク”した暮らしを“応援”するポータルメディア

閉じる
  1. HOME
  2. 知る
  3. 今風にいえば「愛されキャラ」 正しくは「人徳者」 個性を生かして飛躍する若き選手会長

CATEGORY : 知る

今風にいえば「愛されキャラ」 正しくは「人徳者」 個性を生かして飛躍する若き選手会長

時松隆光

サッポロビールは2018年、プロゴルファーの時松隆光さんとスポンサーシップ契約を結びました。ユニホームの右袖にロゴ、帽子のクリップマーカーが目印です。時松プロといえば、希少なベースボールグリップや、幼い頃の心臓疾患から健康維持のためにゴルフを始めたことなど、ゴルフファンの中では広く知られています。

1993年生まれ。福岡県出身。プロ8年目。ツアー優勝3勝。愛称は本名の源蔵から「ゲンちゃん」。

19年は勝利こそありませんでしたが、安定した成績で賞金ランク13位に。

今季から選手会長として男子ツアーを牽引しています。

Q 新型コロナウイルスの影響によって、未だ国内開幕時期が不透明な男子ツアー。そんな非常事態の年に、

時松プロは新選手会長(任期2年)に抜擢されました。他の競技が段階的に緩和されている中で、なぜ開催に踏み切れないのでしょうか?

開幕戦は4月の予定でしたが、その時期、国内でコロナ感染者が急増しました。日本ゴルフツアー機構と主催者様との入念な話し合いがなされ、ぞくぞくと中止が決まっていった。選手会長だからといって会議には同席できませんが、もしもギャラリーのみなさんに感染してしまったらと思うと、どうしても消極的にならざるを得ませんでした。

その一方で選手側の問題もありました。現在男子ツアーのシード権獲得選手は65名ですが、そのうち31名が外国人です。彼らが入国できない状況で、日本人選手だけで開催していいものかという葛藤がありました。このようないくつかの点が重なって現在まで開幕できずにいます。ファンの方々にはもちろん、選手のみなさんにも本当に申し訳なく感じており、どうかご理解いただきたいと思います。先の見えない状況ですが、引き続き全力で対応してまいります。

Q 大抜擢で、時松プロが新しい選手会長に選ばれました。その経緯を教えてください。

石川遼前会長から「続投しても構わないが、経験と勉強のため若い人にやってほしい」という意見があり、「おまえ、どうなんや?」と池田勇太元会長から僕に話があって、正直やってみたい気持ちはあったけど、失敗するのも怖いので最初は拒みました。それでも推してくれる先輩たちの声が多数あり、お受けすることにしました。

実は今年初めて理事に選ばれた時から、何か自分にできることはないかと思っていました。

ツアー参戦当時、池田勇太会長の多忙な様子を見て、男子ゴルフ界のために必死で汗をかいている姿に心動かされたからです。もちろんプレイで活躍することは大事ですが、それだけでいいのかという気持ちが強かったですね。

Q 石川前会長は「源蔵は落ち着いていて、謙虚で、周りが見える。一番信頼できる後輩」という選考の理由がありました。

感謝しかないです。僕だけでは若いし力不足の面もあるので、会長経験のある石川プロや池田プロ、それに小鯛竜也プロを加えた3人が副会長に。「オレたち3人を中心に、全力でフォローしていくから」と池田プロが背中を押してくれました。新会長として3月までは東京での会議等に出向いていましたが、今は月に数回の電話会議です。池田プロ、石川プロは関東在住なので「九州は遠いし、感染リスクもあるから、オレらにまかせろ」と言っていただいています。力を合わせてワンチームでやっている感じです。この経験を人生のプラスにしたい。大げさかもしれませんが、「あの時、選手会長をやってよかった」と死ぬときに思いたいです。

Q 男子プロツアーの更なる発展に向けて、今後の展望はいかがでしょうか?

会長になって半年、いろいろな仕組みがわかってきた。一つの大会を開催するにあたり何百人何千人の人たちに支えられて、プロゴルファーは活躍できるんだと実感しました。ましてこの苦難の時代、多くの関係者のみなさんが努力されていることを感謝します。今後については、より多くのファンに応援していただけるよう、新しい取り組みにチャレンジしていきます。でも、もっとも大切なことは、井の中の蛙ではダメということ。世界で通用するプレイヤーが出てこなくてはなりません。すでに若手のスター候補生は沢山いますね。うれしいことです。

Q  ここからは一人のプロゴルファーとして話をうかがいます。自粛期間をどう過ごしていましたか?

ほとんどがショートパットの練習ですね。基本、筋トレはやらないですが、今年PGAツアーのデシャンボー選手が体重を20kgアップして見事に変身しました。ドライビングディスタンスは去年300ヤードで50位でしたが、一気に350ヤード飛ばすようになって1位に。優勝もした。やっぱり飛ぶって、楽なんだと改めて思いました。それに触発されて、ウエイトを上げようと、沢山食べ、沢山寝てました。あとは実家に住んでいるので、料理の手伝いをよくしています。下手くそで手に怪我しちゃいましたけど(笑)。

Qこれまでのゴルフ人生で、嬉しかったこと、苦しかったことは?

嬉しかったことは、やはり2016年の下部ツアーで初優勝した時ですね。
苦しかったのは、高校卒業後どれだけ練習しても成果を得られなかったことです。
その後、とんとんと1ヶ月で1億円以上も獲得できたんですが、父親から「全然足りてないぞ」と今でもプレッシャーをかけられています(笑)。

Q アマチュアゴルファーに向けて。ゴルフの楽しさ、面白さは?

なんと言っても、「三密」にならないのが一番の推しですね(笑)。ゴルフ場は森に囲まれて空気もきれいだし、今の時代にあったスポーツです。プレイの醍醐味は、同じコースを何百回まわっても決して同じようにはいかないということ。昨日と今日ではなぜか別人みたいに違う。遠くを狙うドライバーショットも、短いパッティングも一打一打に夢中になれる。だから面白いんです。

Q 練習についてですが、何をしたらうまくなりますか?

アマチュアの方はどうしても練習場に行ってドライバーをガンガンに打つ!これは、本当によくわかりますが、でも腕を上げたいのであれば、基本の反復です。ウェッジで30~50ヤードを徹底的にやる。
その延長がドライバーのフルショットですから。地味でつまらないかもしれないけど近道はないです。
どんなプロだってそこをおろそかにしている人はいません。

Q サッポロビールとのスポンサー契約についてうかがいます。決まった時どんな気持ちだったのでしょうか?

本当にありがたいことです。誰もが知っている飲料メーカーさんと契約している男子プロは少ないんですよ。
このような中で、18年からサポートを続けて頂いていることに感謝しかありません!

Q 他のプロ選手とどんな交流があるのでしょうか??

僕はそんなに飲める方じゃありませんが、池田勇太プロをはじめ、先輩方とご一緒頂く機会は多いです。
プロゴルファーは他のスポーツ選手と違い、食事制限がないので酒豪が多いんですよ!
特に優勝した夜はガンガン飲むんじゃないかと思われそうですが、そうでもないんです。
心身ともにクタクタで帰ってすぐに寝てしまいます。
後日、祝賀会をして頂き、その時は盛り上がりますね。格別のビールです。これ以上の味はありません!

Q サッポロビールでは何が好きですか?

断然、黒ラベルが好きですね。お世辞じゃありませんよ(笑)。どんな料理に合わせても合うところが好きです。
周りにいる本格的なビール好きの人たちも、みんな美味しいと言っています。
黒ラベルの☆が、なんだか縁起が良くて、そこも最高です!好きな酒の肴ですか? 
僕の場合、「軟骨の唐揚げ」です(笑)。

Q 開催は未定ですが、今年の目標は? 

去年、優勝できなかったので今年は必ず。もちろん選手会長として、ギャラリーのみなさんに満足していただけるよう精一杯尽力したいと考えています。男子ツアーをよろしくお願いします。

◎インタビューを終えて

なぜ時松プロはトッププロになれたのか、なぜ選手会長に選ばれたのか、そんな思いで話をうかがった。ふと、「人徳」という古い言葉が浮かんだ。辞書には【人から好かれている、思いやりがある、誠実な態度、責任感がある、リーダーの素質がある、不平不満を言わない、常に明るい気持ちでいる、ルールやマナーを守る、感謝の気持ちを伝えている】と。嘘のように当たっている。

とにかくご家族や先輩たちに愛されていることがひしひしと伝わってくる。愛されているから、強いのだ。自分に似合わない言動はせず、トッププロにありがちな無理なポーズもとらない。常に等身大を心がけ、流されず動じないマインドが備わり、それでいて周囲の空気を和ませ、人肌に温める包容力がある。詰まるところ、自信の表れではないかと感じた。

「人徳から生まれる強い平常心」。これが時松プロの真髄に違いない。安定感のあるステディなプレイスタイルにもそれは見事に反映しているのではないか。たとえ賞金王になっても、海外で勝ったとしても、何も変わらない。バリアフリーの、新しいタイプのアスリート。コロナ禍の時代、時松プロの「強い平常心」は生きるヒントになりそうだ。選手会長として、プレイヤーとして、今後の活躍を期待せずにはいられない。

(文=時安浩久 写真=浅田紀元)

~profile~
時松隆光  トキマツ リュウコウ (26)
高校卒業後プロ転向。2016年チャレンジツアーの優勝で得た権利で「ダンロップ・スリクソン福島オープン」で優勝。その後「ネスレマッチプレー」でも優勝し、一気にブレーク。20年からは石川遼選手から襷を繋ぎ選手会会長を務める。 大きな特徴は、プロ選手でも唯一のベースボールグリップ。その安定感抜群のゴルフは、男子プロの中でもひと際目立つ存在である。 

取材協力 ザ・クラシックゴルフ倶楽部・ミズノ株式会社 

  • LINE