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冬のぶどう栽培は「剪定」が重要!冬支度に向けて行われる作業を紹介
ぶどうの品質を保つには、収穫期を終えたぶどう樹の適切な管理も欠かせません。冬に向けて、どのような作業が必要になってくるのでしょうか。
今回は、収穫までの1年と冬に向けた備えについて紹介します。
ぶどうの1年はどうなっているの?
ワインの原料であるぶどうは、どのようなサイクルで収穫までの1年をたどるのでしょうか。ぶどうの1年の流れを見ていきましょう。
休眠期(12月~3月)
冬は樹液が止まる時期です。ぶどうの葉は落ち、樹だけの状態になります。出荷作業も落ち着く時期ではありますが、ぶどうの品質の調整などのために剪定が必要です。
萌芽から葉の成長期(3~4月)
春に向けて気温が10度を超えるようになると、萌芽(ほうが)といって新芽が見られる季節になります。この時期は気温が不安定になることもあるため、霜害に注意して管理しなければなりません。萌芽の時期になると、余分な芽を取り除く芽かきも行われます。
開花と結実(5~6月)
新梢(しんしょう)と呼ばれる新しく伸びた枝が成長すると、6月ごろに小さなぶどうの花が開花する時期を迎えます。品種によっても異なりますが、梢ひとつに実がなりすぎると品質に影響するため、開花前に余分な花穂を除く作業が必要です。
成熟期(7~9月)
ぶどうの実ができて成長していく時期です。必要に応じて房を切り落とすグリーンハーベスト(摘房)が行われます。赤ワイン用の実はこの時期から着色していくのが特徴です。
収穫期(9~11月)
ぶどうの実が完熟を迎える時期で、糖度や色づき、酸味などの状態を見ながら収穫が行われます。品質の良いワインは、ぶどうの房の状態をひとつずつチェックしながら、手摘みにより収穫が行われます。
冬のぶどうの管理で重要な「剪定」
冬の時期特に重要な作業が「剪定(センテイ)」です。
剪定は、今年出てくる芽を適切な数にするために、枝を切って整える作業です。
ぶどうは何年にも渡って同じ樹から果実を収穫します。
この果実の品質がワインの良し悪しを左右します。なので、品質の良い果実を得るために良い樹を育てることがとても重要です。
ワイン業界では樹の形をコントロールすることをキャノピーマネジメント(樹冠管理)と言いとても大事にしています。
このキャノピーマネジメントの中でも特に「剪定」は重要です。
なぜなら、芽の数で新梢数が決まり、芽の数が多いと新梢数も多くなります(新梢は今年新しく成長した芽のことです)。
ぶどうの花は新梢でつくられることが多く、そこからぶどうの房となるため、剪定で多すぎても葉や房の重なり等で生育阻害や病害が発生する可能性があり、少なすぎても収量が少なくなるので、剪定作業の段階が最も重要なんです!
この作業で今年の樹の形が決まることはもちろんですが、将来的な樹の形にも影響がでてくるんです。
なので、メンバー全員で悩みながら将来の樹の形をイメージして剪定を行っています。
サッポロ安曇野池田ヴィンヤードは面積が約12.6ha(だいたい東京ドーム2.7個分)あるので、剪定は11月後半に始めて2月にやっと終わります。
剪定時には大量の剪定枝(剪定で切り落とした枝)が出ます。
この写真にある剪定枝の山でも全体のごく一部です。
この剪定枝はほぼ1年でぶどうが生長した分ですので、ぶどうの生長する早さ、量の多さを実感できます。
剪定が終わると残した枝をワイヤーに誘引していきます。2020年はこの誘引した枝から新しく果実を着ける枝が伸びてきます。
そして、3月は厳しい冬が終わり(と言っても今年は暖冬であったのですが)、ぶどう園にも春が訪れてきました。
皆さんは春が来たということを何で感じますか?
ぶどう園ではぶどうが春の訪れを教えてくれます。
この言葉で表現される現象がぶどう園に春を告げます。
「ぶどうの涙」
春、日光を受けて暖められた土の中で、根が活動をはじめ水を吸い上げます。
冬に剪定した切り口から、水が滴り落ちます。
それはまるでぶどうが涙を流している様に見えるんです。
厳しい冬に耐えるためのぶどうの準備
収穫の時期を終えたら厳しい冬の季節がやってきます。この時期になると、これまで青々としていたぶどう樹が、紅葉を迎えて葉を落とし、褐色に変わっていきます。
ぶどう樹は冬を乗り越えるためにどのような準備を始めるのでしょうか。
落葉
秋になり日照時間が短くなることで、光合成の効率が下がり、ぶどうは葉から十分にエネルギーを生み出せなくなります。そこで、エネルギーを効率良く使うために始まるのが落葉です。
落葉の時期はぶどうの品種によっても異なりますが、早ければ9月の終わりごろから葉の色が変化し、10月から11月には多くのぶどう樹で落葉が見られます。
落葉の時期に注目したいのが葉の色や葉の落ち方です。葉の状態によって、栽培管理が適切か栄養状況をある程度把握できます。
状態の良いぶどう樹は、葉が全体的に黄色くなって一気に葉が落ちていきます。葉の色は窒素をどのくらい含んでいるかを表します。黄色くなるほど窒息の量が減っている証拠です。
落葉の時期になっても色が変わらなかったり、葉が落ちなかったりする場合は、窒素を吸収する時期が長く、エネルギーを効率良く使えていないといえます。
光合成
多くのぶどうが収穫期を迎える10月になると、葉の付け根にできる芽が休眠期に入ります。しかし、ぶどう樹そのものが休眠状態に入るわけではありません。葉や根は休眠せずに冬に備えて準備をしています。
収穫を終えたぶどう樹は、本格的な冬を迎える前に葉を使って光合成を続けます。光合成によって、冬を乗り切るための養分を十分に確保しておく必要があるためです。日照時間が短くなる秋こそ、光合成が重要なのです。
秋の限られた時間を使って、葉は光合成の機能を向上させ、次の春まで持ち越せるように、枝や幹、または根に養分を貯め込んでおきます。ため込んだ養分は、次に迎える春の発芽や成長に使われます。
この時期になると、ぶどうの根は春から夏にかけての成長に続いて、根が大きくなります。
登熟(とうじゅく)
本格的な冬を迎える前に、ぶどう樹は登熟をして冬に向けた備えをします。登熟とは、炭水化物やタンパク質、脂質などの養分を枝の基部から先端に向け貯めていくことです。
登熟した枝は硬くなり、緑色から褐色へと変化していきます。
ぶどう樹の栄養状況は落葉の仕方や葉の色でわかると説明しましたが、実は枝の登熟具合も重要です。
登熟は落葉と同じ季節に見られるようになりますが、登熟の時期になっても緑色のままだと問題があります。登熟できていない枝の多くは枯れてしまい、寒い冬をうまく越えられません。
登熟がうまくいかない原因は、枝が重なり合うことで日光をうまく取り入れられないこと、遅伸びなどです。登熟が悪いと次の春の芽ふきにも影響してしまいますので、人の手で調整が行われることもあります。
冬支度をしないとぶどうはどうなる?
ぶどう樹が無事冬を越して、次の年も良いぶどうの実を実らせられるように、人の手によって冬支度をすることも重要です。冬支度が十分でないと、凍害や害虫によってぶどう樹が被害を受けることがあります。
凍害のおそれ
凍害とは、冬の寒さなどによって樹木が枯れるなどの被害が生じることをいいます。ぶどうふどうは特に凍害の注意が必要な果樹で、発芽に影響があるだけでなく、枯れ込みや樹形の乱れ、主幹の枯死にもつながるおそれがあります。
例えば、-10℃以下が20回以上続くと凍害が起こりやすくなります。枝や主幹が長時間低温にさらされることで凍結しやすくなるためです。
また、ぶどう樹は少しずつ環境に適応するため、寒い冬場に急に暖かい日があるなどの気温の急激な変化があると耐寒性が失われ凍害になることもあります。
登熟がうまくいっていない場合や雨が少なく土壌が乾燥している場合、若木や凍害を受けやすい欧州の品種を取り扱う場合も注意が必要です。
凍害が起きると、その年だけでなく数年間にわたってぶどう樹に影響することがあります。ぶどうの品質を守るためには、凍害を起こさないことが大切です。
対策として、わらや紙袋で主幹部を覆って、気温の変化や低温、または乾燥による凍害を防ぐ方法が行われます。ほかにも対策として、人工的に水を与えたり、剪定の切り口に癒合剤を塗って乾燥しないようにしたりすることもあります。
場所によっては雪害の対策も必要です。大雪が降ると凍害のおそれがあるだけでなく、ぶどう棚の倒壊を引き起こすおそれもあります。あらかじめ剪定で積雪を減らしたり、早期に除雪したりするなどの対策が必要です。
害虫の発生
害虫被害にも注意が必要です。冬に向けての準備や適切な管理ができていないと、害虫でぶどう樹が被害を受けてしまうこともあります。
剪定直後に注意したいのが「ブドウトラカミキリ」です。ぶどう樹の枝や幹を食べる害虫で、駆除できていないと剪定後に枝が枯れてしまいます。
冬の時期だと「ブドウスカシバ」にも注意が必要です。ぶどう樹の枝に産卵する害虫で、幼虫が枝や幹を食べて被害を与えます。
膨らみのある枝には高確率でブドウスカシバの幼虫が隠れていますので、剪定時に切断してしまいます。
重要な枝でなければ剪定でもうまく対応できますが、大きな枝にブドウスカシバが隠れている場合は、枝を縦に切り裂いて駆除するのが基本です。見つけたぶどう樹の異常は早期に対応することで被害の拡大防止になります。
まとめ
ぶどう樹自体も秋の光合成や落葉、登熟によって冬の備えをしますが、ぶどうの品質を保つには人の手によって適切に管理を行うことも重要です。おいしいワインが造られる過程には、こうした生産者の方々の努力が隠れています。ワインを飲むときは、こうした背景に思いを馳せてみると味わいも少し変わるのではないでしょうか。
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