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3種の「サッポロ SORACHI 1984」を飲み比べ!! 「けやきひろば春のビール祭り」会場でブリューイングデザイナー 新井健司にインタビュー!!
さる5月22日(水)から26日(日)までの5日間、さいたま新都心のけやきひろばで日本最大級のビールイベント「けやきひろば 春のビール祭り」が開催されました。昨年秋に続き、今回も「サッポロ SORACHI 1984」が出店!! 限定2種を含む3種のビールを飲むことができました。
新緑のけやきひろばで開催されたビールの祭典
さいたま新都心のほぼ中央を占めるけやきひろばを会場に、5月22日(水)から26日(日)までの5日間に渡って日本最大級のクラフトビールフェスティバル「けやきひろば 春のビール祭り」が開催されました。
取材を行ったのは、会期2日目。JRさいたま新都心駅の改札を出たら左へ向かってペデストリアンデッキをちょっとあるくと、そこがもう会場。入口に大きな場内マップが掲示されていましたが、約50ものブースが通路や飲食コーナーを取り囲み、けやきひろばのスペースを最大限に活用しているのがわかります。
平日の午前中というのに、場内は大盛況。人混みを抜けて最奥部まで進むと、そこには目的地であるSORACHI 1984のブースが!
事前情報通り、通常のSORACHI 1984に加え、限定品の2種、「上富良野産ソラチエース100%使用Ver」と、2倍のソラチエースで香りづけを行った「SORACHI 1984 DOUBLE」の3種類が飲めることが謳われています。
場所的になかなかお客様の通りが少ないという地理的ハンデもなんのその。ブースに気づいたお客様は、かなりの確率でSORACHI 1984を注文されていました
やはりいちばん人気は「3種飲み比べ」。紙コップに注がれた前述の3種を少しずつ、文字通り飲み比べることができるようになっています。3つの紙コップはこのイベントのために作られた専用キャリーにセットした状態でお客様へ。開くと紙コップが入る穴のわきには3種それぞれの特徴がしっかりと併記されていて、それを読みながらSORACHI 1984を味わえるのが、粋な計らいです。
また、ブースでは3種飲み比べをご購入くださったお客様を対象に、スマートフォンを使ってのアンケートも実施していました。答え終えると3種類のチャーム、あるいは缶入りのSORACHI 1984がもらえるという特典つきです。見ていた限り、かなりの確率でご回答いただけていた様子。ご協力ありがとうございました。
ブース内でお客様にアンケートの案内を行っていたのは、SORACHI 1984のブリューイングデザイナーである新井健司。せっかくなので少し場所を移動し、けやきひろばビール祭りやSORACHI 1984について、いろいろと話を聞きました。
「SORACHI 1984」として出店することに意味がある
――春と秋に開催されるけやきひろばビール祭りに「SORACHI 1984」が出店するようになった理由や経緯を教えてください。
新井健司(以下、新井):けやきひろばビール祭りは日本最大級のクラフトビールフェスティバル。ここに来るお客様はやはりビール好きのかたがほとんどで、2019年に発売したSORACHI 1984をアピールする場として最適だと考えたのが出店するきっかけです。
協賛としてはサッポロビールの名前が掲げられていますが、出店はあくまでも「SORACHI 1984」としています。ご来場いただいているお客様を見ると、最近はビールが好きというよりイベント好きな人たち、特に若い人たちが多くなってきているのを感じます。ブースにはサッポロビール色がほとんどないのは、来場者のみなさんにSORACHI 1984というブランドを知っていただくにはこのほうが効果的だと考えてのことです。
SORACHI 1984のブリューイングデザイナー、新井健司。イベントのこと、SORACHI 1984のこと、アニバーサリーイヤーのこと。いろいろ忌憚なく語ってくれました。
――いつから出店されているのですか?
新井:SORACHI 1984が発売された2019年からです。すぐにコロナ禍でイベント自体が休止になってしまいました。昨年から復活したので、我々も春はサンプリングとして試供品の配布を、秋はSORACHI 1984の販売を行いました。
――あえてサッポロビールでなくSORACHI 1984として出店することの手応えみたいなものは感じますか?
新井:SORACHI 1984として出すことの手応えというよりは、出し続けていることの手応えは感じています。はじめて出店したときはSORACHI 1984はほとんど知られていませんでしたが、回を重ねるごとに「昔飲んだよ」といった声が増えて来ていますね。
――積み重ねがちゃんと効果を発揮しているんですね。
新井:SORACHI 1984は残念ながらまだ「どこでも買える」という状態ではないなかで、「けやきひろばビール祭りに来たら“また”SORACHI 1984があった」と飲んでくださるなど、ブランドに対するイメージを強く知っていただけてきている手応えを去年くらいから感じはじめています。
――まさに「継続は力」ですね。
新井:本当にそうですね。ブランドステータスを考えればそうしたお客様の反応を見ても「SORACHI 1984として出店すること」に大きな意味があったと強く感じます。やはり皆さん「サッポロといえば黒ラベル」と思い浮かべてしまいますからね。
もともと一般的なイベントよりもお客様からの認知度が高いという意味でも、けやきひろばビール祭りはSORACHI 1984にマッチしたイベントですね。
3種類を販売した意図とは?
――今回は限定2種を含めた3種類のSORACHI 1984が飲めます。これはどのように決まったのでしょう?
新井:見ていただければわかる通り、これだけたくさんのブースがあり、たいていが飲み比べを用意されていますよね。大手メーカーの商品であるとある程度は知られているので、「けやきひろば以外でも飲めるよね」と思われてしまうのは避けたいという思いがまずありました。
昨年秋に痛切に感じたのですが、こうした無数にビールがあるなかでたった1種類だけぽつんと出してもやはり勝負にならず、どうしてもほかのところへお客様が流れてしまうんです。やっぱりこうした場でSORACHI 1984を知っていただき、ちゃんと価値を感じていただくには種類が必要です。
この5年に渡ってSORACHI 1984ならではの商品開発は続けているので、今回はそのなかから「けやき限定」として2商品を追加でお届けすることにしました。
会場では新井自らがブースに立ち、お客様とのコミュニケーションを図っていました。お客様の生の声が聞ける、数少ないチャンスですからね。
――SORACHI 1984の限定商品というと、個人的には「SORACHI 1984 BLACK」が好きで、実は今も2~3本とってあるくらいなんですけど。今回のラインナップに「~BLACK」が加わる可能性はなかったのでしょうか?
新井:もし仮にBLACKを出すとしたら秋ですかね。やはり春のビール祭りは屋外のけやきの木の下で開催されますし、イメージとしてはもう少しさわやかな感じ。けやきひろばビール祭りのいいところは、春は屋外、秋はさいたまスーパーアリーナの屋外と開催形態がそれぞれ違っていて、そこでもバランスを取りながらお客様に提供できるところもありますね。
――去年のビール祭りでは春はサンプリング、秋は販売と出店形態を変えていましたが、具体的にはどういう意図があったのでしょうか?
新井:先ほどの話に少し戻るのですが、SORACHI 1984だけで勝負することは難しいという思いがずっとあったことがまずひとつ。それと、秋の場合は屋内での開催で、ブースとして出店する以外にもお客様との接点としてセミナーみたいなものも開催しています。
春はセミナーがないので私がずっとブースにいられますから、サンプリングが適していると考えました。一方、秋はセミナーをやることにしていたので、それ以外にもお客様との接点を持つために、サッポロライオンさんにサービングをお願いして販売を行ったんです。
でもやっぱり想像通りに1種類だと厳しいものがあったので、満を持して今回は3種類を販売することにしました。
――3種類にした効果は出ていますか?
新井:おかげさまで昨年秋の初日と比べると、昨日は2倍以上の売り上げを記録しました。ちゃんと準備してきた甲斐があって、1日目から多くのお客様にアプローチできている実感がありますね。
SORACHI 1984のサービングを担当するスタッフは、ふだんはサッポロライオンで働く本職のプロ! ビールの泡つけも完璧です。
3種のSORACHI 1984の特徴と「変えないリニューアル」
――改めて3種類のSORACHI 1984について解説していただけますか?
新井:まずは限定販売ではない、オリジナルのSORACHI 1984ですが、これは個性的な香りを持つホップ、ソラチエースを用いて苦味と香りをバランスよく仕上げたゴールデンエールです。飲みやすさもあるので、ソラチエースの個性をはじめて味わうには最適です。
ホップにもブドウでいう「テロワール」、つまり育成する土地ごとの個性が反映されるところがあって、それを楽しめるのが上富良野産ソラチエース100%使用Verですね。
アメリカ産のソラチエースに比べて国産のソラチエースって、若干大人しいというか、荒々しさがなくてピュアな感じなんですよね。コアの香りが鋭いというか。そのため、オリジナルと同じレシピで作ってしまうと、香りがボディに負けてしまうところがあるので、実はこれだけビアスタイルをだいぶ変えています。
オリジナルのSORACHI 1984はゴールデンエールですが、上富良野産ソラチエース100%使用Verはピルスナーとして作っています。
――そうなんですね!
新井:ボディを軽くしてそこに国産ソラチエースの上品な香りをふわっと、しかししっかりと乗せています。オリジナルに比べるとかなりシャープで穏やか。より飲みやすい方向に仕上げているのが「上富良野産100%使用Ver」です。
――というと、SORACHI 1984 DOUBLEの逆と言ってもいいような方向性ですね。
新井:まさにそんな感じですね。ソラチエースの個性をもうとことん前面に押し出して、ソラチエースの香りや苦味といった個性的な味わいが好きな人を楽しませるというコンセプトなのがDOUBLE。香り付けに使うソラチエースの量を名前の通り2倍使っているところが大きなポイントです。我々は「追いソラチ」って言ったりしますね(笑)。
――オリジナルのSORACHI 1984は3月にリニューアルされたばかりですよね。具体的にどこが変わったんですか?
新井:SORACHI 1984には「国産ソラチエース100%で作る」という大きな目標があって、そこに向けてリニューアルを毎年行い、国産ソラチエースの比率を少しずつ上げているんです。
SORACHI 1984は今年で5年目を迎えるのですが、この間に4回のリニューアルをしていて、主な違いは使っているソラチエースの産地。ただ、今回に関しては製造工程にも少し変更が加えられています。
というのも、ソラチエースは農作物だけに、毎年の品質は地球環境の変化と密接にリンクしているんですね。そのため、やはり少しでも地球環境に配慮したいという想いがあります。
ビールづくりでいちばんエネルギーを使うのが、麦汁を煮る工程。蒸気を用いて煮沸をするのですが、その工程を少し穏やかにすることでエネルギー消費量を減らし、微力ながら地球環境の保全に貢献できればと。
――味についてはどうかわったのでしょう?
新井:いや、何も変えていません。このバランスがいちばんいいと思っているので、味を変えないまま、国産ソラチエースの比率や製造工程を少しずつ理想へと近づけていく。それがSORACHI 1984の「変えないリニューアル」です。
3種飲み比べを頼むと、こんな特製のキャリーに入れた状態でお客様に手渡されます。こんなに凝ったキャリーを用意しているのはSORACHI 1984のブースだけ。会場内でもかなり目立っていました。
3種のSORACHI 1984の説明はカップの穴に対応しているので、どれがどれだか迷うことがないのもポイントです。
国産ソラチエース100%化への道のり
――先ほど少し驚いたのが「上富良野産ソラチエース100%使用Verはピルスナー」という点です。そもそもソラチエースが20年以上も日の目を見ず、逆輸入のような形で復権したのは品種開発された当時、「ピルスナーにはあわない」と判断されたからですよね?
新井:「ピルスナーにあわない」というジャッジは当時のサッポロビールが下したもの。「当時の日本のビール市場を考えてのこと」です。しかし、今回ジャッジを下すのはあくまでもお客様側であることが大きな違いとしてあります。
この会場で販売されているビールを見ればわかるように、今はクラフトビールブームで、ひとくちにビールと言っても味もスタイルも非常に多様化しています。しかも、SORACHI 1984をはじめ、いろいろなビールに使われるようになりました。
お客様もソラチエースの香りに馴染んできていますし、今ならばそれがピルスナーであってもおいしいと判断していただける土壌があるわけです。
――ソラチエースの香りに馴染んでいる人は増えているし、市場としてもソラチエースの個性を受け入れられるくらいに多様化が進んでいるということですね。なるほど。オリジナルのSORACHI 1984に関しては、国産ソラチエースの比率はどれくらいのペースで増えているのでしょうか?
新井:今はまだ「ちょっとずつ」ですね。ただ、昨年に国産ソラチエース増産に向けての一手を打ったので、来年以降は収穫がうまくいけばソラチエースの収穫量はかなり伸び、割合を増やすペースもアップさせられるかもしれません。
ただ、やはり農作物ですから年によって収穫量が増減するリスクがありますし、おかげさまでSORACHI 1984も伸びてきています。足りなくなるような状況に陥らないような調整が必要になるでしょう。最終的には「今までよりは増加のペースがあがります」といった程度に落ち着きそうです。
――そんな状況のなか、以前から目標として掲げていた国産ソラチエース100%のSORACHI 1984を先行して飲めるなんて、今回のビール祭り、SORACHI 1984のファンにとってはたまりませんね。缶で限定販売される可能性はありますか?
新井:缶で販売するとなるとイベントで販売するのとは桁違いの量を作らないとなりません。いろんな状況を鑑みつつ、様子見という感じでしょうか。
取材した日は午後からは東京・中野にあるビール好きの集まるお店「麦酒大学」の学長、山本祥三さんがサービングを担当されていました。お客様からの質問に対し、3種の違いをわかりやすく的確に答える姿はさすがの一言。
やっぱりこのキャリーを手にしたら、写真、撮りたくなりますよねぇ。
この季節、日中から屋外で飲むビールのおいしいこと、おいしいこと。取材した日は午前中こそ曇っていたものの、午後からは太陽も顔を出し、まさにビール日和でした。
今年はSORACHI 1984が5周年、ソラチエースが40周年
――今年はSORACHI 1984の発売5周年、ソラチエースが開発されて40周年というアニバーサリーイヤーですよね。これを記念したイベントや限定商品は考えられていますか?
新井:限定商品までは考えていません。ただ、毎年9月5日に開催している「ソラチエース生誕祭」を今までにない規模や内容で開催できないかと今は考えています。
このイベントはあくまでもソラチエースを祝うものですし、ソラチエースを使ったビールを出しているいろんなメーカーにご協力いただかないと、なかなか実現は難しいと思っています。
――今までの誕生祭にはキリンビールが販売しているニューヨークのブルックリンブルワリーさんですとか、今回のイベントに出店している忽布古丹醸造さんなんかも参加されたことがありますよね。
新井:そうですね。SORACHI 1984のファンというよりも、ソラチエースのファンのためのイベントですからね。
――これまでの誕生祭はクローズドな状況で客席を巻き込んで祝うような規模感でした。もっと規模を大きくすると難しい面も出てきそうですね。
新井:そうですね。なので、9月5日の誕生祭は濃度、濃いものを求めようと思っています。ただ、それ以外にも今年はもう少し長いスパンでソラチエースの40周年を祝うような、ライトなお客様が入って来やすいキャンペーンやイベントが開催できないか考えています。
――国内でもソラチエースを使った商品を出しているブルワリーはいくつもありますよね。飲み比べてみると、同じソラチエースを使いながらやっぱり作り手ごとに違うものになるところがおもしろいです。ソラチエースを使ったビールばかりが出ているイベントなんかがあれば、と期待してしまいます。
新井:実現の可能性はともかく、ソラチエースを使ったビールばかりのイベントはおもしろそうですね。どんなものになるか、また実現できるかはわかりませんが、アニバーサリーイヤーならではの企画を考えて行くつもりです。SORACHI 1984、そしてソラチエースのファンの皆さんはとりあえず9月5日の誕生祭に期待していてください。
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SORACHI 1984ブランドサイトへ遊びに行く!
(文・写真=稲垣宗彦)