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飛行機に乗れないストレスを解消する、リアルなシミュレーターゲームの新作

Microsoft

航空業界にとって今は試練の時です。新型コロナウイルスの影響で飛行機に対する需要が激減するなか、航空会社各社は予定を前倒ししてボーイング747型機をはじめとする長年多くの人に愛された旧型のジャンボジェットを退役させることを決定しました。飛行機は飛ばず、空の交通量も激減。コンサルティング会社のオリバー・ワイマンによると、2019年と比較して旅客需要は65~70%減少しているということです。

しかし現実はこのように厳しくても、デジタルの世界になら航空ファンにも明るい話題があります。マイクロソフトの人気ゲーム「フライトシミュレーター」の新作がリリースされたのです。2006年以来初となる嬉しいニュースですが、ゲームの中に再現された景観、都市、航空機、そして飛行体験はどれもリアルで正確を極め、文字通り目を見張るほどのクオリティを誇っています。

Night flights introduce unique challenges.

このようにリアルにシミュレートされた世界には、何千にもおよぶ空港の数々に加え、街や森などの景観をはじめとするゲーム内アイテムがなんと2兆個も散りばめられています。しかもこれら景色や建物、天候、海洋の波といった自然現象は、実際の情報、人工知能、物理エンジンソフトウェアを駆使してリアルに再現されているのです。

例えばバーチャルな建物の再現には、既存のビジュアルデータが利用されています。通常、ウェブマッピングサービス、Bing Maps(ビング・マップス)のデータを使っていますが、ニューヨークやシアトルといった大都市の場合には、街並みの立体写真を集めたフォトグラメトリーと呼ばれる豊富な視覚情報がすでに存在しており、それらも活用されています。

The accurate representations extend into the cockpit.

しかし、他の何千もの都市にはそのような詳細なフォトグラメトリーが存在しないため、人工知能(AI)が2次元の衛星画像をもとに3次元の建物のビジュアルを作成しています。この点について「フライトシュミレーター」の開発責任者を務めるヨルグ・ノイマン氏は次のように説明します。「AIはまず平面の情報に基づいて屋根を描き、それをもとに3Dの屋根を作成します。次に、建物の高さは大体把握しているので、高さもつけていくのです」 (グーグルマップも同じようにAIを使って建物の輪郭を作成しています。)

また、都市によって異なる建築スタイルもきちんと反映されています。ソフトウェアエンジニアのリーダーを務めたマルシャル・ボサール氏は「だから、パリにはパリらしい建物が建ちならび、同じ建物がシアトルやモスクワの街にもあるなんてことは起きないのです」と説明します。

Your plane options depend on which version you buy.

AIは、樹木の位置を特定して忠実に再現する際にもその真価を発揮しました。衛星写真に写っている緑の部分は、実際には森かもしれないし草原かもしれません。いうまでもありませんが、地球上のすべての樹木の位置をまとめたカタログなど存在しません。ノイマン氏はロシアのツンドラ地帯を再現した作業について次のように語っています。「ある時点では、全てがただの緑地になってしまっていました。ツンドラ地方には草原と森林が混在しているので、AIを使ってどの場所が草でどれが樹木なのかを特定する詳細な作業を行なったのです」

しかし、飛行体験をシミュレーションするには、眼下の景色を再現するだけでは十分ではありません。大海原に白波を立て、草原や飛行機を揺らす風や天候の影響も再現する必要があります。それらの要素をリアルに再現するのに威力を発揮したのは、AIではなくソフトウェアエンジンだといいます。

そして、もう一つの大切な要素は自然光です。「あらゆる場所で光が反射するよう、統一したシステムを取り入れています」とボサール氏。「光の動きを理解すれば、世界そのものを理解するだけでなく、例えばコックピットの計器の可読性などを設計するうえでも非常に役立つのです」

天候を再現するにあたっては、気象サービス、Meteoblue(メテオブルー)が提供する現実世界のリアルタイムデータをそのままゲームの世界に活用しています。もちろん、何もかもそっくりそのままではありません。「私たちはまだ、一つ一つの雲の位置を全て把握して再現する段階には来ていません」とボサール氏。その代り、湿度、温度、風速などの要素を考慮し、高度約20キロまでの間に32の異なる雲の層を再現しているといいます。

しかし、なんいってもゲームの主役は飛行機です。スタンダード、デラックス、プレミアム版とある三つのバージョンでは、それぞれ異なる機種の飛行機を操縦することができます。スタンダード版には、ボーイング747(特に747-8i)、複葉機のピッツ・スペシャルエアバスA320などが含まれています。上位版のデラックスでは、ボーイング787ドリームライナーの操縦も可能です。ただしどのバージョンにも軍用機は含まれていません。

また離着陸できる空港の数も違ってきます。そして世界各国の景観、天気、そして飛行に影響する空気力学は可能な限り正確にシミュレーションされていますが、飛行機事故に関しては例外で、このゲームで破損した飛行機を目撃することはありません。「制作には飛行機メーカーとのパートナーシップが不可欠でした。そして彼らは壊れた飛行機を見せることに難色を示したのです」とノイマン氏。

とはいえ、型破りなシナリオをシミュレーションできないわけではありません。草原に着陸を試みたり、車輪を上げたままランディングすることもできます。「あなたが熟練のパイロットなら、胴体着陸だってできますよ」とノイマン氏は付け加えました。

PC版は8月18日に発売しており、Xboxでの発売時期は未定です。

この記事はPopular Scienceに掲載されたものです。

この記事はPopular Scienceのロブ・ヴェルジェが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされています。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまで。

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