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コロナによる“巣ごもり”で急成長を遂げるeスポーツ

eスポーツ業界がこれまでにない活況を呈しています。もちろん新型コロナウイルスの感染拡大=パンデミックに端を発する負の影響と全くの無縁という訳ではありませんが、同時に大きな打撃は回避しています。世界中でメジャーなスポーツトーナメントが活動停止に追い込まれるなか、外出自粛で生まれた余剰時間にゲームをする人が急速に増えているのです

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ビデオゲームのプレイ時間は確実に増えています。大手電気通信事業者、ベライゾンによると、アメリカ国内では、ロックダウンが始まった最初の週に、ピーク時のデータ使用量が75%増加したということです。しかし、より注目すべきはファンが観戦する競技ゲームの人気が爆発的に高まっていることです。ゲーム実況を中心とした世界最大級のソーシャルビデオプラットフォームを展開するツイッチの視聴者数は、去る3月だけで最大30%ほど増加したと推定されています。「世界的にステイホームの義務化が進み、エンターテインメント業界がライブストリーミングへの移行を模索していることから、この数字はさらに増加すると予想されます」とライブ配信プラットフォーム、ストリームエレメンツのCEO、ドロン・ニール氏は述べています。

セレブリティ―を宣伝に起用するようになったことで、ゲームは世界的な大ブームを巻き起こしています。また、パンデミックで活動休止に追い込まれた有名スポーツ選手たちは、新たな活躍の場としてデジタルにその可能性を見出しています。中止や延期になったレースの穴埋めとして F1バーチャルグランプリが開催され、去る4月にはF1ドライバーのシャルル・ルクレールがフェラーリのFDAウブロ・ Eスポーツチームから参戦し初優勝を飾りました。このレースはESPN2が放映した12時間におよぶeスポーツ番組でライブ放送されました。同様に、新型コロナの影響を考慮してストックカーレースのナスカーもオンラインに進出、またオーストラリアのスーパーカー・チャンピオンシップはジェイミー・ウィンカップ氏の支援を受けてeシリーズを開催し、KayoとFox Sportsで放映されました。

オーストラリアではこのほかにも、ナショナルラグビーリーグ所属のカンタベリーバンクスタウン・ブルドッグスとウエストタイガースが予定通りにプレミアシップシーズン第3戦で“対決”しました。しかしその舞台はラグビーのグラウンドではなく、人気ビデオゲーム「フォートナイト」で、対戦の模様はフェイスブックでストリーミングされました。またフィンランドでは、国内ホッケーリーグの開幕戦を中止する代わりに、アイスホッケーのシミュレーションビデオゲーム「NHL20」に戦いの場を移し、全国テレビで放映することを決定しました。さらにイギリスでは、世界で最も有名なサラブレッドの障害競走、グランドナショナルが、今年はコンピューターシミュレーションを使ったバーチャル競馬レースとして開催されました。無料放送の視聴者数は約500万人にのぼり、実際のお金で賭けが行われました。

しかし実際はeスポーツもコロナウイルスの影響と一切無縁というわけではありません。基本的にはデジタル上のイベントも、大きな大会は通常のスポーツと同様にスタジアムで開催・観戦します。16歳のゲーマー、ブガ選手が優勝し賞金300万ドル(約3億円)を獲得した2019年のフォートナイト世界大会は、ユーチューブとツイッチを合わせて視聴者数230万人という記録を叩き出しただけでなく、1万9000人ものファンがニューヨークのアーサー・アッシュ・スタジアムに集まり、対戦の生中継を視聴したのです。

新型コロナに大打撃を受けた大型イベントは少なくありません。アクションシューティングゲームのオーバーウォッチ・リーグは、2020年の全シーズンをオンラインで開催すると発表。「プレイ! ポケモン」は、北米国際選手権と世界選手権の中止を余儀なくされました。ほかにも数多くのeスポーツ大会が新型コロナの影響を受けましたが、従来のスポーツがロックダウンによって完全休止を余儀なくされたのに対して、大部分の競技ゲームは打開策を見つけることに成功しています。

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コロナ以前から成長を続けていたeスポーツ業界は、パンデミック特需によってさらなる盛り上がりを見せています。例えば、オーストラリアにおけるeスポーツ需要は、パンデミック以来3倍に増加したと推計されています。

オーストラリアのスポーツ団体によるeスポーツへの取り組みは、これまではあくまで実験的なフェーズでしたが、新型コロナによってeスポーツとの連携が加速するかもしれません。

オーストラリアサッカー連盟は2017年にEリーグを発足させ、国際サッカー連盟公認のサッカーゲーム「FIFAシリーズ」では、Aリーグに所属する各クラブを2名のゲーマーが代表してプレーしています。そして去る3月には、FUTWIZ Marko選手とFUTWIZ Jamie選手がプレーするシドニーFCが2020シーズンのプレミアシップを獲得しました。また2017年には、アデレードFCがレガシーEスポーツチームを買収し、オーストラリアのスポーツクラブとしては初めてeスポーツに進出しています。

eスポーツは、ブランド認知度を高めるのに役立つだけでなく、幅広い視聴者へのリーチと新たな収益源の獲得にもつながります。昨年、eスポーツの賭け情報サイト、スポーツ・ギークのポッドキャストに登場したアデレードFCのCOO、ナイジェル・スマート氏は「従来の収入源の多くが枯渇し始めています」と述べました。「今後の成長はどの分野に求めればよいのでしょう。私たちは多面的な国際戦略と多文化戦略を掲げています。eスポーツチームを所有することは、この両方の戦略の延長線上にあるのです。レガシーEスポーツチーム設立当初の株主たちは今もチームの運営に関わっています。彼らはフロントエンド、すなわちチームのパフォーマンスに関わる仕事をしています。そして私たちは、コンテンツ戦略、商品モデル開発、商業的パートナーシップなどに関する仕事をバックエンドで担っているのです」

新型コロナの拡大によって通常の収入源を絶たれた多くのクラブが困窮している今、新たなプラットフォームに活動の場を見出すことが、これまで以上に重要になっています。「会員のエンゲージメントを高め、既存の会員を維持したいクラブは、自分たちのeスポーツチームを進化させ、クラブ内で大会を開催するなど新しい方策を打ち出していかなくてはなりません」とeスポーツ・アカデミーのディレクターを務めるパトリック・チャイ氏は述べています。「例えば、ザ・クロウズ(アデレードFCのニックネーム)もファンのためにトーナメントを開催するべきです。多くの人がステイホームしている今は絶好のチャンスです」

オーストラリアeスポーツゲーム協会で最高経営責任者を務めるマット・ジェソップ氏は、さらに次のように付け加えています。「従来型のリアルスポーツにゲームを使った対戦を取り入れる方法は数多くあります。もちろんこれだけではナショナルラグビーリーグと同様の状況にあるクラブやスポーツを救うことはできないかもしれません。しかし、トライしても損はありません。これによって僅かでも収益が増加すれば、また新型コロナのような緊急事態が発生した時に頼りになる貯金ができるというわけです」

この記事はThe Guardianのスコット・ハインリッヒが執筆し、NewsCredのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされています。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまで。

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