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“不確かなことも楽しめるのが、大人になるということ” アーティスト Keeenue × サッポロ生ビール黒ラベル ブランドマネージャー 野並祐介
「サッポロ生ビール黒ラベル」のブランドメッセージ「丸くなるな、☆星になれ。」を目にしたことはあるだろうか? 20歳を超えて、社会を理解すればするほど自分の個性を保ち続けることは難しいように思う。それでもあえて、個性を貫くことは大人になるための大事な条件の一つではないだろうか。本記事では、そんな「丸くなるな、☆星になれ。」というフレーズを体現している、アーティストKeeenueさんに「サッポロ生ビール黒ラベル」をテーマに作品制作を依頼。ブランドマネージャーの野並祐介を交え、Keeenueさんが作品に込めた思いについて対談いただいた。この記事を通して、”あるべき大人”になるためのコツを見つけてみよう。
鮮やかな色彩と、それ自体が生きているような描線を持った、インパクト絶大な表現。それがアーティストKeeenueさんの生み出す作品だ。絵画から立体作品まで、ジャンル・様式にこだわらぬ自由な創作を貫くKeeenueさんと、「サッポロ生ビール黒ラベル」ブランドマネージャーの野並祐介が、よく晴れた初夏の昼下がりに邂逅。「サッポロ生ビール黒ラベル」で乾杯をしつつ、「ものづくりに臨む姿勢」や「大人とは」について語り合った。
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「どこへ行き着くかわからない王冠」で大人の自由を表現
──アシッドカラーを基調に、斬新なデフォルメを効かせた作品を手掛けるKeeenueさんに、「サッポロ生ビール黒ラベル」をテーマとした作品制作の依頼をさせていただきました。出来上がったばかりの作品を披露していただけますか。
Keeenue:はい、こちらです。私自身ビールは大好きで日頃からよく飲むので、高いテンションで制作することができました。せっかくなら思い切り楽しいものを、と考えたらこういう作品に。瓶ビールのフタに使われる王冠を滑らせてゴールを目指すゲームの形式で、実際に遊べるようにしてあります。
野並:そこにあるだけで場が華やぐような、ひと目で楽しい立体作品ですね。作品名はありますか?
Keeenue:名前は『Bias Drop Game』。「サッポロ生ビール黒ラベル」のコンセプトワードである「大人」について思いを馳せながら作品を構想したのですが、大人というのはいろんな経験値もあって何でもできてカッコいいなと思う反面、先入観や成功体験といったものに凝り固まってしまいがちでもあると感じます。
野並:そうした偏りを「バイアス(Bias)」という言葉で表しているんですね。
Keeenue:そうです。そうした「バイアス」をうまく手放していって、新しい価値観を取り入れられる大人が素敵だなという想いを込めました。私の理想の大人像を作品に投影してみました。
野並:瓶の王冠を作品に使うとはその想像力に驚かされました。缶ビールもモチーフとしてあったと思いますが、どこから着想したんですか。
Keeenue:「サッポロ生ビール黒ラベル」のパッケージデザインは秀逸だなと以前から思っていて、中でも星マークの印象が強かった。これを活用したいと思ったんですが、星って極めてアイコニックでインパクトが強いので、どう作品に馴染ませればいいか、ちょっと考えあぐねていました。そのときふと、瓶ビールの王冠の存在に思い至り、あれなら星だけど小さいのでかわいく使えるんじゃないかと。それで、王冠をたくさん送って欲しいとお願いしたんです。
野並:はい、想定外の注文でした(笑)。どんな作品に仕上がるんだろうと思いながら、社内のあちこちに問い合わせて、なんとか調達できました。
Keeenue:ありがとうございます(笑)。この作品は王冠が滑り落ちていくんですけど、その王冠が狙ったゴールに辿り着くかどうかはわかりません。いろんな選択肢があって、自分でどれかを選び取ったつもりだけど、実際にやってみると思いがけないところにたどり着いてしまったりする。人生ってそういうものだろうなと。そういう不確かなところも楽しめるのが、大人になるってことなのかな、などと想像しながらつくりました。
野並:素敵な作品をありがとうございます。私も「サッポロ生ビール黒ラベル」の担当になって間もないですが、ブランドとしては多様性を大事にしています。一例ですが、商品のキャッチコピーである「丸くなるな、☆星になれ。」のロゴ文字、これは一つひとつの文字フォントやサイズがバラバラなんですよ。
Keeenue:そうだったんですね! 良く目にしてきたキャッチコピーですが、そこまでは気付かなかったです。
野並:色彩も美しいですね。Keeenueさんの作品のいつものカラフルさに加えて、配色に「サッポロ生ビール黒ラベル」っぽさも感じられます。他にも、緑色や茶色が用いられていますが、ビールの原材料であるホップや麦を表しているのかと想像したんですが、どうでしょうか?
Keeenue:あ、すみません、正直そこまでは考えが及んでいなくて(笑)。単なる偶然ではありますが、そのように観る人の自由な解釈ができるのもアートのいいところですよね。
野並:木枠の脇に栓抜きもぶら下がっていて、良いアクセントになっています。ブランドを守り育てる側からすると、これほどまで商品に込めた意図や魅力を汲み取った作品をつくって貰えたことは本当にありがたいですね。
「大人」とは永遠の目標みたいなもの
──今作のインスピレーションの源泉ともなった、「丸くなるな、☆星になれ。」というキャッチコピー、サッポロビールとしてここに込められた思いを改めて教えていただけますか。
野並:先ほどKeeenueさんが読み解いた通りなのですが、大人になってそれなりに経験を積んで、ちょっと賢くなったり生きることに慣れてくると、誰しも考えが凝り固まってしまうものです。何事に臨むにしても、ほどよい落としどころをついつい探しがちじゃないですか。それじゃちょっとつまらない。大人こそ常に変貌し、進化していきましょうという提案が、ブランドスローガンには込められています。大人の行動指針の提案とでも言いますか。
Keeenue:大人へ向けたメッセージなのですね。
野並:はい、私たちは2010年から、「大人エレベーター」というブランドPRキャンペーンを始めました。その際に、およそ半世紀に及ぶ商品歴史を持つ「サッポロ生ビール黒ラベル」がどんな存在でありたいか、改めて整理してみました。そうして「大人」というキーワードを抽出し、自分の生き方にこだわりを持った大人たちになっていきたいというメッセージを、商品に込めるようになりました。
Keeenue:良いキャッチコピーですよね。もちろん聞き覚えがありますし、すごく共感できる言葉だなと以前から感じていました。思えば私自身も小さい頃から、何か人と違うことがしたいとずっと思っていながら、なかなか「ぶっ飛んだ」ことなんてできず悩んできました。星のようにトガったところを持ちたいのに、気づけば丸くなってしまうところがあって。
野並:アーティストとして活動していると、常にトガったところを求められるのではと想像してしまいます。
Keeenue:たしかに強い個性があって当たり前と思われるところはありますね。私としては日々の「ちっちゃトガり」を積み重ねようと心がけています。私が壁画や立体作品やコラボレーションワークといろんなジャンルを手掛けるのも、「ちっちゃトガり」をたくさんつくりたいからだったりします。
野並:いろんなトガり方があっていいのだと思いますし、大人のあり方だっていろんなかたちがあっていいはずですよね。そもそも大人というのは、何か決まった型なんてありません。ですから私たちは広告を展開するときはいつも、あるべき大人像を提示するのではなく、「大人とは?」と問いかけるスタイルをとってきました。
Keeenue:たしかに「大人」って、永遠の目標みたいなものかもしれません。私自身もすっかり大人と呼ばれる年齢になっているのに、大人である自覚はいまだにあまりないですし。アートに携わる身としては、子どものような純粋な視点や気持ちも決して忘れたくはないとも思います。これから先も、子どもの部分を内に抱えながら、一歩ずつ大人になる努力を重ねていきたいですね。
野並:大人になればなるほど、チャレンジする機会も気概も減ってしまうものですが、いつだって挑戦はしていたいですね。そうした姿勢をとり続けられるのが、私の考える「理想の大人」です。現時点では、大人になりきれていないなと反省するばかりですが。
「見て見て!」を貫いた結果、今のKeeenueさんらしさが
──そんな多様性を含んだ「大人」を、Keeenueさんらしくアートで表現してくれましたが、そもそもなぜアーティストを志したのでしょうか?
Keeenue:そうですね、最初はただただ絵を描いたりものをつくることが楽しくて、小さい頃から続けてきました。それがもっと広く深く人に伝われば、さらに嬉しいものだということも徐々に分かってきて。今はつくり続けるために、作品を売ったりすることもちゃんと考えなければいけなくなりましたが、「描きたい!」というストレートな欲求と「見て見て!」という純粋な気持ちを減らさないように気をつけてはいます。
野並:キャリアはまだ決して長くないのに、作品発表や展示を既にたくさんされていますよね。順調に仕事を積み重ねていくコツのようなものはあるんでしょうか?
Keeenue:個展を開くときもコラボレーションワークに取り組むときも、とにかくいつだって全力を尽くすというだけですね。出し惜しみする必要なんてどこにもないですから。
野並:目の前の仕事に全力で臨む以外に、道を切り拓く方法はないものなのですね。
Keeenue:そうですね。表現に純粋な気持ちで向かっていたい、それだけはいつも気に留めています。
野並:対象に一途に向かい合う姿勢、見習いたいです。私も「サッポロ生ビール黒ラベル」を担当し始めたとき、資料だけでは分からないことも色々あったので、まずは社内にいる歴代担当者にインタビューして回ったんです。担当者の想いが代々受け継がれ、現在のブランドの個性や世間のイメージが築かれているんだと知れて本当によかったです。自分の「好き」を貫き、とことん追求することが大事なのだと痛感します。
ビールもアートも「変わらないために、変わっていく」
──自身が本分とする分野で、星のようにトガりたいというのは大変よく分かります。ただし、周りに受け入れてもらい調和する「丸さ」も、ときには必要なのでは? そのあたりのバランスはどうとっているものでしょうか。
Keeenue:いくらアーティストとしてトガっていたいといっても、誰も付いてきてくれない作品をつくっていたら、それは単なる独りよがりになってしまいますよね。私はアートの専門家のみならず、まったくアートに興味のない人にも作品を観てもらいたいですし、できればどんな人にでも作品を通してアートの楽しさを味わってもらいたい。万人受けするのを気にするあまり、当たり障りのないものになってしまっては元も子もないですが、ものづくりとは人に届いてこそ成り立つのだということは、忘れたくないですね。
野並:ブランドを築くうえでも事情は同じです。ビールの味わいはもちろんのこと、デザインだったり商品コンセプトだったり、いろんな面を好きと言ってくれる人がいてこそブランドは確立・維持できます。皆さんに好きになってもらえる個性やタッチポイントをいかに増やしていくか。そこに注力してコミュニケーションをして、少しでも多くの方へ届く商品になればと思います。きっと、Keeenueさんがアーティストを志したのも、「人に何かを届けたい、伝えたい」という純粋な気持ちから始まっていますよね?
Keeenue:その通りです。でもそれは、ビールやそのブランドづくりにおいても、きっと変わりませんよね? おそらくは「おいしいビールができたから、これ飲んでぜひ!」という純粋な気持ちが原動力になっているのでは。
野並:そうですね。意外と知られていないんですが、ビールも「手づくり」の要素が多いんです。いつ飲んでも同じ味だと思われますが、ビールを生み出す酵母は生きもので、原料や水も自然のもの。なのでいつもと変わらない「サッポロ生ビール黒ラベル」の味を提供するために、工場の醸造家が常に試行錯誤を繰り返しているんです。
Keeenue:そうだったんですね。いつもの味を保つために、常に細かな工夫や調整を繰り返す必要があるわけですね。
野並:はい。「変わらないために変わる」という作業を日々続けています。Keeenueさんの作品も、一つひとつ題材も素材も形態もまるで違うのに、どれを見てもはっきりと「Keeenueさんの作品だ」とわかります。それはちょっと不思議なことでもありますが、何かいつも共通する要素が入っているのでしょうね。
Keeenue:自分としてはまったく無意識ですし、統一感を持たせようとも思っていないんですが、何かしら個性がちゃんと出ているのであれば嬉しいですね。
野並:Keeenueさんの今後の活動も、また精力的なものとなるのでしょうか?
Keeenue:はい、つくり続けるのはもちろんですが、7月に個展を控えているのでいま作品づくりの真っ只中です。
野並:楽しみですね。「サッポロ生ビール黒ラベル」も、夏に向けて様々なフェスに出展する予定なので、開放的な雰囲気の中でビールを楽しんでもらえたらと思います。
Keeenue:いいですね。アートとビールを同時に楽しめる場なんかも生み出せたらな、と夢想してしまいます。
野並:今回コラボレーションさせていただいた『Bias Drop Game』も、いかにもKeeenueさんの作品といった個性と独創性に溢れています。それでいて、「サッポロ生ビール黒ラベル」の精神もしっかり取り込んでもらいました。この作品が世にあることで、ブランドが一層くっきりと引き立つ気がしています。Keeenueさんの今後の活躍を、私たち一同楽しみにしています。
Keeenue:はい、また新作にも取り組んでいますので、ぜひ個展などで見てもらえる機会があれば嬉しいです。
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プロフィール
– Keeenue Information –
個展「SELECTed」
会場:SORTone
住所:東京都渋谷区神宮前2-14-17
会期:7月15日(土) – 7月23日(日)※月火休廊
時間:13:00 – 19:00
※オープニングレセプション:7月14日(金)18:00 – 21:00
クレジット
Photograph_Maho Hiramatsu
Text_Hiroyasu Yamauchi
Edit_Tenji Muto(amana)